令和7年(2025年)5月20日(火) / 日医ニュース
へき地医療の魅力や多様な働き方など若手医師の取り組みを紹介しつつ意見交換
令和7年度シンポジウム「未来ビジョン"若手医師の挑戦"」
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令和7年度シンポジウム「未来ビジョン"若手医師の挑戦"」が4月19日、日本医師会館小講堂で開催され、ZoomとYouTubeでLIVE配信された〔当日の動画(全6本)は公式YouTubeチャンネルに掲載〕。
全編
https://www.youtube.com/watch?v=l9HdO-zO7jg
本シンポジウムは、若手医師達の取り組みにスポットを当て、医療の未来ビジョンについて考えることを趣旨として開催されているもので、今回で3回目となる。
笹本洋一常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで松本吉郎会長は、「近年、医療を取り巻く環境は急速に変化しつつあり、課題も山積している。その解決に向けては、熱意をもった若手医師達のさまざまな取り組みがヒントとなり、次世代の医療を牽引していく」と力説。本シンポジウムが、参加している多くの研修医にとって先輩医師との交流の機会となる、医師会活動を知る機会ともなるよう期待を寄せた。
また、釜萢敏副会長はビデオメッセージで、「わが国の人口の構成は今後大きく変わり、またそれぞれの地域によって求められる医療の内容が異なってくる」と述べ、多方面にわたる取り組みが紹介される本シンポジウムの意義を強調した。
続いて、松井道宣京都府医師会長を座長として4題の講演と意見交換が行われた。
(1)都道府県医師会役員として活躍する若手医師の取り組み
「支えて下さる方々への感謝を学ぶ場としての医師会」
村上学(北海道医師会常任理事/北海道大学大学院医学研究院医学教育・国際交流推進センター准教授)
村上常任理事は、北海道医師会へ関わることとなった経緯について、前任の教授が退職したことに伴って大学医師会の会長より誘われ、所属長である学部長からも社会勉強として送り出されたことを説明。産業保健部長及び学術部副部長として医師会業務に携わる中で、若手開業医と若手専門委員会委員との懇談会なども行ったとし、「ネットワークづくりをできるのが医師会の魅力。今後も若い医師を支える活動に力を入れていきたい」とした。
医師会活動との両立については、本業の大学業務を優先せざるを得ないためシニアの医師会役員に頼る場面も多いとし、「頼ることを恐れず、その代わり若い人にしかできないことをたくさん返そう」とアドバイス。組織の管理・運営に関する年配者のノウハウを次世代に伝承していく重要性も訴えた。
(2)へき地で活躍する若手医師の取り組み
「地域全体をケアする仕事はやりがいがあり、子育て・生活もしやすいですよ」
佐藤優子(浜田市国保診療所連合体 波佐診療所長)
佐藤所長は、東京生まれ東京育ちでありながら、初期研修医時代の地域医療研修で山奥の国保診療所に行ったことがきっかけで、患者を家族丸ごと診るへき地医療に魅力を感じ、医師の夫と当時4歳と0歳だった子どもを連れて島根県浜田市にIターンしたことを紹介。市の中心部から遠い波佐・小国地区の500名強の地域住民を対象に外来や訪問診療を行い、休日夜間は「浜田市国保診療所連合体」で対応していると説明した。
住民や行政と膝を交えて地域の課題を話し合い、具体的な解決策を見い出せることがへき地の醍醐(だいご)味であるとして、自動車免許返納後の高齢者が閉じこもりがちになっていることを課題として挙げた際には、住民同士の無償ボランティアタクシーの仕組みが実現したことを報告。
また、医学生・看護学生の実習の受け入れだけでなく、中高生への出前授業も行い、地域医療の魅力を伝える一方で、豊かな自然環境の中で子育てができることなども強調した。
(3)二足の草鞋(わらじ)を履く若手医師の取り組み
「唯一無二!?脳外科医とデザイナー、二刀流の生き方」
折居麻綾(横浜フロント脳神経外科・泌尿器科院長/Drまあやデザイン研究所)
折居院長は脳神経外科専門医を取得した後、大学院での研究の行き詰まりや脳外科医のセカンドキャリアについて悩んでいる中で、以前から興味のあった服飾の勉強を始めることを思い立ち、ロンドンに留学した経緯を説明。
帰国後は脳外科医に復帰しつつ、スタイリストのアシスタントとして学び、2013年に「Drまあやデザイン研究所」を設立、本格的にファッションデザイナーを始めたとし、テレビで取り上げられたことを契機に知名度を高め、ニューヨークやパリのコレクションでファッションショーを行った様子を紹介した。
二刀流の生き方のメリットについては、医師の仕事で生まれたストレスをデザインの仕事でリセットし、その逆もあって心の切り替えがしやすい点を挙げた上で、「医師として働いている以上、患者さんを最優先にすることは絶対である」と強調。自身の活動に理解を示してくれる周囲の人々に感謝しつつ、生きていて良かったと思える人生を目指していくとした。
(4)先輩医師から若手医師へのエール
「KMA.com『これまで』と『これから』」
加藤則人(京都府医師会理事/京都府立医科大学北部キャンパス長)
加藤理事は、京都府医師会では「京都府全体で良医を育てる」を理念に掲げ、行政・臨床研修指定病院と連携して研修医の育成やサポートに取り組んでいることを説明。病院の枠を超えた横のつながりや、先輩医師との縦のネットワークづくりも目的に、①春に新研修医総合オリエンテーション②夏と冬に指導医による臨床研修屋根瓦塾KYOTO③秋に若手指導医自身の学び直しをプレゼンテーションする「Re-1グランプリ」―を開催していることを紹介した。
その上で、自分がやりたい医療を行うためには医療制度に現場の意見を反映させていく必要があるとし、その手段の一つとして医師会があることを強調。これからの医療を担う若い医師達とつながるツールとして立ち上げた「KMA.com」では、役に立つコンテンツや情報の発信、スキル・キャリアアップ支援などを行っており、専攻医となる3年目の異動後もつながり続けることが可能になったとした。
その後、4名のシンポジストが登壇して意見交換が行われ、実習を受け入れる際に心掛けていることや若手医師から進路相談を受けた際の対応など、フロアやZoomで参加していた都道府県医師会からの質問に回答した。