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令和8年(2026年)3月20日(金) / 日医ニュース

警察活動協力医の整備・拡充を目指して

警察活動協力医の整備・拡充を目指して

警察活動協力医の整備・拡充を目指して

 令和7年度都道府県医師会「警察活動協力医会」連絡協議会・学術大会が2月21日、日本医師会館とWEB会議のハイブリッド形式で開催された。
 連絡協議会は、細川秀一常任理事の司会で開会。冒頭、ビデオメッセージであいさつした松本吉郎会長は、日頃から検視・死体調査の立ち合いや検案業務に尽力している警察医と警察協力医に謝意を示した。
 また、日本における年間の死亡者数は直近の統計で160万人を超えていることに触れ、「多死社会が急速に進行していることは明らかだ」と説明。「これに伴い、警察が取り扱うご遺体の数も既に20万体を超え、日常的な検視・検案に限らず、大規模災害における活動に至るまで、警察医の仕事はますます社会から求められる重要なものとなっている」と指摘した。
 その上で、日本医師会は警察医の活動について、死因究明を通じて地域住民の暮らしと社会を支える極めて公益性の高い取り組みとして捉え、地域を面で支える「かかりつけ医機能」の重要な一部と位置付けている点も強調した。
 続いて、あいさつに立った茂松茂人副会長は、警察医を担う若手医師が少ないといった課題などにも触れた上で、「南海トラフ地震などの大規模災害に向けて、しっかりと検案体制を整えていくことが喫緊の課題である」と指摘。日本医師会としても、しっかりと対応できるように議論を重ねていく姿勢を強調した。

報告

 報告では、青木穂高厚生労働省医政局医事課死因究明等企画調査室長が死因究明等に関する施策の推進状況などを説明。日本医師会と連携して、(1)死体検案講習会事業、(2)死体検案相談事業、(3)死亡時画像診断読影技術等向上研修―などに取り組んでいることに言及した。
 その上で、(1)に関連して、地域での検案医の確保に向け、今年度から死体検案研修会(上級)の修了者名簿を都道府県医師会に提供し、受講者同意の下、地域の実務機関(県警等)との間で照会・紹介ができる仕組み(以下、照会・紹介スキーム)を構築したとし、照会・紹介スキームの活用状況や課題の共有を求めた。
 また、死因究明等の推進に向けた体制整備のための補助金として、①異状死死因究明支援事業②死亡時画像診断システム等整備事業―などを用意しているとした上で、「活用に当たっては都道府県に相談頂きたい」と促した。
 また、①については、令和8年度から新たに「遺体搬送」「感染防護等消耗品の整備」「大規模災害時等の死体検案に係る資器材等の整備」をメニュー化したことにも触れ、地域における死因究明等の体制整備への活用を呼び掛けた。
 その他、令和9年度以降の「死因究明等推進計画」の見直しの議論が来年度から始まることにも触れ、見直しに向けた課題意識として、①地域の検案医の確保②法医等の解剖等を行う人材の確保③公衆衛生的観点からの死因究明の推進④死因究明情報の利活用の推進⑤各県の地方協議会の運営の活性化―等を挙げた。
 阿部大輔警察庁刑事局捜査第一課検視指導室長は、警察の死体取扱業務などに言及。検視等立会医師数は全国的には微増傾向にあり、立会医師数に占める60代以上の割合は微減傾向にある一方で、都道府県別に見ると、60代以上の割合が7~8割強の県もある点を指摘。「中長期的な観点から、日本医師会などの関係機関と連携し、立会医師を安定的に確保する方策が必要」との見方を示すとともに、既述の照会・紹介スキームを活用することで、昨年8月以降、全国で新たに立会医師4名(昨年末時点)を確保できたことも紹介した。
 細川常任理事は、東日本大震災や能登半島地震時の検視・検案活動を振り返った上で、「今後想定される大災害が実際に起きた場合、法医学教室だけでは対応し切れず、日本医師会の他、普段から検案を行っている先生方の協力無しには、県を越えた検案体制を構築することは不可能である」と訴えた。
 更に、JMAT(日本医師会災害医療チーム)についても、検視・検案を積極的に行う必要性を指摘した。
 愛知県医師会で以前に実施した災害時検案斑の登録に関するアンケート調査の結果も紹介した上で、「今後、災害時に必ず都道府県ごとに検案斑を持って頂かないと、広範囲にわたる災害が起きた場合に全く対応できない状況になってしまう」との懸念を表明。対策を前に進めるためにも、まずは、災害時の検案に協力できるかどうかについて、中小病院の若手医師も含めたアンケート調査を各都道府県で実施することも求めた。
 この他、遺体の保管や円滑な検案実施といった大規模災害時の体制構築のあり方について、各都道府県警察、各都道府県医師会が協議していく重要性にも触れ、「その連携構築に向けて日本医師会もしっかりと協力していく」との姿勢を強調した。

