勤務医のページ
勤務医委員会(委員長:泉良平富山県医師会副会長)は、会長諮問「地域医師会を中心とした勤務医の参画と活躍の場の整備―その推進のために日本医師会が担う役割―」に対する答申を取りまとめ、4月22日、横倉義武会長に提出した。
今号では、答申の概要を紹介する。
Ⅰ 勤務医委員会活動について
勤務医の多様な声をこれまで以上に日医の会務に反映することが会長諮問への答申につながるとの考えから、主に勤務医の意見等を集約するフレームワークの構築について審議を深めた。
審議に当たっては、広く勤務医が参集する場において理解と協力を得るために、全国医師会勤務医部会連絡協議会及び都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会と連動して活動を行った。
具体的には、全国医師会勤務医部会連絡協議会における「勤務医委員会報告」で、フレームワークに対する理解と協力を呼び掛けた他、平成27年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会では、各ブロック医師会推薦の勤務医委員会委員より、各ブロック医師会及び所属の都道府県医師会の現状報告を行った。
平成28年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会では、フレームワークの先行事例として、中部医師会連合の取り組みを紹介した。
また、ワーキンググループにおいて、委員会での議論を整理・深化した上で、その検討内容をフィードバックし、委員会の一層の審議充実を図った。
Ⅱ 提言
1.短期的な取り組み
(1)勤務医の意見集約のためのフレームワーク構築とブロックの体制作り
目的:勤務医活動の活性化を図るために、勤務医の意見を集約し、これを日医会務に反映させるフレームワークを作る。
方法:郡市区等医師会・都道府県医師会で勤務医の意見を集約し、これをブロック別に集約する。更に(当初は)日医勤務医委員会に意見を集約し、日医勤務医枠理事が執行部へ具申するフレームワークを構築する。
短期的にはモデルとなるブロックを3~4カ所設定し、日医勤務医委員会が支援する。中期的には全てのブロックでのフレームワークの構築を目指す。
(2)勤務医委員会の構成
目的:議論中心の勤務医委員会から具体的成果に貢献する委員会体制へのバージョンアップ。
方法:①ブロック及び勤務医の多い都市圏から委員を選出する。また、勤務医に関わる問題で活躍する医師・女性医師を選出する。
②実効性の高い対応を行うために小委員会を設置する。また、ワーキンググループが委員会活動を補助する。
③ICTやテレビ会議システムを活用する。
(3)都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会のあり方
目的:勤務医に関わる課題や組織率の向上等、現状に対応できる充実した会議とする。
方法:会議時間を3~4時間程度に延長する。また、勤務医が出席することを追求する。
具体的には、勤務医に係るさまざまな課題について報告や意見交換を行うと同時に、組織強化としての研修医・中堅医師対策やブロックごとの懇談なども可能となるよう分科会の開催などを行う。
(4)日本医療機能評価機構への申し入れ
目的:勤務環境改善が進んでおらず、医療安全の点からも勤務医の不満がある。日医はこの課題でイニシアチブを発揮して、存在意義を示す。
方法:「勤務医の健康支援に関する検討委員会」と共に、同委員会が作成した「勤務医の労務管理に関する分析・改善ツール」を医療機関の機能評価に組み入れることを、日本医療機能評価機構に要望する。
(5)研修医に対する勤務医委員会の取り組みの強化
目的:研修医の医師会費無料化によって入会増が期待されるが、研修修了後に多くの研修医会員が医師会を退会する懸念がある。これを防ぐ対策を早急に作る。
方法:日医勤務医委員会臨床研修医部会を、組織強化の視点から勤務医委員会が援助する。
具体的には、①同部会委員を勤務医委員会が中心となって推薦する②担当する勤務医委員会委員が同部会に参加する③同部会は、全国医師会勤務医部会連絡協議会などにおいて報告された研修医活動の先進例などを地域医師会へ発信する④研修医の労働や安全を含む診療環境や専門医制度に関する議論を深め、研修医に発信する⑤これらの活動を通して、同部会が医師会活動の意義を検証し、全国の研修医に発信する。また、日医が発行する『ドクタラーゼ』等を活用する。
(6)日医ニュースを用いた広報活動の活性化
目的:日医が提案し実現した制度や現在進めている活動が日医会員に十分に知られていない実情があるため、これを克服する。
方法:勤務医活動の活性化と医師会入会促進に資することを主目的とした編集方針とする。
具体的には、①勤務医委員会の活動や目指す方向性を医師会員に発信すると同時に、勤務医に関する各委員会の情報発信のツールとする②各地の先進例や特徴的な活動を紹介する③勤務医にとって重要な問題に関する発信を行う。
中期的には、地域医師会にメールによる全医師会員への情報提供を要請し、日医から全会員への一斉メールも可能とする。
2.中期的な取り組み
(1)ブロック代表者会議の創設
ブロック強化を進めるために、ブロック代表者会議を開催する。
具体的提案として、全国医師会勤務医部会連絡協議会の翌日(日曜日)の午前に同会議を行う。
(2)日医の他の委員会の活動内容の検証と協力関係の強化
目的:日医に設置された約50の委員会が有機的につながりを持ち、効果を上げることを促進する。また、勤務医活動の活性化を図る。
方法:勤務医に関係する委員会と勤務医委員会との協力関係を強化する。
具体的にはオブザーバーの派遣や各委員会間の相互報告による意見交換を積極的に行う。また、各委員会への勤務医の参加状況を把握し、勤務医の日医活動への参加を目的意識的に追求する。
3.長期的な取り組み
(1)医師会役員に占める勤務医比率の向上
現在、日医会員に占める勤務医の割合は約半数であるが、勤務医の日医代議員に占める割合は10%程度である。日医として医師会のために積極的に活動する勤務医を育成すると同時に、地域医師会で勤務医の登用を積極的に進める必要がある。
(2)医師会の三層構造
医師会はそれぞれの時代に応じた組織に改革され進化する必要があり、そのあり方を継続的に議論し、必要な改革が行える体制が求められている。意見集約のためのフレームワークが構築されることによって、三層構造の医師会活動が有機的に結ばれると期待される。
4.医師会での勤務医活動活性化における勤務医委員会の役割
勤務医委員会は、勤務医の視点から日医の組織改革への提言を行う組織であるべきで、医療に関わる問題について勤務医の視点から検証し、プロフェッショナルオートノミーに基づき日医強化のための活動を活性化することが必要となる。
勤務医の医師会への参加を求めるには、勤務医のモチベーションが上がるような職責を医師会内で負わせるべきであり、勤務医が医師会に加わる時間的な余裕を持てることが必要である。日医は地域医師会に対して勤務医を医師会役員に登用することを提案することが必要となる。
既に、医師会組織強化検討委員会や日医の関係役職員で構成された医師会組織強化ワーキンググループにおいて、医師会組織の強化についてさまざまな提案がなされているが、地域医師会内での勤務医の参画がなされるためには、具体的方策が実行されることが必要であり、そのためには勤務医委員会は実行する委員会に変わることが必要となる。
なぜ、勤務医自らが社会のために行動しないのか、行動の時間や資源を病院管理者になぜ要求しないのか、この部分に日医はどう関わることができるのか。このことも、勤務医委員会が取り組む課題である。地域医師会での勤務医の活動を活性化するために、この実現に向けた要望も含め、答申とする。
なお、答申の全文については、日医ホームページ(/dl-med/kinmu/kinmu26.pdf)をご覧頂きたい。