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平成30年(2018年)10月20日(土) / 日医ニュース

祝 本庶京大特別教授 ノーベル医学・生理学賞受賞

祝 本庶京大特別教授 ノーベル医学・生理学賞受賞

祝 本庶京大特別教授 ノーベル医学・生理学賞受賞

 日医の会員でもある本庶佑京都大学高等研究院副院長/特別教授が10月1日、ノーベル医学・生理学賞を受賞することが決まった。これを受けて、横倉義武会長は翌2日、別掲のコメントを公表し祝意を表した。

 現在、がんの治療は外科手術と放射線療法、抗がん剤による薬物療法が主流となっており、その組み合わせにより治療がなされているが、本庶特別教授が開発した免疫システムを利用した新しいタイプの抗がん剤に近年注目が集まっていた。
 そのような中で決定した今回のノーベル医学・生理学賞の受賞は、新しいがん治療を打ち立てたことが高く評価されて、決まったものである。

181020a3.jpg  人間には、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体を攻撃する免疫の仕組みが備わっている。T細胞などの免疫細胞は、体内で正常な細胞から変化したがん細胞を異物と見なして攻撃するが、一部のがん細胞はこの仕組みをかいくぐって、免疫の働きにブレーキをかけ、攻撃を阻止し、増殖を続けてしまう。
 本庶特別教授は、研究室の大学院生が1992年にT細胞の表面で偶然発見した分子「PD―1」の研究を進め、この分子がT細胞のブレーキ役になっていることを解明。がん細胞の表面にある「PD―L1」がT細胞のPD―1と結合することで、免疫の働きが抑制されていることを明らかにした。
 この結合を阻止してブレーキを解除することで、T細胞を活性化させることができれば、新たながんの治療法になると考えた本庶特別教授は、製薬会社と協力して、「PD―1」を標的とした世界初の皮膚がん治療薬「オプジーボ」を開発。2014年7月に製造販売承認を取得した。
 患者によっては大きな効果があり、肺がんや腎細胞がんの治療にも使われているが、今後は、効果の有無を事前に見極める方法の確立が課題と言われており、本庶特別教授もその研究を続けていきたいとしている。
 なお、本庶特別教授は、11月1日に開催される「日本医師会設立71周年記念式典並びに医学大会」において、日本医師会最高優功賞を受賞することが決定しており、「驚異の免疫力」と題して特別講演を行うことになっている。
 また、同日、日医会館において、横倉会長と対談することも決まり、その模様は新春対談として、本紙に掲載する予定としている。

181020a4.jpg本庶 佑(ほんじょ たすく)
京都大学高等研究院副院長/特別教授
 昭和17年1月生まれ。昭和41年京大医学部卒業、昭和50年に京大大学院医学研究科生理系博士課程修了後、昭和59年に京大医学部教授、平成7年に京大大学院医学研究科教授に就任。平成30年より現職。
 平成28年には日医の「医師の団体の在り方検討委員会」の委員長に就任し、翌年3月には報告書を横倉会長に提出している(写真)
 平成25年の文化勲章を始め、多くの賞を受賞している。

181020a2.jpg 本庶佑京都大学高等研究院副院長/特別教授が10月1日、2018年のノーベル医学・生理学賞を受賞されることが、スウェーデンのカロリンスカ研究所より発表されました。日本人の同賞の受賞は2年ぶりのことであり、5人目の快挙となります。
 本庶先生は平成28年10月にはご多忙の中、会内に設置した「医師の団体の在り方検討委員会」の委員長にご就任いただき、強いリーダーシップの下で、翌年3月には4つの提言を盛り込んだ報告書を取りまとめていただきました。
 また、日本医師会が医学・医療の発展に貢献してきた方にお贈りする最高優功賞を今年、受賞されることも決定しており、11月1日に行われる「日本医師会設立71周年記念式典並びに医学大会」では、「驚異の免疫力」と題して、特別講演をしていただく予定となっております。
 日本医師会の会員でもある先生が、今回、ノーベル医学・生理学賞を受賞されたことは、日本医師会としても誇らしく、大変喜ばしいことであり、これまでの先生のご尽力とその成果を改めて大いに称えたいと思います。
 本庶先生の研究成果を基に開発された、がん免疫治療薬「PD―1阻害剤オプジーボ」は、さまざまながんの治療に効果があることが分かり、今では他に治療の手立てのなかった世界中の患者さんの命を救っていますが、このことは、まさに、基礎医学における地道な研究が臨床につながった好事例と言えます。
 わが国では、基礎医学の分野で成果を出すまでに時間がかかるだけでなく、政府の補助金の削減などもあり、基礎医学を志す人達が少なくなっていると言われており、日本医師会としても、その現状を危惧しております。
 基礎医学は臨床を支える重要な学問であり、日本医師会といたしましても、基礎医学に携わる方々が立派な研究成果を生み出せるよう、引き続きその環境整備に努めて参りたいと考えております。
 また、より多くの人々を救うためにも、本庶先生には引き続き、日本の基礎医学研究の先頭に立って研究を続けていただき、後進の指導に当たっていただきたいと思います。
日本医師会会長 横倉義武

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