松本吉郎会長は、5月28日の定例記者会見において、自民党、公明党、日本維新の会の3党による5月23日の協議の結果、新たな地域医療構想が始まる2027年度までに全国でおよそ11万床の病床を削減する方向で大筋の合意がなされ、病床削減により医療費を1兆円程度削減する効果が見込めるとの考え方を共有したという報道がなされたことを受けて、日本医師会の見解を説明した。
松本会長はまず、本報道に関して各党の担当者間で協議はされているものの、まだ最終的な合意には至っておらず、具体的な枠組みやスケジュールも決まっていないものとの認識を示すとともに、人口の変動、医療の需給や受診行動の変化に医療機能も対応していくための政策手段も大切になると指摘。また、「11万床削減」という数字が独り歩きすることにより、患者や医療現場に不安、混乱が起こることに懸念を示した。また、地域医療構想は将来の入院ニーズの変化を見据え、各病院や有床診療所がさまざまなデータ等に基づき、自院の地域で立ち位置を考え、地域の関係者間で協議し、病床機能の転換や収れんがなされていくというものであり、新たな地域医療構想においても基本的な考え方は変わらないとした。
更に、松本会長は仮に病床削減の3党合意が最終的に実行されるにしても、各医療機関において医療ニーズを踏まえた上で判断できる枠組みが必要であり、病床削減ありきではなく、地域で必要な入院医療が無くならないよう勘案することも求められると指摘。それらに加えて、病床機能の転換やダウンサイジング等、極めて重要な経営判断を下すための財政面での手当ても不可欠であるとし、更に、今年度に繰り越された令和6年度補正予算による病床数適正化支援事業の補助対象外となった医療機関への配慮も求めた。
その他、病床数適正化支援事業では、都道府県医師会などからも地域医療構想との整合性を問う意見があったとして、今回も仮に病床削減が実際に講じられる場合には、2年間で地域の実情、将来の医療需給などを考慮する必要性や地域医療構想及び地域での協議も重要であるとした。
その上で松本会長は、「病床の削減は、方法論を間違えると、地域住民、患者やそのご家族、そして医療現場で懸命に命や健康を守っている医療従事者、更には医療に関わる業種の皆さんに、大変な不安や混乱を与えかねない」と強調。今後詳細が詰められ、関係者の理解と納得が得られる政策となることに期待を寄せた。
問い合わせ先
日本医師会地域医療課 TEL:03-3946-2121(代)