日医定例記者会見 1月8・15日
小玉弘之常任理事は1月15日の定例記者会見で、特に、地方において喫緊の課題である医業承継に関する日医の基本的な考え方について説明した。
同常任理事は、医業承継問題に対する、これまでの日医の取り組みとして、都道府県医師会担当理事連絡協議会の開催(昨年9月)や日医総研で医業承継に向けた調査を行うなど、さまざまな検討を進めてきたとした上で、日医総研の調査からは、(1)医業承継は多くの会員にとって間近に迫る問題であるとの認識はあるものの、組織整備や支援体制づくりに着手しているところはまだ少数であること、(2)現経営者が不安に思う三大事項は、「信頼できる相談先が見つかるか」「後継者候補を自力で探せるか」「妥当な金額で事業譲渡できるか」であったこと―などが明らかになったことを報告。
また、独自に医業承継事業に取り組んでいる都道府県医師会、郡市区医師会が存在する一方、M&A仲介事業者による第三者承継の斡旋も増加していることから、「このような状況は、医師偏在の助長もさることながら、手数料、譲渡価格等について不本意な承継につながるリスクを包含しており、適正な医業の第三者承継への取り組みを支援する体制が必須である」と考え、このたび地域における「社会的共通資本」としての医療を守るため、(1)譲渡を希望する医師と承継を希望する医師に対する支援、(2)医業承継を行う地域の医師会の支援、(3)日医としての支援体制の充実―の3項目からなる考えを取りまとめたとした。
この考えに基づいた具体的な事業としては、郡市区医師会・都道府県医師会に、弁護士や税理士など専門家の候補先を示すことを想定しているとした他、引き継ぎを希望する医師の探索等に関しては、現時点においては民間事業者の力は必要であることから、秋田県の二つの地域でトライアル事業を行うに当たって、エムスリー株式会社との間で包括連携協定を結んだことを報告。
トライアル事業は今年度末までとなっており、内容としては、(1)トライアル地域における、医業承継に関するセミナー等の情報提供の実施、(2)日医会員に対する医業承継に関する情報提供と医業承継プラットフォームを活用したマッチング、(3)承継時における後継者への医師会加入促進―の三つがあるとし、あくまで、日医は具体的な個別譲渡案件の契約内容には関与しないとした。
更に、日医が本問題に関与するメリットとして、1.医師が少ない地域における医師偏在・不足の深刻化等、医療提供体制の悪化を招かないようにすること、2.承継事業を実施する都道府県医師会や郡市区医師会との間での緊密な連携、3.承継時に医師会への入会を促進すること―が可能になることを挙げた。
その上で、同常任理事は今後について、「承継を希望する医師と、引き継ぎを希望する医師との引き合わせについては、女性医師バンクの機能を拡充して対応することも想定している」とし、引き続き本問題の解決に向け、日医として積極的に活動していく考えを示した。
なお、日医総研における医業承継に向けた調査の詳細は、今後、日医総研ホームページで報告されることとなっている。
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