レ・クァン・クォン ベトナム保健副大臣を団長とした調査団一行が3月2日、日医会館を訪れ、医師会組織の意義・役割と生涯教育について説明を受けた。
調査団は、2020年の医師・看護師国家試験導入に向けてオーストラリア等海外での視察を実施中であり、メンバーは、ベトナム国会社会問題委員会局長(国会議員)、保健省の科学・技術・訓練局副局長、法制局長、国際協力局副局長、医療戦略・政策研究局副所長とベトドク病院副院長で構成され、牛尾光宏ベトナム保健省保健政策アドバイザーらが同行した。
今回の訪日では、日医の他に、厚生労働省、文部科学省、日本看護協会、JICA本部等を訪れ、レクチャーを受けるとともに、施設内の視察を行っている。
当日は、総務担当の今村聡副会長、国際担当の道永麻里常任理事、生涯教育担当の羽鳥裕常任理事が対応し、今村副会長が「日本医師会の役割」、羽鳥常任理事が「日本医師会の生涯教育について」と題して、それぞれ説明を行った。
今村副会長は、日医について、日本で唯一の医師個人資格で加入する学術団体・専門職能団体であり、国民に信頼される医療の確立を目指して活動しているとしてその概要を説明。郡市区医師会と市区町村、都道府県医師会と都道府県、日医と国・厚労省等、行政のカウンターパートとしての活動や、日医が延べ約200の国の審議会等に参画し、さまざまな提言を行っていること、「日本医師会綱領」によって国民に医師としての高い倫理観と使命感を礎に、人間の尊厳が大切にされる社会の実現を目指すことを約束していることを紹介した。
更に、「日本医師会医師年金」や「医師資格証」「ホテルON LINE予約サービス」などの「会員サービス」の状況も説明した。
羽鳥常任理事は、日医生涯教育制度の理念や、大学教育、国家試験、臨床研修、生涯教育という医師の教育訓練制度における位置づけ等を詳細に説明。更に、「生涯教育制度認定講習会」と「日医生涯教育協力講座セミナー」「e-Learning」、そして「学習単位取得証」と「日医生涯教育認定証」などにも触れた。
特に「日医生涯教育カリキュラム」の説明では、カリキュラムコードの中でも、①医療倫理②医療安全③感染症―は全ての医師が勉強しなければならないと強調。同制度の最近の動きとしては、「地域包括診療加算の要件の一つとなったこと」「認定講習会の中で一定要件を満たしたものは、専門医の認定・更新に必要な単位も取得可能となったこと」等を挙げ、「講習会出欠・単位管理データベース」を用いた「全国医師会研修管理システム」についても紹介した。
講義の後には質疑応答が行われ、レ・クァン・クォン副大臣は、「100%民間の団体として活動している日医のような組織がベトナムにあれば、我々行政はどんなにか心強いことだろうか」と感想を述べた上で、民間団体でありながら社会に影響を与える団体になるには法律や政府からの支援といった公的な基盤があるのかを尋ねた。
これに対して、今村副会長は、「日本の医師は、予防接種など本来行政が行うべきことを受託したり、学校医の役割を果たしたりしており、地域の中でなくてはならない存在として認められている。それらの地域の医師の活動を標準化し質を保つための研修会等は地域の医師会が実施しており、その存在は大きい」と説明。「こうした取り組みに対し、日医は、都道府県・郡市区等医師会へ国からの通知等の情報を提供するなどの役割を担っており、社会における公益性の高さから公益社団法人として認められている。また、国会議員の立法活動への支援を行っていることも存在感の大きさにつながっている」と回答した。
他にも、「卒後研修や専門研修は誰が管理するのか」「日本医学会と日医との関係は」など、活発な意見交換が行われた。
最後に、レ・クァン・クォン副大臣から今村副会長へ、感謝の意を表して記念の盾が贈られた。