日本医師会最高優功賞のうち、都道府県医師会長推薦による「医学、医術の研究又は地域における医療活動により、医学、医療の発展又は社会福祉の向上に貢献し、特に功績顕著なる功労者」と、その受賞理由を紹介する。 |
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田村 瑞穂 先生(81歳 青森県)
地域住民の健康保持及び福祉の増進に貢献した功労者
青森県医師会役員として、県下の医療・福祉・介護活動を始め、弘前大学医学部学生への寄付講座講師として、医師会活動の周知に貢献した。
また、弘前市の健康推進協議会長、献血推進協議会長、学校保健会長を歴任し、各種検診の奨励や伝染病の予防、献血の推進・普及並びに体制の確立など、市民の健康生活の推進を図るとともに、地域包括支援センター運営協議会並びに地域密着型サービス運営協議会長として、高齢者の介護や福祉支援活動に多大に寄与した。
寺澤 捷年 先生(72歳 福島県)
漢方医学の発展に著しく貢献した功労者
日本の伝統医学の継承者である氏は、神経内科専門医として臨床に携わる中で、大学院で専攻した中枢神経解剖学の知識を漢方に採り入れるなど、新たな研究に果敢に挑戦。自身が創生した漢方医学を主軸に西洋医学を活用する「和漢診療学」の理念は、漢方の歴史上、そして日本の医学の歴史において初めての画期的な業績と言える。
また、釣藤散に認知症の改善効果があることを明らかにするなどの科学的研究の功績は極めて大きい。
箕輪 真一 先生(89歳 群馬県)
地域医療及び公衆衛生の向上に貢献した功労者
昭和46年から高崎市医師会役員を歴任。直面する保健、医療の課題に取り組むとともに、「新潟港外タンカー事故」の際には現地へ赴き、汚染現場を体験。この実経験を基に、公害や環境対策推進活動に一層尽力した。
また、昭和38年開業以来、41年間の長きにわたり地域の学校(園)医を務め、児童・生徒・教職員の健康保持増進を図るとともに、食生活調査を実施する等、将来の成人病予防、肥満児対策等の一環として食育にも積極的に携わっている。
向山 秀樹 先生(71歳 神奈川県)
地域医療及び外国人患者受入環境整備に貢献した功労者
34年以上の長きにわたり地域小児科医として尽力。特に、地域在住の外国人やその家族が日本で安心して暮らせるよう、地域住民との交流の場として診療所を開放した他、診療所や病院を受診する際の言葉の問題を解決するため「22カ国外国人来診患者問診票」を策定し、無料で配布するなど、地域住民への貢献は顕著である。
また、小児科医として、地域の重症心身障害者の会や知的障害者の会等を結成し、その運営に尽力するとともに、不登校児の問題解決のための支援活動に力を注いだ。
加藤 寿彦 先生(79歳 愛知県)
警察への協力活動に著しく貢献した功労者
平成2年から現在に至るまで、警察医として、被留置者延べ21,000人以上に月2回の定期健康診断を実施し、被留置者の健康管理に努めるとともに、留置施設内の衛生管理や季節ごとの健康上の留意点についての知識の啓発・助言を行うなど、保健衛生の指導に多大に貢献。
昼夜休日を問わない検視依頼にも対応し、その取り扱い件数は200件を超えている。また、警察署員からの健康相談にも気軽に応じるなど、署員の健康管理指導にも熱意を持って当たった。
武藤 康正 先生(83歳 三重県)
学校保健活動及び地域医療体制の確立に貢献した功労者
開業直後から26年間学校医を務める一方、四日市医師会役員として、健康教育にも熱心に取り組み、各種予防接種問診票を作成するなど学校保健業務に尽力した。
