小学校1年生になる前のお正月の頃のことである。
年末になると銀行や近所のお店から来年のカレンダーを頂いた。銀行から頂いたカレンダーの絵は、富士山や松竹梅などのおめでたいものが多く、近所のお店から頂いたカレンダーの絵は振り袖姿の女優さんが多かったように思う。
どのカレンダーをどの部屋に飾るかは親が決めた。子どもの部屋には絵もなく、数字と文字だけの殺風景な日めくり暦だった。
印刷してあるのは日にちと旧暦、月・火・水などの七曜、先負とか大安などの六曜、三りんぼうなどの選日、干支、それに金言などだった。
私は数字とひらがなしか読めなかったので、日めくり暦は全く面白みがなかった。唯一関心があるのは、土曜日は水色の紙に、日曜日は赤色の紙に、祝日は日章旗が印刷されてあることだった。
どうして所々に赤色や水色の紙が挟んであるのか理解できなかった。白色の紙が圧倒的に多いので、その白色の紙が重要でそれ以外の水色や赤色の紙は必要がないと考えて全部破いて捨ててしまった。
その結果、土曜日と日曜日と祝日のない日めくり暦になった。それを見つけた母に「あなたの部屋のカレンダーには休みがないね」と言われたが、その意味は分からなかった。
大人になってから外国に旅行してお土産屋さんに入ったら、その土地の景色や有名な建物が写っていて数字は小さく印刷されたカレンダーが、いずれも有料で展示してあった。
それまではカレンダーは買い求めるのではなく、無料で頂くのだと理解していたので驚いた。店員にこれらのカレンダーの使用目的を聞くと、部屋を美しく飾るためであると教えてくれた。
このごろは日本でも、有名な画家の絵が印刷されたカレンダーなどが本屋さんや文具屋さんなどで売られるようになった。しかし、日めくり暦を見掛けなくなった。毎日忙しくてカレンダーをめくる時間もなくなったのだろうか。
(一部省略)
山形県 山形市医師会たより 第574号より