日本医師会最高優功賞のうち、都道府県医師会長推薦による「医学、医術の研究又は地域における医療活動により、医学、医療の発展又は社会福祉の向上に貢献し、特に功績顕著なる功労者」と、その受賞理由を紹介する。 |
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島田 保久 先生(86歳 北海道)
郷土医史学の研究に貢献した功労者
地域住民の医療確保と健康管理に尽力する一方、明治期以前の蝦夷地の医家について40数年にわたり史料を調査、研究し「蝦夷地醫家人名字彙」を自費出版した。
また、昭和61年には札幌医史学研究会を設立。その後、平成5年には北海道医史学研究会を立ち上げ、代表幹事として、後進の指導的役割を担い医史学の普及に努めるとともに、現在も医史学研究の第一人者として文筆活動を続けている。
坂本 哲也 先生(75歳 秋田県)
がん検診の推進及び医師会組織強化に貢献した功労者
秋田県の全医療機関を対象に5年間にわたり、がん検診受診の追跡調査・実態調査を実施した他、地域がん登録事業のフローチャートによる新たな事業実施形態を秋田県に進言し、現在、そのスキルが全検診事業に生かされている。
また、勤務医加入率の向上を目指した勤務医部会の設立や、女性医師の勤務環境の整備を通じた医師全体の環境改善のための会合等の開催により、秋田大学・秋田県・秋田県医師会の連携を深め、組織強化に貢献した。
故 原 晋二 先生(89歳 福島県)
医師会事業及び学校保健活動に貢献した功労者
いわき市医師会の監事・理事・副会長を歴任し、医療保健福祉の情報ネットワークの構築や医薬分業化等を推奨するなど、30年余にわたり医師会運営と地域医療の向上に多大な貢献をした。
また、昭和46年より中学校の学校医を務め、生徒の突然死を発端に心電図検診の実施を市教育委員会に働き掛けた他、「いわき方式」の心電図検診システムの構築や学校検診の事後管理体制の整備等、児童・生徒の健康増進に寄与した。
小松 満 先生(72歳 茨城県)
医療分野の情報化の推進に貢献した功労者
「いばらき安心ネット」の拡充とともに、県医師会と8郡市医師会を結ぶテレビ会議システムの構築に尽力した。
また、平成27年には鹿行南部地域夜間初期救急センターを開設するなど救急体制を確立するとともに、医師会主導型の医療ADRとして「茨城県医療問題中立処理委員会」を設置。平成26年に締結した「四師会による災害時の医療救護活動に関する協定」を基に、翌年の関東・東北豪雨の際には被災者支援に尽力した他、市町村ごとに四師会を中心とした多職種連携システムづくりに貢献した。
篠田 仲正 先生(71歳 埼玉県)
医師会活動を通じて地域医療の発展に貢献した功労者
現川口市医師会の役員を歴任中、新型インフルエンザ対策として非常事態発生時における医師会の行動計画を立てるなど、地域住民に充実した医療提供を行う環境整備に努めた。
また、埼玉県医師会の常任理事として、会員医療機関の安定経営と改善のために税制問題に関する研修会の開催や、『埼玉県医師会誌』「埼医FAXニュース」の編集・発行に携わるとともに、公式ホームぺージの運営・管理等、会員や県民への情報伝達・啓発に尽力した。
大山 宜秀 先生(72歳 神奈川県)
学校保健活動に著しく貢献した功労者
大学在任中から相模原市医師会において肥満対策に取り組み、児童生徒肥満対策事業の立ち上げに貢献。副会長就任時には、成長曲線を活用した事業や尿糖陽性者検診(小児糖尿病早期発見)事業化など、学校検診体制の構築に寄与した。
また、全小中学校において眼科校医、耳鼻科校医の配置体制を実現した他、精神科等専門校医制度確立(地域児童精神科医療学電話相談事業)に尽力した。
柳 務 先生(82歳 愛知県)
脊椎・脊髄疾患及び認知症の研究に貢献した功労者
