都道府県医師会生活習慣病(糖尿病・COPD等)担当理事連絡協議会が8月2日、日医会館小講堂で開催された。
同協議会は、健康増進法に基づく生活習慣病対策への取り組みに地域間の格差が指摘されていること、また、第3期特定健診・保健指導(平成30~35年度)の制度運用の見直しに伴い、今後、各地域で保険者との協議やシステム改修への対応が必要になることから、生活習慣病対策に関する問題意識を共有するとともに、現状と課題についての説明を目的として開催されたものである。
温泉川梅代常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、少子高齢化により医療や介護に係る負担が一層増すと予想される中で、健康寿命を延伸する観点からも生活習慣病対策は喫緊の課題であるとの認識を示した上で、「地域における生活習慣病対策には、行政や地域の医師会等、関係団体の連携が不可欠であり、先生方には、連携して取り組みを行うことができる体制の構築に向け、更なる協力をお願いしたい」と述べた。
「COPD対策推進の現状と課題」
初めに、羽鳥裕常任理事が、COPDは世界の死因3位であるにもかかわらず、530万人以上とされる日本のCOPD推定患者の多くが未診断であることを問題視。
禁煙推進・COPD対策に向けた地域における医療連携の推進には、「かかりつけ医機能の充実」「地域包括ケアにおける支援体制の整備」等が今後の課題であるとし、「COPD対策は健康寿命の延伸という観点からも医師会として取り組むべき課題であり、行政に対して医師会から働き掛けを行って欲しい」と要望するとともに、都道府県医師会においてもCOPD対策推進会議等を設置するよう求めた。
また、受動喫煙防止対策を強化・実現するための署名活動への協力に対して謝意を表し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、受動喫煙防止対策を強化する法案の早期成立を目指し、引き続き取り組んでいく考えを示した。
「糖尿病重症化予防等に関する対策の現状と課題」
続いて、鳥井陽一厚生労働省保険局国民健康保険課長が、日本健康会議が取りまとめた「健康なまち・職場づくり宣言2020」の下、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(平成28年4月)を策定したこと、重症化予防(国保・後期広域)ワーキンググループが「糖尿病性腎症重症化予防の更なる展開に向けて」を7月10日に取りまとめたこと等、厚労省のこれまでの取り組みを説明。
実際に取り組みが進んでいるところは都道府県が医師会等と連携して実施している現状を示し、「本取り組みを全国的に横展開するためには、都道府県・市町村の意識啓発・縦割り排除等の課題解消に努めるとともに、取り組み内容の充実等が求められる」とした他、「行政と医師会等の関係団体、糖尿病対策推進会議等が協力して連携体制を構築していくことが何より重要になる」と述べた。
行政との連携体制の構築を―今村副会長
今村聡副会長は、国のさまざまな糖尿病対策や糖尿病の医療計画策定に当たり糖尿病対策推進会議の活用が謳(うた)われているにも関わらず、関係者に十分周知されていない現状を指摘。「生活習慣病対策を行政や保険者が医師会との連携なしに進めることのないよう、都道府県レベルでの重症化予防プログラム策定の際には、医師会・かかりつけ医等が主体となって、企画段階から行政と連携体制を構築して欲しい」と要望した。
その上で、行政と関係団体が相談し合える体制の構築や日本糖尿病対策推進会議への認識を改めてもらうためにも、(1)各構成団体の窓口(担当者)の明確化、(2)日本糖尿病対策推進会議総会の定期開催(自治体担当者に対する出席の呼び掛け)、(3)医療機関と行政機関との連携について周知・啓発―を行っていくとするとともに、「都道府県糖尿病対策推進会議の活動状況調査」(毎年11月実施)への協力を求めた。
「特定健診・保健指導第3期見直し」
引き続き、吉田澄人日医総研研究部統括部長補佐が、健診項目として、「血清クレアチニン検査(eGFRも同時報告)」が新たに追加された他、心電図検査は「『当該年の特定健診の結果において、血圧が受診勧奨判定値以上の者又は問診等で不整脈が疑われる者』を対象者として当日に実施」、眼底検査は「『当該年の特定健診の結果において、血圧又は血糖検査が受診勧奨判定値以上の者』を対象者として特定健診から1カ月以内に実施」と変更されたことを報告。
また、特定保健指導の実施方法については、実施率の引き上げにつながるよう、(1)実績評価を行う期間の最低基準を6カ月経過後から3カ月経過後とする、(2)特定健診当日に初回面接を開始するため、検査結果が揃(そろ)わない場合の初回面接の分割実施を可能とする―こと等、見直しの内容の概要を説明した。
その後の全体討議では、事前に寄せられた質問・要望や関連質問に厚労省の担当者や日医から回答を行った。
出席者は161名。また、テレビ会議システムにより、32都道府県医師会に中継を行った。