日本医師会の取り組み
受動喫煙の防止
国民の健康を守る専門家集団の立場から
日本医師会は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、例外規定のない受動喫煙防止対策の強化・実現を目指した取り組みを行っています。今回は、羽鳥裕常任理事に受動喫煙の防止についてインタビューを行いました。
日本医師会の禁煙推進活動
――なぜ、日本医師会が受動喫煙の防止についての取り組みを行っているのでしょうか。
羽鳥裕常任理事(以下、羽):私たちは国民の健康を守る専門家集団として、例外規定のない受動喫煙の防止対策を強化・実現するための取り組みを行っています。
たばこの煙には、喫煙者が吸う主流煙・喫煙者が吐き出す呼出煙・たばこの燃焼時に出る副流煙があります。副流煙は主流煙より低温で発生するため、有害物質がより多く含まれています。望まずに呼出煙・副流煙を吸ってしまうのが受動喫煙です。受動喫煙をしてしまいやすい場所として、飲食店が挙げられます。飲食店は、様々な年代や健康状態の人が集まりますが、妊婦や未成年のアルバイトなど、特にたばこの煙への配慮が必要な人たちも含まれています。能動喫煙をしていても長生きされる方はいますし、喫煙の権利や自由という見方もあります。しかし、喫煙が個人の自由に委ねられるものであることと、望んでいないのにたばこの害を受ける人に配慮しなければならないことは別の話です。日本医師会は、そうした次世代を担う方々の健康を守りたいという思いから、受動喫煙の防止に向けた取り組みを行っているのです。
――受動喫煙の防止のために、どのような取り組みを行っているのでしょうか。
羽:国の施策決定に国民の意思を反映するため、ロビー活動や署名運動を通して、喫煙に対して厳しく対峙してきました。2017年に行った署名運動では、約264万人分の署名を集めました。先ほどお話しした飲食店での喫煙についても、分煙ではなく、全面的に禁煙とするように強く働きかけています。将来的には、飲食店だけでなく医療機関はもちろんのこと、公共機関など、より多様な環境においても、禁煙が達成されることが望ましいでしょう。禁煙については様々な意見もありますが、未来を生きる世代の健康をまず守ることが、ひいては国民全体の健康を守ることにつながっていると私たちは考えています。
――最後に、医学生に向けてのメッセージをお願いします。
羽:皆さんは、これまでの学校生活で禁煙教育を受けてきたと思います。かつてに比べると、医師たちの間にも、禁煙の意識が根付いてきたと感じます。たばこの害と深い関わりのある、日本循環器学会や日本呼吸器学会など、学会をあげて禁煙を推進している領域もあります。医学生の皆さんには、まずはたばこの体への害について学んでいただきたい。そこを始点として、生活習慣病やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)・喘息・さらにはがんまで、広く疾患について学ぶことにもつながります。
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