昭和50年度厚生省特定疾患後縦靱帯骨化症調査研究班などさまざまな研究に参加し、脊椎靱帯骨化症全般の実態を明らかにした他、変形性頸椎症に伴う新タイプの筋萎縮症の存在を指摘し、臨床に新たな視点を与えた。
更に脊椎・脊髄疾患を対象に多くの関連各科との連携システム化を図った研究体制の構築に尽力した。
また、認知症に関する多くの研究業績を挙げ、近畿・東海北陸・甲信地方の認知症介護指導者の養成をするなど介護福祉の質の向上に貢献した。
伊藤 勉 先生(73歳 三重県)
地域医療・介護支援体制の充実に貢献した功労者
桑名医師会の役員を歴任中、経営が悪化していた桑名市民病院を地域の病院と統合し、地方独立行政法人桑名市総合医療センターとして立ち上げるとともに、「桑名医師会立訪問看護ステーションえがお」を設立。
警察医として検死に携わる一方、桑名警察署の産業医を務めた他、現在も桑名市認知症初期集中支援チーム員として認知症の早期診断、早期対応に向けた支援体制の構築のため活動を続けている。
齋藤 信雄 先生(75歳 京都府)
医師会事業及び地域医療体制の構築に貢献した功労者
京都府医師会の理事就任時には、医師の学術研鑽の場を設け、生涯教育システム及び府市民への医療提供体制の充実に尽力した。
また、各病院間の連携の下、基本健診や乳がん検診における検診医の調整、派遣協力を行うとともに、勤務医の地域医療活動への参画に寄与した。更に指導医養成や研修医への支援事業等に尽力した他、医療安全対策システムの構築に努めるなど、地域住民へ安定的に医療を提供するための体制構築に貢献した。
大田 研治 先生(76歳 兵庫県)
医師会事業及びがん検診の推進に貢献した功労者
姫路市医師会において、全国に先駆けた地域医療情報ネットワークシステムの構築とともに、住民検診システムの確立や胃がん個別検診を始めとした検査検診事業全般の整備に尽力し、受診率及び精度の向上に多大な成果を挙げた。
また、公衆衛生の普及充実と地域保健の向上に努め、病診・病病の機能連携と市民向けの情報開示システムの推進の他、救急医療体制の再整備など、地域医療活動の推進にも大きく寄与した。
青山 信房 先生(81歳 奈良県)
医師会事業及び救急医療体制の整備に貢献した功労者
長年にわたり脳神経外科医として地域住民の健康保持増進に寄与。橿原地区医師会では、勤務医の相互連携や医師会への加入率向上に取り組むなど、医師会の組織強化に尽力した。奈良県医師会では、救急医療に関する諸問題の情報共有に努め、勤務医、労災・自賠責保険の担当理事として精力的に医師会活動に取り組んでいる。
また、自院においても年間1,500件を超える救急患者を受け入れ、地域の救急医療体制の向上と確保に貢献している。
井上 晃 先生(83歳 島根県)
へき地医療活動に著しく貢献した功労者
厳しい医療環境の中、地域住民の健康を守るための予防活動並びに医療サービスの維持・向上など、へき地診療に寄与するとともに、総合病院との連携を密にすることで、高度医療サービスの提供を目的とした病診連携を構築し、地域医療の充実、発展に尽力した。
また、多年にわたり、幼稚園の園医や小・中学校の校医を務める一方、仁多郡医師会、雲南医師会及び島根県医師会の役員等として会務に参画し、医学・医術の振興にも貢献した。
真田 幸三 先生(87歳 広島県)
医の倫理の実践及び救急・災害医療に貢献した功労者
「医療苦情相談窓口」を全国に先駆けて開設するとともに、医の倫理の向上、医事紛争防止への強化策として、広島県医師会独自の診療情報の提供に関する事業の推進に尽力した。
また、救急救命士が活用する各種プロトコル、検証票、教育カリキュラムの作成やメディカルコントロール担当医師に対する養成事業など先駆的な取り組みの他、災害発生時における情報伝達体系の整備を行う等、災害時の医療救護体制の構築にも多大な貢献をした。
江里 健輔 先生(79歳 山口県)
医学の発展及び地域医療体制の充実に貢献した功労者