また、県下の初期救急医療体制の充実・強化や幅広い人材の確保を目指した看護師の養成を図るとともに、老人訪問看護制度創設に伴い、行政及び看護協会と連携して老人訪問看護ステーションを設置する等、現在の管内の在宅医療の礎となる体制の構築に多大に貢献した。
菊池 英彰 先生(78歳 兵庫県)
地域の保健・医療・福祉の向上に貢献した功労者
29年にわたり地域住民の健康管理に尽力。常に自治体の要職を務め卓越した指導力を発揮し、会員への指導・管理はもとより行政と綿密な連携を図り、地域医療の推進と発展に努めるとともに、結核の適正な医療が遅滞なく行われるよう、西宮市の結核治療の要の一翼を担った功績は極めて顕著である。
また、生活習慣病の増加等に伴い、行政の依頼を受け「健康ひょうご21県民運動推進阪神南会議」会長に就任。現在も推進員の教育に熱心に取り組んでいる。
坂口 守彦 先生(80歳 奈良県)
産科医療及び地域住民の健康保持増進に貢献した功労者
産婦人科医として長年にわたり地域のお産を支え、産科医療に貢献。大和高田市医師会役員を歴任中には、同医師会立葛城メディカルセンター会長及び葛城地区休日診療所の管理者を兼務し、集団検診、がん検診等の各種健診事業及び救急医療体制の推進・向上にも尽力した。
役員退任後の現在も、市保健センターの乳幼児健診等に献身的に取り組み、地域住民が安心して健やかに暮らすことができる環境づくりに努めている。
寺岡 暉 先生(82歳 広島県)
地域における医療・介護提供体制の確立に貢献した功労者
地区医師会役員として、広島県の中山間地域の医療の推進を図るとともに、介護保険制度施行に向けて医師会館に在宅介護支援センター、居宅介護支援事業所を順次開設した他、関係者が患者の情報を共有できる「在宅医療情報共有システム」を構築する等、在宅医療・在宅介護の充実を積極的に推進した。
また、市政策顧問等を歴任し、医療・介護等の総合的政策の実現に向けて専門的見地から提言を行うなど、住民が安心できる医療提供体制の充実に果たした功績は多大。
島本 政明 先生(72歳 高知県)
地域医療及び保健衛生の向上に貢献した功労者
地域に根差し患者に寄り添った医療の提供のみならず、文化や福祉、まちづくり活動等さまざまな分野で幅広く活躍。高知市医師会及び高知県医師会役員を歴任中は、主に地域医療担当者として地域医療の発展向上に尽力した。
また、県警察協力医として昼夜問わず臨場し、毎年40~50件(市内の大半の検案)を行う中で、検視官への的確な助言や遺族等に丁寧かつ親切に説明し不安を解消する等、検視業務全般に多大に貢献した。
田﨑 考 先生(80歳 佐賀県)
学校保健及び小児保健の向上に貢献した功労者
学校心臓検診の判読・判定に積極的に従事するなど、その実績は広く信頼を得るところとなり、県医師会成人病予防センター学校心臓検診専門委員会委員長に就任。県内の学校心臓検診事業の中心的役割を果たした。
また、1次検診で採血検査を取り入れる「小児成人病モデル検診事業」の実現に大きな役割を果たすとともに、小児生活習慣病検診導入に向けた研究会を立ち上げ、関係者の質と意識の向上につなげるなど、県内だけでなく各地の学校保健、小児保健の発展にも大きく寄与した。
森 正孝 先生(74歳 長崎県)
離島僻地医療に著しく貢献した功労者
長崎県離島医療圏組合対馬いづはら病院長等を歴任する傍ら、後進の育成や対馬の医療事情の調査・医療情報の発信等、地域医療の向上に尽力。平成20年からは、市立大村市民病院に勤務し、離島の対馬・五島地域の中核病院において、ドクターヘリを活用したへき地支援を行い地域医療を支えている。
