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令和7年(2025年)8月5日(火) / 日医ニュース

釜萢副会長が「現下の感染症の動向」、松岡常任理事が「産業保健の現状と今後の展望」について講演

釜萢副会長が「現下の感染症の動向」、松岡常任理事が「産業保健の現状と今後の展望」について講演

釜萢副会長が「現下の感染症の動向」、松岡常任理事が「産業保健の現状と今後の展望」について講演

 令和7年度第2回産業医Web研修会が7月2日に日本医師会館で開催され、釜萢敏副会長が「現下の感染症の動向」、松岡かおり常任理事が「産業保健の現状と今後の展望」について、それぞれ生配信により講演を行い、1700名を超える産業医が受講した。
 研修会は笹本洋一常任理事の司会で開会。釜萢副会長はまず、直近の「麻しん」「百日せき」の流行状況について、「二つの感染症共に幅広い年齢に流行が見られる」として注意を呼び掛けるとともに、「麻しん」については第2期のワクチン接種が減少傾向にあることを問題視し、ワクチン接種をすることで免疫力を高めることが大事になるとした。
 また、「百日せき」に関しては、「生後2カ月になったらワクチン接種を速やかに行って欲しい」と要望した。
 新型コロナウイルス感染症に関しては、コロナ禍における日本医師会の主な取り組みを振り返った上で、(1)パンデミック初期には感染対策の対応が難しく、個々の医療機関のコロナ診療への参加がなかなか進まなかった、(2)スペース(診察室・待合室)、リソース(感染対策備品の確保など)、マンパワー(医師・看護師の確保など)が限られた中で、診療を続けなければならなかった―等の課題が明らかになっているとし、「その解決のためにも平時から準備しておくことが大事になる」と述べた。
 新興感染症に対する診療所の対応力を高めるための日本医師会の取り組みに関しては「診療所における新興感染症対策研修検討委員会(プロジェクト)」を設置し、2024年3月には「第1回診療所における新興感染症対策研修」を行ったことを報告。今年10月には各地域で研修を企画する指導者の育成を目的として、「診療所を対象とした新興感染症対策リーダー研修」を開催予定であることを明らかにした。
 その上で、釜萢副会長は「新興感染症や再興感染症によるパンデミックは再び起こり得るものであり、次の世界的なパンデミックは呼吸器の感染症で起こると言われているが、診療所における新興感染症への対応力を向上させることが喫緊の課題である」と指摘。日本医師会が行う研修が全国の診療所の対応力の向上につながることに期待を寄せた。
 松岡常任理事は単位確認など、認定産業医に関わる作業で医師会会員情報システム(MAMIS)を利用する際の留意点などを説明した上で、近年では女性、高齢者、外国人の労働者が増加する中で、対処すべき課題も多様化し、産業医活動に係る社会的なニーズは年々高まっていると指摘。「認定産業医には知識と能力の維持向上を図りながら、誠実な産業医職務の遂行を目指すことが求められており、日本医師会としても全国医師会産業医部会連絡協議会を設置するなど、認定産業医が地域の実情に即した活動支援を享受できるよう、支援体制の充実・強化に努めている」とした。
 産業保健に関する最近の動向については、厚生労働省の検討会での議論にも触れながら、任意ではあるが一般健康診断問診票に女性特有の健康課題に関する質問が追加されることになったこと、50人未満の事業場でのストレスチェック制度や職場における熱中症対策が義務化されたことなどを紹介。熱中症に関しては、日本医師会のホームページに熱中症予防サイトを開設したことを報告し、その活用を求めた。
 産業医と事業場のマッチングに関しては、産業医経験のない産業医が意欲はあっても条件などが合わず、産業医としての活動ができていない、いわゆる「一社目の壁」について言及。会内の産業保健委員会ではその解決策として、「産業医資格を有していても、産業医経験のない認定産業医を対象にした実地研修の開催」「事業場との契約や報酬交渉等の事務作業等代行サポート」などを検討中であることを報告した。
 病院における産業保健活動に関しては、医師の精神障害の労災認定件数が近年増加しており、その対応が急務になっているとした。
 また、医療法に基づく面接指導については、①産業医の資格を所有する医師も、面接指導実施医師になるには講習会の受講が必要である②面接指導実施医師と産業医が連携して対応することが求められる―こと等を概説。「職場内の健康を守っていくためにも、医師間・職員間のコミュニケーションを取るようにするとともに、疲れている同僚を見掛けた際には声掛けをお願いしたい」と述べた。

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