山口大学で国立大学初の先進救急医療センターの設置や救急外来の新設等に取り組んだ他、山口県立中央病院院長就任時には、へき地支援機構を設置する等、医療環境の改善、地域福祉の向上に努めるとともに、セカンド・オピニオン外来や患者等からの無料メール相談の開設や看護職員等の養成にも尽力した。
また、「自分の体は自分で護る」をキーワードに、講演活動や地方紙を通じ、地域住民の疾病予防、健康増進等、公衆衛生の向上にも貢献した。
有住 基彦 先生(76歳 徳島県)
医師会事業及び学校保健活動に貢献した功労者
板野郡医師会員の功績を称える表彰規程の策定や会員向けの情報提供・勉強会の開催等、会員の融和と団結に努めるとともに、徳島県補助事業「在宅医療連携拠点事業」への参画、板野郡5町の委託事業「在宅医療・介護連携事業」の受託など、在宅医療の推進に尽力した。
また、臨床医として地域医療を支えながら、昭和62年から現在にわたり、小学校の学校医として、学校保健活動を通じた児童・生徒の健康管理の向上に寄与している。
吉野 俊昭 先生(83歳 愛媛県)
介護・高齢者福祉の推進に貢献した功労者
介護老人保健施設を開設後、今治市からの委託を受け、在宅介護支援センター及びホームヘルプサービス事業を開始した他、今治市初の老人訪問看護ステーションや特別養護老人ホームを開設するなど地域の保健・医療・福祉の連携と充実を図ってきた。
また、愛媛県老人保健施設協議会会長・全国老人保健施設協会愛媛県支部長として、老健施設の定着と発展に努めるとともに、愛媛県老人福祉計画の策定に参画するなど、介護事業の発展に貢献した。
猿田 隆夫 先生(76歳 高知県)
医学の発展及び地域医療の向上に貢献した功労者
『高知市医師会医学雑誌』の創刊以来、編集・発行に尽力。「医師会は学術専門団体であり、会員の医学の知識と技術の習得へ貢献しなければならない」という強い信念の下、医学、医術の発展に寄与した。更に日医Libにも掲載する等、全国に向けた情報発信に努めた。
また、32年にわたり、医療活動を通じ地域住民の健康管理、保健衛生の向上に携わるとともに、市民・県民向けのフォーラムを開催する等、住民の健康の保持・増進の意識の向上に貢献した。
宮﨑 良春 先生(70歳 福岡県)
地域医療・介護支援体制の充実に貢献した功労者
福岡市中央区医師会長、福岡県医師会理事、福岡市医師会長を歴任。福岡県医師会では、医療モニター「メディペチャ」を企画し、医師と患者の相互理解の深化に尽力した。
福岡市医師会では、地域連携パス(脳血管障害・大腿骨頸部骨折)を策定した他、市内の地域包括支援センターの半数を医師会が受託し、その事業運営に寄与した。
また、泌尿器科診療医として介護職員への講習や市民公開講座を開催する等、排泄ケアの知識・技術の普及啓発に貢献した。
江畑 浩之 先生(70歳 鹿児島県)
医師会事業及び救急医療体制の整備に貢献した功労者
12年にわたり鹿児島県医師会の役員を歴任。「医師の心得」を作成し、会員の資質向上に努めるとともに、医療安全対策研修会による医療機関の安全管理の確保等、医療・保健・福祉の発展に寄与した。
また、川内市医師会役員として、医師会病院の建て替えに携わり、病院の健全な経営及び発展に尽力した他、救急輪番医療機関の医師が相談する緊急電話連絡体制や「川内市医師会災害医療救護計画」の整備などにも貢献した。
岸本 幸治 先生(84歳 沖縄県)
医師会事業及び学校保健活動に貢献した功労者
那覇市医師会の理事、常任理事、副会長、監事を務める中で、医師会事業の発展強化に尽力した。
那覇看護専門学校の新築移転及び正看護師2年課程の新設に携わるだけでなく、教職員の能力向上のための研修会、講演会を行うなど、看護教育に大きな功績を残した。
また、29年の長きにわたり、中学校の学校医として生徒の健康管理、健康教育並びに疾病予防に努め、現在でも定期学校健診に従事する等、地域において活躍している。