また、対馬市医師会長として、医師会事業の発展に尽力するとともに、長崎県の離島医療史の執筆や医師の視点から薬草の本を発刊する等、その活動は幅広い。
竹元 隆洋 先生(77歳 鹿児島県)
地域医療及びアルコール健康障害対策に貢献した功労者
精神科医としてアルコール関連問題に卓越した見識を持ち、九州アルコール関連問題学会長並びに日本内観学会長などを務めた他、アルコール専門病棟、内観療法研修棟を設置し、長年にわたり内観療法に取り組む等、アルコール関連問題の第一人者として活躍。
更に、一般県民の目線に立った医療・医師会のあるべき姿を構築するため、「医療モニター制度」や「苦情相談窓口」を県行政より先駆けて県医師会内に設置する等、患者と医療機関との信頼関係の構築に多大に貢献した。
國吉 勲 先生(80歳 沖縄県)
学校保健活動に著しく貢献した功労者
那覇市医師会役員を歴任する中、学校保健事業を担うリーダーとして、学童定期健康診断実施について、会員施設並びに教育委員会等関係団体と連携の下、試行錯誤を重ね、今日の市医師会員全員出務の実施方法や所見のある児童を専門医へとつなぐ体制を確立した。
また、事前に学校長、養護教諭等関係者と度々ミーティングを行う等、健診の円滑な推進と向上はもとより、児童生徒の健康管理、健康教育に強い信念と熱意を持って尽力した。
受賞者一覧
日本医師会最高優功賞
◆在任6年都道府県医師会長
嘉数 研二(宮 城)
近藤 邦夫(石 川)
関 隆教(長 野)
柵木 充明(愛 知)
寺下 浩彰(和歌山)
平松 恵一(広 島)
岡林 弘毅(高 知)
近藤 稔(大 分)
◆医学、医術の研究又は地域における医療活動により、医学、医療の発展又は社会福祉の向上に貢献し、特に功績顕著なる功労者(都道府県医師会長推薦)
【団体の部】
●災害医療及び地域医療体制の復興に貢献した医師会
石巻市医師会(宮 城)
【個人の部】
●地域住民の健康保持及び福祉の増進に貢献した功労者
田村 瑞穂(青 森)
●漢方医学の発展に著しく貢献した功労者
寺澤 捷年(福 島)
●地域医療及び公衆衛生の向上に貢献した功労者
箕輪 真一(群 馬)
●地域医療及び外国人患者受入環境整備に貢献した功労者
向山 秀樹(神奈川)
●警察への協力活動に著しく貢献した功労者
加藤 寿彦(愛 知)
●学校保健活動及び地域医療体制の確立に貢献した功労者
武藤 康正(三 重)
●地域の保健・医療・福祉の向上に貢献した功労者
菊池 英彰(兵 庫)
●産科医療及び地域住民の健康保持増進に貢献した功労者
坂口 守彦(奈 良)
●地域における医療・介護提供体制の確立に貢献した功労者
寺岡 暉(広 島)
●地域医療及び保健衛生の向上に貢献した功労者
島本 政明(高 知)
●学校保健及び小児保健の向上に貢献した功労者
田﨑 考(佐 賀)
●離島僻地医療に著しく貢献した功労者
森 正孝(長 崎)
●地域医療及びアルコール健康障害対策に貢献した功労者
竹元 隆洋(鹿児島)
●学校保健活動に著しく貢献した功労者
國吉 勲(沖 縄)
◆日本医師会会長特別表彰者
●長年にわたり学術企画委員会委員及び委員長として日本医師会雑誌の学術的価値の向上に貢献した功労者
跡見 裕(東 京)
●国民医療の向上に著しく貢献した功労者
西島 英利(福 岡)
日本医師会優功賞
◆在任10年日本医師会代議員
橋本 省(宮 城)
真鍋 勉(東 京)
澤井 博司(神奈川)
刑部 利雄(山 梨)
秋田 光彦(大 阪)
山田 晃久(大 阪)
空地 顕一(兵 庫)
大澤 英一(奈 良)
