「国宝『医心方』のユネスコ『世界の記憶』登録を推進する会」の発起人会が昨年12月5日、参議院議員会館で開催され、発起人代表として横倉義武会長が出席した。
同発起人会は、その名のとおり、日本最古の医学書である『医心方』をユネスコの「世界の記憶」に登録することを目指して発足したものであり、世界遺産としての価値を有するとする識者14名で構成。元日医副会長で元参議院議員の宮崎秀樹氏、尾辻秀久参議院議員らも名を連ねている。
『医心方』は撰者の丹波康頼により984年に宮中に献上された日本最古の医学書であり、全30巻からなる。現在は国宝として東京国立博物館が所蔵している。
本文は全て漢文で書かれており、引用した隋・唐・朝鮮の医書や方術書は120以上に上るが、中には既に散逸してしまい『医心方』によってのみその存在を知る書物も少なくない。そのため、文献学などの日本の文化史上においても価値の高いものと言われている。
また、『医心方』は従来、「中国の医書の引用に終始している」という評価もあったが、昨今では日本人としての観点を加えた、独自性のある医書だという評価がなされてきている。
現在も各分野の研究者により研究が行われており、現代語訳版は、「推進する会」の副会長である槇佐知子氏によって編纂(へんさん)・出版されている。
当日は、羽生田俊参議院議員の司会で開会。冒頭あいさつした横倉会長は、「『医心方』は医学のみならず、国語学史上においても書道史上においても大変貴重なものであり、登録に向けて皆さんと共に頑張っていきたい」とあいさつした。
「推進する会」は今後、国会議員へ議員連盟の設立を働き掛けていくが、出席者からは「医史学会、鍼灸(しんきゅう)学会など、幅広い分野から会員を募ってはどうか」といった意見も出された。
なお、横倉会長は、今回の会合で同会の会長に就任することが決定した。