都道府県医師会からの提出議題、質問・意見及び要望

 各都道府県医師会からの提出議題ではまず、福島県医師会が「岐阜県死体検案マニュアル」を参考に「福島県医師会死体検案マニュアル」を、また、大阪府警察医会が二次元コードを読み込むと死体検案マニュアルをダウンロードできる専用カードなどを、それぞれ作成したことを報告した。
 この他、議題として、①留置場で提供される食事に関する問題(千葉県医師会)②平成23年~令和6年死因(病死)の経年的推移(岡山県医師会)③警察協力医の活動に伴うリスクへの公的補償及び全国一律の保護対策の確立(鹿児島県医師会)④台湾有事における検案業務(沖縄県医師会)―が提出され、それぞれ活発な議論が行われた。

学術大会

 続いて、学術大会では、林敬人鹿児島大学大学院医歯学総合研究科/社会・行動医学講座法医学分野教授が、「浴室内突然死(入浴死)の疫学的解析から得られた予防法の開発と効果~鹿児島発 入浴時警戒情報」と題して基調講演を行った。
 林教授は鹿児島県における入浴死の疫学的特徴として、①圧倒的に高齢者が多い(90%が65歳以上)②寒い時期に多い(約半数が冬季)③ほとんど自宅で発生(85・2%)している④9割が浴槽内で発見されている⑤通常の入浴時間帯に多い(16~20時に集中)⑥68・6%が飲酒していなかった―などが挙げられるとし、「入浴死は寒い時期に高齢者の日常生活の中で突然起こっている」と指摘した。
 入浴死の死因は、「心臓死(45・8%)」「溺死(できし)(31・8%)」「中枢神経系(12・6%)」「その他(9・8%)」となっていることにも触れ、「入浴時に起こる血圧変動、水圧による圧負荷、温度変化が、不整脈や心発作、脳虚血といった、いわゆるヒートショックを誘発することでそのまま死亡しているか、意識を消失し溺死しているかが考えられる」と説明した。
 更に、環境気温(最高気温、最低気温、平均気温、一日の気温差)と入浴死発生頻度の関係をみると、「気温が低い、気温差が大きいほど発生頻度が高い」傾向がある点などにも言及した上で、「逆に言うと、そのような傾向の日には入浴自体を控えることが最大の予防になる」とのコンセプトを基に、入浴時警戒情報を開発したとした。
 入浴時警戒情報では、独自に設定した「警戒温度」と、鹿児島県内19カ所における「最高気温」「最低気温」「一日の気温差」を照らし合わせ、①最高気温が警戒温度よりも低くなる日②最低気温が警戒温度よりも低くなる日③一日の気温差が警戒温度よりも高くなる日―という三指標を設定。三つの指標を全て満たす場合は「紫信号(危険)」、二つの場合は「赤信号(警戒)」、一つ以下の場合は「黄信号(注意)」に分類し、入浴死が発生しやすい11~2月に毎日、大学のホームページや地元テレビ・新聞、LINEアプリを通じて、警戒情報として発令していることを紹介した。
 その後は、一般公募で選ばれた①髄液採取とその判定②警察活動協力医のいろは 興味のある先生方へ③死後内視鏡(PME:Post Mortem Endoscopy)―の3題の講演が行われ、大会は終了となった。
 参加者は現地とWEB合計で連絡協議会は96名、学術大会は139名であった。

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