都道府県医師会組織強化担当役職員連絡協議会が6月8日、日医会館大講堂で開催された。 当日は、横倉義武会長のあいさつに引き続き、今村聡副会長が、日医が組織強化を図る意義について講演し、組織率向上への協力を求めた他、秋田県・東京都両医師会から組織強化に向けた取り組み事例の報告が行われた。 |
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本協議会は、本年3月に会内の医師会組織強化検討委員会が取りまとめた「医師会組織強化に向けた検討結果(報告・提言)」を受けて初めて開催されたもので、医師会の基本的事業と社会的役割、入会の意義などについての理解を深め、意識の共有と業務の一層の円滑化を図り、医師会の組織強化を推進することを目的としている。
今村副会長の司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉会長は、研修医会員の会費無料化や入会メリット等をまとめたパンフレットの作成等の提言の他、各種調査などを行ってきた医師会組織強化検討委員会に謝意を示した上で、昨年12月に日医会員数が初めて17万人を超えたことを報告。一方、都道府県医師会の会員で日医に未入会の医師が約1万7000人、郡市区等医師会の会員で日医に未入会の医師が約3万人いることから、「我々が考える、国民視点に立った医療の実現に向けて、更なる組織率の向上によって実効性を高めていくことが重要である。郡市区等医師会に入会された方には、日医まで入会して頂きたいと願っており、郡市区等医師会にも属さない約12万人の医師にも働き掛けていくことが重要と考えている」と述べた。
また、平成27年の同委員会報告書において、「Face To Faceのコミュニケーションこそ、未入会の医師に入会を促すためには最も効果的」との提言があったことに触れ、「入退会手続きの窓口となる郡市区等医師会や、大学とも太いパイプをもつ都道府県医師会にも協力をお願いしたい。とりわけ、全ての医師会の役職員に、医師会の目的や事業を再認識し、医師会組織強化に向けた思いを共有して頂くことが、更なる組織率の向上につながる」として、本協議会の充実に期待を寄せた。
組織強化に向けた医師会事務局へのお願い
今村副会長は、まず、医師会の三層構造(日医の会員資格は都道府県医師会の会員であることと定められ、都道府県医師会の会員資格は管内郡市区等医師会の会員であることと定められている)について説明し、医師会への入口となる郡市区等医師会の窓口での対応が医師会組織全体の印象を決め、その後の継続性や三層全てへの入会の有無に影響することを強調。
約32万人いるわが国の医師のうち、郡市区等医師会に入会している医師は約20万人いることから、「郡市区等医師会の会員が三層全てに加入するだけでも、60%強の加入率となる」として、日医までの加入を促すような働き掛けを求めた。
また、郡市区等医師会員が日医会員である割合を都道府県別に見ると、100%から50%程度と地域差が大きいとして、郡市区等医師会加入割合と日医加入割合のどちらも100%に近づけるような取り組みが必要だとした。
医師会の役割については、(1)国民の生命と健康を守る、(2)医師の医療活動を支える―ことにあるとするとともに、会員を支えるため、①診療②生活③学習④女性医師―の面からサポート事業を展開していることを解説した。
①については、日医医師賠償責任保険制度等によって、医師が矢面に立つことなく紛争が解決できるよう、訴訟や示談などの交渉を代行する仕組みが整っている、②については、日医医師年金制度があり、非営利、非課税、ローコストによる効率的な資産運用が行われ、医師のライフスタイルに合わせた受け取りの設計が可能など、メリットが大きい、③については、日医生涯教育制度によって最新の医学・医療が学び続けられる環境を整えている、④については、女性医師バンクによる就業継続や復帰支援を行っている―ことなどを紹介した。
この他、平成27年度より研修医会員への日医会費無料化、30年度より日医医賠責保険料引き下げに伴う日医会費の改定を実施しているとした。
更に同副会長は、日医が数多くの国の審議会等に参画していることを示し、「現場を知らない政治家や官僚だけに医療政策を任せてしまうと、財政優先・医療の営利産業化など、患者のデメリットにつながる方向へ向かってしまう」と指摘。医療現場からの意見を届け、より良い医療政策の実現に寄与することが日医の役割であり、組織率の向上によってその発言力が高められるとして、各地域の実情に応じたきめ細やかな組織強化対策を求めた。
都道府県医師会における組織強化に向けた取り組み事例
続いて、秋田県医師会と東京都医師会が組織強化に向けた取り組み事例を報告した。
五十嵐知規秋田県医師会常任理事は、平成27年にまとめられた同委員会の提言の中で、中長期的に取り組むべき施策として、「医師会入退会・異動手続きの簡素化」が挙げられたことを受け、県内の郡市医師会間を異動する際にブランクが発生せず、郡市医師会が会員の異動先を把握しやすい方法を検討してきたことを説明。
秋田県では、郡市医師会の会員が全て県医師会と日医の会員でもあるため、県医師会が各郡市医師会の会員名簿を把握しており、県内の異動であれば簡単に手続き等ができる状況にあるが、実際には会員が入退会する郡市医師会にそれぞれ届け出を行っている。このため、現行の「入会申込書」「退会届出書」「異動報告書」を一枚に集約し、県内で異動する場合、会員は県医師会に書類を提出、県医師会から入退会する郡市医師会に報告する案を検討しているとし、「その実現のためにも、一度県医師会に入会した会員は、県内各郡市医師会に理事会等での審査をすることなく、入会できるよう協力を求めていく」と述べた。
角田徹東京都医師会副会長は、47の地区医師会、12の大学医師会、8病院からなる都立病院医師会で構成されている都医の特殊性に触れ、大学医師会との連携のため、都医役員に大学理事枠を設けている他、12大学医師会と都医理事との連絡協議会を開催していることなどを概説。医学生や次世代の医師育成、支援体制の充実に向け、(1)毎年、大学キャンパスで「医学生、研修医等をサポートするための会」を開催、(2)5大学で都医役員による医学生への講義を実施、(3)医学生のサークル活動支援の一環として都医会館利用を推進、(4)医学生の活動(地域公衆衛生あるいは社会・文化領域)を顕彰並びに助成金を提供―していることを紹介した。
また、地区医師会との連携・情報共有として、文書管理クラウドサービスを使った文書管理・地区への通知や、月1回の地区医師会長協議会の開催、都医理事会への地区医師会長の参加などを行っているとした。
会員に対しては、医療機関のトラブル解決支援の仕組み「ディフェンス・フォース・サービス」や、開業支援・継承支援セミナーを実施しているとし、「医師になった方には、日医綱領にあるような高い理念をもち、三層全ての医師会組織に加入し、医療環境を整えていくことにも注力して頂きたいと願っている」と結んだ。
その後のフロアとの質疑では、会費のあり方や税制上の取り扱いを巡り議論が交わされた他、各地で模索されている研修医会員の継続入会への取り組みや、医師会員であるメリットを増やす取り組みなども報告された。