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令和4年(2022年)2月20日(日) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

産科医療機関における宿日直許可に関する調査結果(有床診療所)まとまる

日本医師会定例記者会見 1月26日・2月2日

産科医療機関における宿日直許可に関する調査結果(有床診療所)まとまる

産科医療機関における宿日直許可に関する調査結果(有床診療所)まとまる

 松本吉郎常任理事は、2024年度から実施される「医師の働き方改革」が、産科医療機関における宿日直体制にもたらす影響について懸念を示すとともに、「地域の周産期医療体制の維持」と「医師の健康確保」が両立できる宿日直許可基準とはどのようなものか、日本医師会が実施したアンケート結果に基づき、見解を述べた。
 アンケートは、2021年11月11日から12月6日までの間、分娩取り扱いをしている全国1204の産科有床診療所、及び大学病院と周産期母子医療センターの指定を受けている430の施設に調査票を送付する形で実施。401の有床診療所(33・3%)と、225の大学病院・周産期母子医療センター(52・3%)から回答を得た。
 以下は、その概要である。

(1)回答施設の地域及び病床数の分布

 全体の約6割(56・8%)の産科有床診療所が、大学等から宿直、日直勤務を行う医師の応援を受けていた。

(2)宿日直の応援医師の有無による年間分娩件数の比較

 総分娩件数15万件余りのうち、応援を受けた有床診療所で取り扱った件数は10万4826件と、全体の約7割を担っていた。
 また、病床数にかかわらず宿日直を行う医師の応援を受けていることから、周産期体制の維持には応援体制が不可欠となっている。

(3)有床診療所の医師数と応援体制

 応援を受けている有床診療所の医師数は、管理者を含めても平均2・2名で、宿日直の負担は非常に大きいため、1カ月のうち約3分の1(宿直で約9回、日直で約3回)、大学等の医師の応援を受けることで、診療体制を維持している。
 また、できる限り効率的に診療体制を維持するため、約半数の有床診療所が連続して宿日直勤務を行うことがあると回答していた。

(4)応援を行う医師の所属

 大学病院所属の医師の割合が64%、一般病院所属が22・8%で、合わせて9割近くを占める実態が明らかとなった。

(5)医師の労働時間の上限規制に伴う影響

 2024年度から、医師の時間外労働の上限規制が開始されると、大学病院等の医師は、応援先での宿日直勤務時間も総労働時間に通算される。宿日直許可を取得している産科有床診療所は13・6%にとどまっており、約半数の有床診療所が取得できていない。そのため、許可未取得の有床診療所への医師の派遣が制限される影響について、「分娩制限など診療体制を縮小せざるを得なくなる」「管理者の業務負荷が増大する」「診療体制に重大な支障が生じる」との回答が合わせて9割に達した。
 また、自院の診療体制を維持する上で、宿日直許可を取得する課題として「極めて重要」「重要」と回答した有床診療所は7割超であった。

(6)宿日直許可基準①勤務態様と睡眠時間

 宿日直中に分娩や患者急変等に対応する1カ月当たりの件数は「ほとんどない」から「11件以上」まで幅広い。一方、宿直中の睡眠時間が6時間未満になる日について、「ほとんどない」と回答した有床診療所は4割、「6時間未満となる日が月3~5回(週1回程度)」まで含めると8割に達する。
 また、宿日直許可基準のあり方について、1カ月の分娩等への対応が「6~10件」(1週間当たり2件程度)、睡眠時間が6時間未満となる日が「3~5回」(1週間当たり1回程度)であれば許容できると回答した有床診療所は、いずれも3~4割を占めた。

(7)宿日直許可基準②宿日直の回数

 宿直は週1回、日直は月1回が限度とされているが、「宿日直許可を得られても良い」と考えられる日数に関して、宿直は月6・1回(週2回を月2回程度)、日直は月3・7回(月4回程度)ならば許容できるとされた。
 以上の結果について、松本常任理事は、「分娩などへの対応件数、睡眠時間、宿日直の回数が、今の基準には合っていないという現場の声があることを裏付けている」との認識を示した上で、現在、産科医療機関が置かれている状況を考えると、宿日直許可基準については、別掲の四つの事項が必要との見解を述べた。
 また、「現在、全国の医療機関は新型コロナウイルス感染症への対応に疲弊している」ことを強調し、基準を見直したとしても、周知、対応には医療機関、労働行政ともに時間を要するため、時間外労働時間の上限規制の罰則適用について、数年程度の猶予を検討することを要望した。
 更に、同常任理事は、この問題は周産期医療を始め、救急医療や精神科医療にも関わる「深刻な問題」との認識を示した上で、地域医療の維持と医師の健康確保の両立のため、「医師の勤務実態に見合った医師独自の宿日直基準について、真剣に議論していく必要がある」ことを強調した。
 また、今後については厚生労働省に対し、宿日直基準のあり方を再検討することを求めるとともに、医師の勤務実態に合わせた基準の見直しを引き続き粘り強く要望していくとした。

宿日直許可基準に関する日本医師会の考え
◦宿日直中に分娩等への対応があったとしても、月6~10件程度であれば許可を認めること
◦宿直時に睡眠時間が連続6時間に満たない日が月3~5日程度であれば許可を認めること
◦宿直週1回、日直月1回という基準を緩和して宿直月6回、日直月4回まで認めること
◦連続した宿直、日直を認めること

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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