田村 公之(和歌山)
魚谷 純(鳥 取)
石川 紘(岡 山)
檜谷 義美(広 島)
濱本 史明(山 口)
下河邉 智久(福 岡)
福島 敬祐(熊 本)
松岡 幸一郎(大 分)
◆在任10年日本医師会委員会委員
橋本 洋一(北海道)
深澤 雅則(北海道)
髙橋 克子(宮 城)
登米 祐也(宮 城)
工藤 行夫(千 葉)
有賀 徹(東 京)
猪口 正孝(東 京)
金生 由紀子(東 京)
川原 貴(東 京)
権丈 善一(東 京)
坂本 哲也(東 京)
神馬 征峰(東 京)
永池 京子(東 京)
中嶋 義文(東 京)
古井 滋(東 京)
村田 真一(東 京)
吉川 徹(神奈川)
神野 正博(石 川)
関 健(長 野)
田内 美津子(静 岡)
小栗 貴美子(愛 知)
松尾 清一(愛 知)
松井 道宣(京 都)
中村 安秀(大 阪)
鈴木 克司(兵 庫)
菅波 茂(岡 山)
木下 成三(徳 島)
大木 實(福 岡)
釣船 崇仁(長 崎)
森崎 正幸(長 崎)
山本 太郎(長 崎)
坂本 不出夫(熊 本)
藤本 保(大 分)
吉田 建世(宮 崎)
◆都道府県医師会長退任者
古谷 正博(神奈川)
小村 明弘(島 根)
日本医師会医学賞
●骨免疫学による自己免疫疾患および骨関節疾患の研究
高柳 広(東大・免疫学)
●未病と予防の遺伝環境医学に関する研究
小泉 昭夫(京大・環境衛生学)
●糖尿病病態の分子生物学的解析と新規糖尿病治療法開発への応用
荒木 栄一(熊本大・代謝内科学)
日本医師会医学研究奨励賞
●新生児消化器疾患の病態解明に向けた腸管免疫細胞の網羅的解析
澤 新一郎(北大遺伝子病制御研究所)
●組織幹細胞の分化・増殖機構の解明と内因性心筋再生の増幅方法開発への応用
武田 憲文(東大・循環器内科)
●ペア型免疫受容体に着目したアレルギー疾患の制御機構解明と治療法開発
伊沢 久未(順天堂大アトピー疾患研究センター)
●保護的ミクログリアによる血管新生から機能回復を目指す脳梗塞治療法の開発
金澤 雅人(新潟大脳研究所・神経内科学)
●DNA修復機構を基盤とした、合成致死抵抗性腫瘍に対する新規治療法の提示
中田 慎一郎(阪大・小児科学)
●ガングリオシドを標的とした関節軟骨損傷に対する新たな分子標的の同定
小野寺 智洋(北大・整形外科)
●子ども期の貧困及び虐待が成人期までの健康に及ぼす影響に関する疫学研究
藤原 武男(東京医歯大・国際健康推進医学)
●化学物質曝露が小児のアレルギー疾患に与える影響について~社会医学と臨床医学の連携による分子疫学研究~
辻 真弓(産業医大・産業衛生学)
●光を用いた肺がん制圧を目指して:小細胞肺がんに対する新規光線療法とコンパニオン診断システムの開発
佐藤 和秀(名大・呼吸器内科)
●侵襲性真菌感染症に対する全国疫学調査と新規治療戦略の開発
宮崎 泰可(長崎大・臨床感染症学)
●蛋白結合尿毒症物質に着目した慢性腎臓病関連疾患のメカニズム解明と治療法の開発―尿毒症物質の生成減少と除去向上を目指す―
山本 卓(新潟大・腎・膠原病内科学)
●メタボローム解析を利用した膵癌遠隔転移予測因子の検討
千葉 斉一(東京医大八王子医療センター・消化器外科・移植外科)
●前十字靱帯再建術後の靱帯折れ曲がり角度が靱帯治癒に与える影響の解明
田代 泰隆(九州労災病院・整形外科)
●着床障害の分子機構の解析と新規診断・治療法の開発
廣田 泰(東大・女性診療科・産科)
●尿路上皮癌の再発時に起きるゲノム異常の解析
日向 信之(神戸大・腎泌尿器科学)
白寿会員
森 慰子(北海道)
他46名
米寿会員
大野 恒吉(北海道)
他868名