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令和2年(2020年)2月5日(水) / 日医ニュース

特別寄稿 アフガニスタン復興とペシャワール会への支援のお願い

特別寄稿 アフガニスタン復興とペシャワール会への支援のお願い用水路現場を見下ろす中村医師(2008年12月30日)

特別寄稿 アフガニスタン復興とペシャワール会への支援のお願い用水路現場を見下ろす中村医師(2008年12月30日)

 2019年12月4日、パキスタン・アフガニスタンで30年以上にわたり医療活動を続けてこられた医師の中村哲先生が、アフガニスタン東部・ジャララバード市内で何者かの銃撃を受けて負傷され、搬送中に亡くなられました。
 中村先生は1946年福岡県生まれ。九州大学医学部卒業後、1984年パキスタンのペシャワールに赴任、ハンセン病コントロール計画を柱にした貧困層の診療を開始されました。
 1986年からはアフガン難民のための事業を設立し、1998年には基幹病院であるPMS基地病院をパキスタンのペシャワールに建設。以後、アフガニスタン・パキスタン両国において地域医療に尽力されました。
 2000年以降は、アフガニスタンを襲った大干ばつから人々の命を救うため、1600もの井戸を掘り、2002年には『緑の大地計画』を開始、長期的なアフガニスタンの復興計画に基づき、「生きておれ。病はあとで治す」というスローガンの下、灌漑(かんがい)事業に着手されました。
 折しもアフガニスタンは干ばつに加え、9・11テロ後の米軍による空爆にも遭い、中村先生は医療支援に加えて食糧支援にも力を注がれました。
 以後、灌漑計画を着実に現実のものとし、戦乱と干ばつで荒廃した大地を次々と緑の農地に変えていかれました。この活動の結果、蘇った緑の農地は、1万6500ヘクタール、この地域で生きていけるようになった人々は65万人にも及びます。

200205h2.jpg 中村先生の献身的な活動は国際的にも高く評価され、2003年にはアジアにおけるノーベル平和賞ともいわれるラモン・マグサイサイ賞平和・国際理解部門受賞。現地の人々からも「ドクター・サーブ」と呼ばれて広く慕われ、2019年10月7日、アフガニスタンのガニ大統領は、中村先生にアフガニスタン・イスラム共和国市民証を手ずから授与されました。
 その際、ガニ大統領は『緑の大地計画(英文)』を何度も熟読され、「これがアフガニスタン復興の鍵だと思った」と話されたと聞いております。
 更に、2019年11月1日の日本医師会設立72周年記念式典並びに医学大会の際に、「医療の国際協力に貢献著しい貢献者」として、日本医師会最高優功賞を受賞されました。
 中村先生が凶弾に倒れられたのは、こうしてペシャワール会の活動が更に大きな発展を遂げようとしていた、その矢先の出来事であり、現地スタッフ並びに日本の事務局スタッフ、そして今まで中村先生の活動を支援してきた私達ペシャワール会員も、「中村哲」というあまりにも大きな支えを失った悲しみに打ちひしがれました。
 12月11日、中村先生の告別式が福岡市内で行われ、上皇陛下・上皇后陛下ご夫妻を始めとして、各界から多数のメッセージが寄せられました。
 ペシャワール会長の村上優先生は、悲しみの中、「ペシャワール会は中村先生の意志を守り、事業継続に全力を挙げます」と決意を述べられました。
 私の記憶にある中村先生は、寡黙で多くを語らず、「目の前にいる苦しむ人達に手を差し伸べる」という医師の原点を実践され、私達、後続の医師達に最高の見本を示して下さいました。
 一方、『ペシャワールにて』『ダラエ・ヌールへの道』『医者、用水路を拓く』など、ご自身の活動を記した多くの著書を遺されており、著書の中ではこれがあの寡黙な中村先生が書かれたものかと驚くほど、命の不平等や世の不条理について熱く語っておられます。
 ペシャワール会は、これからも中村先生のご意志を受け継ぎ、アフガニスタンでの事業を続けていきます。中村先生は今でも、私達の心の中に生きておられ、決して消え去ることはないでしょう。
 中村先生の存在は私達日本人として、また医師としても誇りです。今まで、中村先生のアフガニスタン・パキスタンでのご活動について、あまり見聞きする機会のなかった先生方も多くおられると存じます。この記事を機会に中村先生の活動に興味を持って下さった先生方がおられましたら、アフガニスタンで命の危機にさらされている人々を一人でも救うために、ぜひペシャワール会の会員になって下さい。
 当会の活動にご賛同・ご支援頂けましたら、ペシャワール会の一員として、これ以上の喜びはございません。
 諸先生方のますますのご健勝をお祈り致しまして、筆を擱(お)かせて頂きます。
 最後に、私の心に残っている中村先生の言葉を記します。
 「生きておれ。病はあとで治す」
 「誰も行かぬから誰もやらぬから我々がするのである」
 「『マルワリード用水路』は、逃げ場を失った多くの人々に希望を与え続けるだろう。私もその一人である。『アフガニスタン』は忘れ去られたが、私達の共有した苦労と喜びの結晶は人々の命の営みが続く限り記憶されるだろう。これは人間の仕事である」

 

ペシャワール会連絡先

〒810-0003
 福岡県中央区春吉1-16-8
 ベガ天神南601
TEL:092-731-2372 FAX:092-731-2373

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