第6回ワークショップ「会員の倫理・資質向上をめざして―都道府県医師会の取り組みおよびケーススタディから学ぶ医の倫理―」が5月27日、日医会館小講堂で開催された。
小森貴常任理事の司会で開会。冒頭あいさつで横倉義武会長(中川俊男副会長代読)は、『医師の職業倫理指針』に関して、今期の「会員の倫理・資質向上委員会」(委員長:森岡恭彦日赤医療センター名誉院長、日医参与)において、8年振りに見直し作業を行い、日医のホームページを通じてパブリックコメントを募集、寄せられた意見を踏まえて6月答申に向け、現在、最終作業中であることを報告。「夏以降には、第3版となる新たな指針を全会員に配布して、更なる会員の倫理向上に努めていきたい」との考えを示した。
続いて議事に移り、今村定臣常任理事が、「医療事故調査制度」について、まず、医療事故調査・支援センターの5月10日公表情報等、開始から半年となる同制度の状況を報告した他、都道府県における支援団体の連携体制では、"顔の見える関係"の構築が重要であると指摘。
また、同制度と医師法21条の見直しに関しては、自民党医療事故調査制度見直しワーキングチームで、運用面での見直し事項として5項目が合意されたこと等を紹介した。
更に、全ての関係者が共有しておくべき本制度の基本理念は、患者・家族との信頼関係の構築であるとして、医療界、医師会の真摯(しんし)な姿勢と一丸となった取り組みを呼び掛けた。
森久保雅道同委員(東京都医師会理事)は、「医療事故調査制度と東京都医師会の支援概略」として、同医師会の院内調査支援相談窓口で行っている①よろず相談②解剖斡旋(あっせん)③Ai紹介④院内調査支援―等の活動を紹介。
院内調査委員会の審議には、事故全体を瞬時に概観できる資料が必要だとして、事前準備の重要性を強調した他、同医師会が支援した医療機関数が5月16日現在15件であるなどの状況を報告した。
橳島次郎同委員(東京財団研究員)は、「医療を受ける側から見た問題点」として、同制度は、医療の安全安心を確保するための大事な第一歩であり、次は第二歩として、患者家族のためにもなるような制度に育てて欲しいと要望。
そのために、①患者家族が支援センターに相談・依頼できるような形で、調査を求められる回路を設ける②将来的には、死亡のみでなく永続的・重大な後遺症が残る有害事象も加える―ことを提案した。
二つの事例について活発に討議
引き続き、樋口範雄同副委員長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)から、「討論の課題と進め方」についての説明が行われた後、①高齢者の終末期医療(心臓発作の既往のある84歳男性が再度緊急事態になった場合の対応及び終末期医療に関する医師主導での患者家族との話し合いに診療報酬が認められたアメリカの政策に対する賛否)②警察への情報提供(35歳男性患者のストーカー行為による、警察からの患者病歴等の情報提供要請への対応)―の二つの設例について、参加者が七つのグループに分かれて討議を行うワークショップ形式によるケーススタディが行われ、全体討議では、グループによる議論の内容が発表された。
事例①では、日本には"死"を忌避する文化的背景があるが、医師を中心にして、終末期医療に向かい合っていく仕組み、倫理的なモデルをつくっていくことが超高齢社会における喫緊の課題であるとの認識が共有された他、アメリカ型の制度については、そのまま実施するのは難しいとの意見が出された。
事例②では、犯罪歴の有無にもよるが、患者個人情報と守秘義務の関係もあり、警察と日医とでルールづくりを望む声も出された。
最後に、森岡同委員長が、近年医師数は増加しているが医師の処分は減っていることを示し、「地道に努力していきたい」と総括し、ワークショップは終了となった。