「首都直下大震災を想定した衛星利用実証実験(防災訓練)2016」が11月16日、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)並びに国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、株式会社NTTドコモの協力の下、日医会館で開催された。
日医では、JAXAとの間で平成25年1月に締結した「超高速インターネット衛星『きずな』を用いた災害医療支援活動における利用実証実験に関する協定」に基づき、NICTと共に、「衛星利用実証実験(防災訓練)」を毎年実施している。
今回の訓練には、「きずな」の送受信アンテナやNTTドコモの衛星携帯電話「ワイドスターⅡ」端末を設置した、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、兵庫県の各医師会が、テレビ会議システムを使って参加した。
当日は、石川広己常任理事による防災訓練開始宣言の後、横倉義武会長があいさつし、「首都圏である南関東では、200年から400年周期とされる関東大震災タイプの地震の合間に、マグニチュード7クラスの地震が数回発生している。首都圏で大震災が起これば、日本の国家機能、経済・社会は麻痺(まひ)同然となり、建物倒壊や火災による負傷者・患者が多数発生し、また、長期にわたって、非常に多くの方々が避難生活を強いられることが想定されている」と指摘。日医の使命は、都道府県医師会、日医会員、関係者との協力の下、大規模災害発生直後から活動を開始し、被災地の地域医療が復興するまでさまざまな形で支援を続けることにあるとして、「本日の訓練を通して多くのことを学び、近い将来、必ず起こるであろう大震災に備えたい」と述べた。
続いて、金井忠男埼玉県医師会長、尾﨑治夫東京都医師会長、古谷正博神奈川県医師会長及び李笑求千葉県医師会理事からあいさつが行われた。
その後、災害発生時から7日目までの対応等について、具体的な被害想定を踏まえたシナリオに沿って出席者らがやり取りしながら模擬訓練を開始した。
訓練は、マグニチュード7クラスの地震が首都直下で発生した直後、日医役職員の安否確認をするとともに災害対策本部を設置し、被災県医師会とチャットアプリや「ワイドスターⅡ」で連絡を取って被害状況を確認。「きずな」を用いて各都道府県医師会と対応を協議し、まず、兵庫県医師会を中心としたJMAT先遣隊を派遣、先遣隊のコーディネートの下、JMATを全ブロックから順次派遣していくという流れで進められた。
「きずな」のアンテナ等を設置した4県医師会からは、松本眞彦埼玉県医師会常任理事、猪口正孝東京都医師会副会長・伊藤雅史同理事、亀谷雄一郎神奈川県医師会理事、李千葉県医師会理事が各地の被害や対策等の状況を説明。更に、千葉県の船橋市医師会に置かれたNICTの中継車より、梶原崇弘船橋市医師会理事が状況を報告した。
また、池田正株式会社NTTドコモサービス運営部災害対策室長が「NTTドコモの災害への備え」について、内藤一郎JAXA衛星利用運用センター長が「超高速インターネット衛星『きずな』」について、それぞれ概要を説明した。
なお、訓練においては、船橋市医師会の中継車車載カメラから非常に高精細な画像が届けられる一方、きずなの通信に不具合が生じてテレビ会議が一時中断されるなど、課題も残された。
最後にあいさつした中川俊男副会長は、「日医は2年前に災害対策基本法上の指定公共機関となり、昨年には横倉会長が被災者健康支援連絡協議会代表の立場で中央防災会議の委員に就任している。過去の歴史に学べば、マグニチュード7クラスの首都直下地震は必ず起こると考えなければならない。日医の対策にはまだ課題も多いが、本日の訓練を基に検討していきたい」として協力を求め、訓練は終了となった。