中川俊男会長は1月27日、2月3日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえた日本医師会としての所見を述べ、ワクチン接種体制の構築に全力で取り組む考えを示した。 |
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1月27日の会見で、中川会長は1月22日に行った河野太郎ワクチン担当大臣との会談において、全面的な協力を申し出るとともに、自治体と地域の医師会が協議しながら、地域の実情に応じた接種体制を整えていくことが重要であるとの認識で一致したことを報告(関連記事)。
しかし、厚生労働省は自治体に対して、集団接種を中心とした体制づくりを依頼していることから、「期日と場所が限定され、知らない人と一緒になることで接種意欲が損なわれる可能性がある」として、集団接種と個別接種を適切に組み合わせた柔軟な体制の構築を求めた。
具体的な接種場所については、自治体が設定した特設会場や病院、診療所など、あらゆる所で接種できる体制が望まれるとし、特に住民へは、普段の健康状態を把握している"かかりつけ医"が接種できる体制が重要であると強調。かかりつけの診療所などでの接種を可能とするため、国に対して財政支援とワクチン供給の確保を要請していくとともに、希望する小規模医療機関にワクチンを小分けして届けられるよう、卸業者等との調整を求めていく姿勢を示した。
ドライブスルー方式の接種を提案
また、接種後に体調の変化を来した場合に備えて待機場所を確保する必要があることから、密にならない待機場所を準備することが医療機関で難しい場合には、駐車場など臨時の接種施設を設営し、接種を受ける方とは別な方の運転で接種会場へ来てもらい、車中で健康状態の観察の待機をするといったドライブスルー方式も考えられるとした。
この他、四病院団体協議会並びに全国自治体病院協議会との合同で、1月20日に「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」を立ち上げ、全国的な受け入れ病床の確保と充実に向けた具体的議論を始めたことを紹介。第2回会議においては、日本医師会より、地域の実情に応じた都道府県医師会、都道府県病院団体及び支部による協議会の立ち上げと、都道府県行政との連携強化を提案するとし、日本医師会災害医療チーム(JMAT)の枠組みを拡大して連携を強化する方針を明らかにした。
緊急事態宣言の延長を評価
2月3日の会見では、(1)緊急事態宣言の延長、(2)ワクチンの配送体制、(3)新型コロナウイルス感染症患者受入病床の確保、(4)医療従事者への人権侵害、(5)医療機関の経営状況―に対する日本医師会の見解を説明した((3)に関しての関連記事)((4)に関しての関連記事)((5)に関しての関連記事)
(1)については、日本医師会では、これまで緊急事態宣言解除の条件に関して、「六つの指標全てがステージ2の基準、あるいはステージ3であってもステージ2に移行するのが確実となった状態になって初めて解除の検討をすべきである」と発言してきたとし、「感染者数が下がり切らない状態で対策を緩めると、再び感染が拡大に転じる可能性があるだけでなく、緊急事態宣言が発出された頃の新規感染者数のピークを更に上回る感染拡大となることも危惧される」として、今回菅義偉内閣総理大臣が宣言延長を英断したことを評価する考えを示した。
また、解除の指標の一つである病床使用率について、確保病床のうち準備病床を除く即応病床の逼迫(ひっぱく)の具合は公表されている病床使用率の数字以上であり、現場の逼迫感とは大きく乖離(かいり)していると指摘。その要因は、病床使用率を算出する際のの分母が大部分の都道府県で準備病床を含む確保病床のままになっていることにあるとして、改めて、分母を即応病床数にした病床使用率も公表することを求めた。
(2)では、配送について、現場の医療機関を熟知している医薬品卸売業の関係者との連携と協力が不可欠であることから、2月2日に日本医薬品卸売業連合会の役員等とワクチン移送の準備状況について情報共有と意見交換を行い、今後更に連携を強化することで一致したことを説明。
ワクチン接種は、これまでの「守り」の闘いから、「攻め」に転じるものだとして、「日本医師会を始め全国の医師会は、あらゆるケースを想定しながら、新型コロナワクチン接種体制の構築に全力で取り組んでいく」との姿勢を示し、「都道府県、市区町村行政と各卸業者等の皆さんには、ぜひ地域医師会との情報共有・協議を深めて欲しい」と述べた。
(3)に関しては1月27日に、「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」を開催し、「病床確保等に向けた具体的方策」を取りまとめたことを報告。同方策としては、都道府県医師会及び都道府県病院団体による協議会を軸に、受入病院及び病床の確保、後方支援病床の確保、宿泊療養・自宅療養の充実、地域の医師・看護師等の派遣に及び、特にICUや急性期医療の需給が逼迫している状況下においては、回復した患者の後方医療機関での受け入れが最重要課題の一つであり、受入病院に退院基準を理解してもらうことが急務であるとの意見で一致したと説明。後方支援病院に積極的な受け入れを行ってもらえるように、都道府県医師会に対して、地域の関係医療機関に退院基準を早急に周知徹底することを求めるとともに、退院基準の他にも、受け入れ可能病院から要望があれば、ゾーニングの方法などについて助言する体制も整えていく考えを示した。
(4)については、日本医師会が昨年の10月から12月に起きた医療従事者等に対する風評被害の実態等を把握するため、緊急調査を実施したことを報告。中には、風評被害を越えて、深刻な差別、人権侵害に当たる事例が散見されたことを明かし、「この問題を解消するためにも国からの至急の対応を要請したい」とした他、マスコミに対しても協力を求めた。
また、(5)に関しては、昨年3月から新型コロナウイルス感染症の拡大が診療所経営に与える影響を調査しており、昨年9月、10月分がまとまったことを報告。小児科、耳鼻咽喉科を始め、まだまだ厳しい状態が続いているとして、国の更なる支援を要請するとともに、「感染拡大防止等支援事業補助金」については、ほとんどの診療所で申請済みまたは申請予定であり、有効に活用されているとして、これを評価する考えを示した。