平成28年(2016年)6月5日(日) / 各地の医師会から / 日医ニュース
山岳医療に関する医師養成事業・山岳JMAT(山岳医療救護チーム)の発足について―岐阜県医師会―
都道府県医師会だより
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平成26年9月、多くの尊い人命が奪われ、また負傷者が出た御嶽山の噴火災害は、山岳地帯における救護活動の困難さを改めて感じさせるものであった。
日本の国土は約7割が山間部であり、岐阜県は面積の約8割を山岳森林地帯が占めている。中でも北部の飛騨地方は日本アルプスの3000メートル級の山々が連なり、更に、白山、焼岳、アカンダナ山、乗鞍岳、御嶽山の5火山を有していることから、噴火災害の他、地滑り、雪崩、崖崩れ、土石流、落石、有毒ガス、道迷いなどを要因とした多数の傷病者が発生する事故が危惧されている。
また、近年、中高年層を中心として登山や野外スポーツを楽しむ世代が増え、山岳事故件数は増加傾向にある。しかし、登山中の低体温症、脱水症、転倒転落による負傷等、山岳地特有の医療知識や情報は不足し、応急手当の遅れから傷病程度にも大きな影響を与えている。
山岳における事故が発生した際、医師には急性期医療、トリアージの他、被災者家族のサポート、遺体検案等、幅広い役割が求められ、その使命は重大である。
以上のような背景を踏まえ、岐阜県医師会では、山岳医療、救急医療、登山家等の専門家を講師とした研修会や実技訓練を通して、一人でも多くの方の身体的心理的被害が軽減できるよう、心肺停止を含めた山岳医療を担える医師の養成及び山岳事故防止の啓発を目的として、「山岳医療に関する医師養成事業」を開始した。
2月27日(土)に岐阜県医師会館で開催した「山岳医療に関する医師養成事業・山岳JMAT(山岳医療救護チーム)発足式」では、小林博岐阜県医師会長のあいさつ、堀部廉岐阜県医師会常務理事の事業説明後に、山岳JMAT隊旗が大橋宏重隊長(朝日大学歯学部附属村上記念病院長)に授与された。石井正三日本医師会常任理事、石原佳洋岐阜県健康福祉部長の来賓祝辞では、課題をいち早く取り上げたことへの感謝と本事業の意義が強調された。
発足式後は、医師の他、警察、自衛隊、消防等から約140名の参加を得て、「第1回山岳医療に関する医師養成研修会」を開催し、御嶽山が噴火した際、現場で救護活動に携わった医師や警察官の講演が行われた。会場からは情報収集の重要性等が提言される等、山岳医療に取り組む強い意気込みが感じられる船出となった。
なお、本事業を進めるに当たり、「山岳医療に関する医師養成協議会設置要綱」を定め、2月11日(木・祝)に岐阜県医師会館で開催した「第1回山岳医療に関する医師養成協議会・役員会議」において、次の事業を進めていくことを確認した。
1 山岳医療に関する研修会の開催
2 山岳事故防止及び山岳地特有の傷病についての啓発
3 山岳JMAT(山岳医療救護チーム)集結場所、医療救護本部及び応急救護所設置場所等の調査
4 山岳事故で使用する資機材の整備、取り扱い訓練の実施
5 山岳地での総合訓練の実施