新型コロナウイルス感染症の国内発生を受け、本年3月に開催を予定していた第146回日本医師会臨時代議員会は中止となったが、中国四国ブロック及び九州ブロックで準備していた代表質問に対し、執行部の答弁を求める旨の要望があり、回答を行ったので、その要旨を掲載する(回答の全文については、『日医雑誌6月号』を参照頂きたい)。 |
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1 厚生労働省の定める令和3年度臨床研修病院の募集定員について
松山正春代議員(岡山県)からの(1)臨床研修医募集定員上限の設定による医師の偏在是正効果、(2)医道審議会医師分科会医師臨床研修部会の審議状況―に関する質問には、羽鳥裕常任理事が回答した。
(1)については、厚労省の調査結果では医師は臨床研修を行った地域に長い期間定着するという傾向が明らかとなっていることを紹介。その上で、「偏在対策は医師養成課程全般を通じて、地域の実情を反映した形で推進されるべきものであるが、これらの対象は医学生、あるいは研修期間中にある若手医師が中心であるため、適切なキャリア形成との両立などを勘案し、慎重かつ丁寧な対応を行うよう、引き続き厚労省に強く求めていく」とした。
(2)については、地域偏在の是正を図るという視点に立って、議論に臨んできたとするとともに、引き続き担当役員間で情報共有し、連携を取りながら、地域医療を守る立場から強く主張していく考えを示した。
また、今後は、各都道府県内の個々の臨床研修病院の定員について、地域医療対策協議会での十分な議論が不可欠になるとして、都道府県医師会に対して、地域の実情に合った議論を牽引していくよう改めて求めた。
2 医療・介護「対面原則」見直しについて
沖中芳彦代議員(山口県)からの情報通信機器を用いた診療に関する日医の考えを問う質問には、松本吉郎常任理事が回答した。
同常任理事は、「情報通信機器を用いた診療は対面診療の補完である」という日医の方針に変わりはないとした上で、今回の新型コロナウイルス感染症に係る取り扱いは、特例中の特例・例外中の例外であり、4月10日付で発出した事務連絡「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取り扱い」のとおり、「『時限的』とは感染状況が『終息』するまでではなく、『収束』するまでである」「医療機関は都道府県における協議会で検証するとされている」こと等を説明。状況が収束した際には速やかに元に戻すべきことを、引き続き国に対して提言していくとした。
また、都道府県医師会に対しては、協議会に積極的に参画し、この非常事態下における情報通信機器を用いた診療の適切な実施に向けた協力をお願いしたいと要請した。
3 人手不足解消への提言(働き方改革の一環として)
山村善教代議員(宮崎県)は人手不足解消のため、扶養に関する「壁」となるパート労働者本人の所得の上限額を引き上げることを提案。日医の見解を求めた。
城守国斗常任理事は、「労働者の勤労意欲の増進、手取り収入の増加、社会保障の充実とその財源確保、企業活動の活発化といった、さまざまな要素を最適化していくためには、ご指摘の通り、行政の垣根を越えた対応が今後一層求められる」として、理解を示した。
更に、「日医としても、国に向けて問題提起していくとともに、医療の雇用誘発効果は他の産業よりも高く、医療に財源投入することで、特に医療従事者の比率が高い地方では経済の活性化により経済成長を促し、地方創生への多大な貢献につながることを引き続き主張していく」と述べた。
4 医療・介護に関する職業紹介事業者、外国人材受け入れに係る事業者(監理団体、登録支援機関等)への規制について
黒木康文代議員(鹿児島県)は、医療・介護を社会保障と位置づけるのであれば、医療・介護に関する職業紹介事業者、外国人材受け入れに係る事業者への一定程度の規制は必要だと指摘し、日医の見解を求めた。
江澤和彦常任理事は、「有料職業紹介事業者に支払う手数料の源の大半が公費と保険料であることは問題と認識しており、医療機関や介護事業所が高額な手数料を負担することにより、経営を圧迫する一因となっていることは由々しき事態である」との認識を示すとともに、外国人材の受け入れに高額な支払いを必要とするケースについても、同様の危惧(きぐ)を抱いているとした。
その上で、同常任理事は、「人材を必要とする医療機関や介護サービス施設・事業所が適切に人材を確保できる環境を整えることが最重要であると考えており、こうした視点から有料職業紹介事業者及び外国人材受け入れに係る事業者については、引き続き適切な運用を強く求めていく」と述べた。