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令和7年(2025年)11月5日(水) / 南から北から / 日医ニュース

スポーツの先生はインターネット

 私は生まれつきどんくさい人間で、体育の成績も数度まぐれで3を取った以外はほとんど1か2を行ったり来たりしていた。幼少期は父の影響で野球の少年団に入っていたが、結局上達しないまま。更に中学校でも、運動部以外に選択肢が無い状況では、新たなスポーツも考えられず、消去法で野球部を選ぶも当然のように万年補欠だった。
 そんな私ではあるが、体を動かすこと自体は嫌いでなく、誘われるままにさまざまなスポーツに手を出すが、教えてもらっても全くその感覚が分からない。「ここで『グッ』と力を入れて」と言われても、どこにどう力を入れるか理解できず、あきれられること多数。結局何も上達せず月日が過ぎるのみであった。
 月日が経ち、数年前に子どもを連れ久々にスキーを再開した。福島に来た16年前は頻繁に行っていたが、何年もご無沙汰で、不安ではあったが何とか滑ることができた。せっかくなので上達したいと思って教則本を買ったが、やはり感覚的なことが全く理解できない。
 そんな時、YouTubeを見たら、上手な滑り方がいろいろ紹介されている。「こんな感じで滑れたら良いなー」と思っていたら、あるではないか。まさに私が疑問に思っていた感覚的なことを、きっちり動画と言語で教えてくれるチャンネルが! それからしばらくは、スキーに行く日を決めたら、前日はむさぼるように見て、当日は動画を思い出しながら自主練。もっと元気な時に何年掛かってもマスターできなかった感覚をつかむことができた(気がする)。
 考えてみれば、ネットでの発信は参入障壁が低いので、裾野が広い。かつ競合相手が多いので、どの配信者も思考を重ねており、結果ターゲット層も幅広く、充実した中身となっているのでは。これはとてもありがたい。生身の指導者だと、全然理解できないと理不尽に「もっと本気で(最初から本気だ!)」や「なぜ理解できない?(それを知りたいから習ってるんだ!)」と言われるし、代わりの指導者も簡単には見つからないが、ネットだと合わないと思ったら、すぐに次が見つかる。
 そして、最近は何の気の迷いか、ランニングを始めた。さまざまなWEBページ、動画を見ると、ペース配分の方法、走るフォーム、本当に細かい解説だ。更には、今のペース、目標とするペースなど、スピードごとにも細かくアドバイスが分けられている。時間がある時に動画を見て、走り続けるうちに走る距離も伸び、ペースも最初は1キロメートル7分で3キロメートルも走れなかったのが、スピードも上がり、距離も伸びている。
 スポーツは良い指導者に出会うことが大切、とも言うが、私にとって一番の指導者はインターネットで間違いない。健康増進のため、これからも夜な夜なお酒を飲みながら、新たな先生探しを続けよう。

福島県 福島県医師会報 第87巻第8号より

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