平成29年度家族計画・母体保護法指導者講習会が昨年12月2日、日医会館大講堂で開催された。
今村定臣常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長(今村常任理事代読)は、安倍晋三内閣総理大臣が11月の所信表明演説の中で、「少子高齢化を国難とも呼ぶべき最大の課題と位置づけ、その克服に向けた施策を実行し、全世代型の社会保障を実現させていく」と強調したことに言及し、「そのためにも、社会全体で子育てをしやすい環境を整え、次世代を担う子ども達の健やかな成長を等しく支援するための施策が必要である」と述べ、日医としても積極的に政策提言を行っていく考えを示した。
続いて、加藤勝信厚生労働大臣(北澤潤厚労省子ども家庭局母子保健課長代読)のあいさつ、木下勝之日本産婦人科医会長の来賓あいさつの後、福田稠熊本県医師会長/日医母体保護法等に関する検討委員会委員長を座長として、シンポジウム「産婦人科領域における医療安全」が行われた。
白須和裕日本産婦人科医会副会長/日医母体保護法等に関する検討委員会委員は、「母体保護法指定医師の指定基準モデルの改定」について解説。
今回の改定は、平成25年の改定の様式及び文言の整理が主であるとした上で、①指定医師の資格取得の「技能」要件である人工妊娠中絶の症例経験の機会を増やすため、指定医師研修機関の指定と連携する指定医師研修連携施設の登録の仕組みを明確化②指定医師の指定を受けるために人工妊娠中絶の研修を受けている医師(非指定医師)は、「指定医師研修機関又は指定医師研修連携施設で指導医(指定医師)の直接指導の下においてのみ人工妊娠中絶術に関与できる」ことを再確認③指定医師の新規取得に当たって、附則にある様式に従って「研修症例実施報告書」の提出が必要であることを明確化―したと報告した。
海野信也北里大学病院院長/北里大学医学部産科学教授は、「産科麻酔における医療安全」について講演。日本産婦人科医会による「分娩に関する調査」結果の概要や妊産婦死亡症例検討評価委員会の無痛分娩関連症例の検討内容について説明し、現状のデータからの推定では、無痛分娩における妊産婦死亡率が全体と比較して明らかに高いとは考えにくいとした。
その上で、厚生労働科学特別研究事業「無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究」の検討状況を報告。無痛分娩の安全性に関しては、①硬膜外麻酔の重大な合併症への対応能力②無痛分娩自体による妊産婦死亡リスクの増加の懸念―が問題との認識を示すとともに、その対策として、無痛分娩施設の情報開示、医師・医療スタッフの研修体制の整備、誘発麻酔分娩のリスクに関する臨床研究の実施等が重要との認識を示した。
今村常任理事は、「医療事故調査制度の現状」について説明した。
まず、本制度の目的は、「医療の安全を確保するために、医療事故の再発防止を行うことである」ことを確認した上で、事故報告すべきか判断する際の「考え方」としては、「医療事故が疑われる症例に関しては積極的に報告することが望ましい」とした。
また、院内事故調査の質を向上させるためには、支援団体の機能の充実強化により初期対応を充実させるとともに、調査に関わる人材の育成により鑑別疾患や聞き取りを充実させる必要があると指摘。更に、支援団体の取り組み等も紹介した。
北澤母子保健課長は、行政の立場から、アベノミクス新・三本の矢の一つに「夢をつむぐ子育て支援」が掲げられていることや「健やか親子21」では体罰によらない子育てを啓発するための資料「愛の鞭ゼロ作戦」を作成していること、更に子育て世代包括支援センターの事業等、最近の母子保健行政の動きについて概説し、一層の理解と協力を求めた。
その後、シンポジストと参加者との間で活発な質疑応答が行われ、講習会は終了となった。