私には、子どもが4人いる。第1子の時は男の子でも女の子でも元気な子が欲しいと思っていたら、元気な男の子だった。第2子の時にはかわいい女の子が欲しいと思っていたら、かわいい女の子だった。第3子の時にはいつまでもかわいい子が欲しいと思っていたら、ダウンちゃんだった。いつまでもかわいいって、こういうこと? 産んだあとに妙に納得してしまった。ちなみに、第4子はしっかりした女の子が欲しいと思っていたら本当にしっかりした女の子だった。
次男のダウンちゃんはとにかく優しい子である。妹が生まれる前は甘えん坊で、5歳でもよく抱っこをしていた。ところが、妹が生まれた途端にお兄さんになり、妹が泣くと自分の胸を出しておっぱいをあげようとしていたがおっぱいが出るはずもなく、ますます大泣きする赤ちゃんを前にオロオロしていた。それを見ていた長女が思わず、「かず君かわいそう。どんなに頑張ってもおっぱい出せないもんね」と言ったくらいだった。次男は、今でも妹の言うことなら何でも聞く。ダウンちゃんにも反抗期があったが、反抗期の間も妹だけは別扱いだった。
ダウンちゃんの反抗期、次男の場合には『しゃべらない』だった。とにかく喋らず、こちらが何を聞いてもお返事はジェスチャーかマカトンサインだけだった。それでも、妹だけには声を出して返事をしていたという微笑ましい反抗期だった。< /p>
次男は、妹だけに優しい訳ではない。祖父母にも優しい。次男が中学生になった頃から祖父母の足腰が弱くなってきた。一緒に出かける時は必ず祖父母の横について同じペースでゆっくり歩いていた。誰かに言われた訳でもない。自然と出る優しさを持っているのである。
ダウンちゃんの優しさを知っているのは人間だけではない。わが家のトイプードルは、人間のお食事中は必ず次男のお膝の上にいる。次男の優しいタッチが大好きなようである。
ダウンちゃんには生まれながらに持っている優しさがあるのと同時に、周りの方に優しくして頂くことによって更に優しさを学んでいるように感じる。
これまで次男がお世話になった方々は、本当に優しい方ばかりであった。感謝の気持ちでいっぱいである。
優しい次男には癒しの力もある。長男も国試の前に次男に癒してもらっていた。
もしも、障害を持つお子さんのいらっしゃる女医さんがこの原稿を読んで、少しでも元気になられたら嬉しい。
また、ダウンちゃんを診察してくださる先生方にはお願いがある。ダウンちゃんは自分ではあまり喋らないので、こちらの言っていることが分からないと思われがちだが、本当はよく分かっているのである。ただ、一つひとつゆっくり丁寧に説明しないと分からない。恐らく私たちがアフリカに行って、いきなりスワヒリ語でベラベラ話しかけられても分からないのと同じだと思う。ゆっくり分かりやすく説明して頂ければある程度は理解できるのである。また、とても我慢強く、我慢強過ぎて病気の発見が遅れることもある。どこか痛くても、じっと耐えてしまうのである。ちょっとしたしぐさから痛みを読み取って頂けたらと思う。
お時間とお手数をお掛けするが、よろしくお願いしたい。 (一部省略)
神奈川県 藤沢市医師会報 第472号より