日本医師会定例記者会見 3月2日
中川俊男会長は、新型コロナウイルス感染症の感染状況、まん延防止等重点措置、小児へのワクチン接種や追加接種について、日本医師会の見解を説明するとともに、引き続きのマスク着用、手洗い、換気、密を避けるなどの感染対策の徹底を呼び掛けた。
感染状況・まん延防止等重点措置
中川会長は、31都道府県で3月6日まで適用されている「まん延防止等重点措置」について、首都圏、中京圏、関西圏を中心に期限が2週間程度延長される見通しであることを報告(3月4日に18都道府県で延長が決定)。感染状況に関しては、全国の新規感染者数は減少傾向であるが、急激な減少にはなっておらず、大都市部では確保病床使用率、重症病床使用率が高い水準を維持している他、感染力の高い「BA.2」の市中感染例も見られるようになり、新規感染者数が更に増加する可能性があるとして、「医療提供体制が逼迫(ひっぱく)している地域のまん延防止等重点措置の延長はやむを得ない」との認識を示した。
また、欧州では感染者数、死亡者数が多い中でも規制を緩和する動きが見られることに触れ、日本ではマスク着用や消毒などの公衆衛生意識の高さにより、諸外国に比べて感染者数、死亡者数を低く抑えてきたと評価した上で、「感染対策と社会経済活動の両立は理解しているが、国民の生命と健康を守るという観点から、今すぐにさまざまな制限を大幅に緩和できる状況にはない」と述べた。
その他、2月17日に岸田文雄内閣総理大臣が表明している、まん延防止等重点措置区域における、電話等による初再診を行った場合の診療報酬上の特例加算の250点から500点への倍増について、平井伸治全国知事会長が2月28日の後藤茂之厚生労働大臣との意見交換で、まん延防止等重点措置の区域であるかどうかにかかわらない評価とするよう求めていることに言及。日本医師会にも全国の医師会から同様の要望が寄せられていることを明らかにし、「感染者数が高止まりの状態の中、全国の医師、医療機関が自宅療養者への対応を全力で行っている。政府には、まん延防止等重点措置区域に限定しない支援策をお願いしたい」とした。
ワクチン接種
5~11歳の小児に対するワクチン接種については、子どもの多くは軽症であるが、家庭内で養育者や兄弟姉妹、重症化リスクの高い高齢者への感染につながり、休園・休校、養育者の就業停止など、社会活動や医療提供へも影響が広がると指摘。子どもが、正しく基本的な感染防止策を行うのは限界もあるとして、小児のワクチン接種には、家庭内にウイルスを持ち込みにくくするメリットがあると強調した。
また、厚生労働省が小児のワクチン接種による副反応について、接種部位の痛みや倦怠感、頭痛、発熱等の症状が確認されているが、大半が軽度または中等度で回復し、安全性に重大な懸念は認められていないと報告していることを紹介し、「2年間にわたる新型コロナによる生活環境の変化によって、子ども達の身体的、心理的、社会的な発育に与えてきた影響は計り知れない。子どもを新型コロナから守り、学ぶ機会、遊ぶ機会を確保する観点から、日本医師会として小児への接種を推奨する」と強調。特に、基礎疾患のある小児、医療的ケア児を優先すべきとした上で、「ワクチンの効果や副反応等の情報を総合的に判断し、子どもと養育者が納得した上で接種することが原則である。接種の強要や接種を受けさせないような妨害、接種を受けたあるいは受けないことによる差別やいじめはあってはならない」と主張した。
その一方で、5~11歳までのワクチン接種の感染予防効果が、12~17歳と比べ早く弱まるというニューヨーク州の調査結果が査読前論文として公表されたことにも触れ、その事実が確認されれば、投与量の変更や追加接種などの早急な見直しが必要になるとした。
追加接種に関しては、オミクロン株に対してもワクチンの発症予防効果、死亡抑制効果があることについて、国立感染症研究所と英国保健安全保障庁の研究結果が示されていることを説明。
高齢者施設ではクラスターが多発していることを踏まえ、高齢者施設の職員や入所者への積極的な追加接種の必要性を強調するとともに、引き続き、希望する人が滞りなくワクチン接種を受けられるよう全国で接種体制を構築していくとした。
また、日本医師会公式YouTubeチャンネルでもワクチン接種の疑問や不安に答える動画「進めよう!ワクチン接種」を公開していることを紹介し、実際の接種に際して疑問や不安がある場合には、かかりつけ医に相談するよう呼び掛けた。
問い合わせ先
健康医療第2課 TEL:03-3946-2121(代)