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令和7年(2025年)5月5日(月) / 日医ニュース

6名のシンポジストからの活動報告を踏まえ在宅医療の課題と可能性を展望

6名のシンポジストからの活動報告を踏まえ在宅医療の課題と可能性を展望

6名のシンポジストからの活動報告を踏まえ在宅医療の課題と可能性を展望

 第2回在宅医療シンポジウムが3月23日、日本医師会館大講堂とWEB配信のハイブリッド形式で、「2040年に向けた地域を面で支える在宅医療」をテーマとして開催された。
 シンポジウムは坂本泰三常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつに立った松本吉郎会長は、シンポジウムの登壇者等関係者に謝意を述べた上で、在宅医療は介護との連携なくして行うことはできず、介護や福祉関係者との連携・協力が不可欠との考えの下、今回のシンポジウムでは、第1部は地域を面で支える在宅医療、第2部は自身のライフワークの一つである「小児在宅医療」を初めてテーマとして取り上げ、医療的ケア児を支えるという観点で行うことにしたことなどを説明。シンポジウムが多職種の人々にとって実り多きものになることに期待を寄せた。
 続いて講演を行った中西浩之厚生労働省医政局地域医療計画課外来・在宅医療対策室長は、第8次医療計画における在宅医療の体制整備と2040年に向けた提供体制の構築に係る国の取り組み等について概説。
 2040年に向けては、(1)特に75歳以上の後期高齢者が増加していく、(2)それに伴い入院医療のニーズが増加する、(3)85歳前後で外来の患者数はピークを迎え、85歳以上の高齢者においては通院が困難になるにつれて在宅医療のニーズが増加する―等の見通しを示すとともに、在宅医療提供体制の構築に当たっては、医療機能の明確化や圏域設定が重要との認識を示した。

【第1部シンポジウム】

 新田國夫つくし会理事長を座長に、四つの講演が行われた。
 島田潔板橋区役所前診療所院長は「地域に根差した在支診〜高機動力で地域医療を補完する〜」と題して、在宅療養支援診療所として地域に根差した活動に取り組んでいることを紹介。また、高機動力を生かし、コロナ自宅療養者支援事業や東日本大震災の際には避難所へチームを派遣したこと、外来機能を中心とする診療所と在宅医療に関する連携を行っていることなどを報告した。
 また、今後については、地域の病院との相互連携がますます重要になっていくとの見通しを示すとともに、地域が面となり安全も確保しながら在宅医療を発展させていきたいとした。
 守上佳樹よしき往診クリニック院長は「地域医療連携推進法人Just2Ys League リフトオン!~われわれはジャスティスたりえるのか?~」と題して、自宅療養中の新型コロナウイルス患者に対して「KISA2隊」(きさつたい)として活動した経験を基に、在宅医療提供体制の構築に取り組んでいることを紹介。地域医療連携推進法人「Just2Ys League」(ジャスティスリーグ)を立ち上げ、既存の連携システムを使い、24時間365日提供可能な訪問診療体制を構築することで、面として在宅医療を推進すると同時に、災害時にはこの枠組みを使って連携することを検討しているとした。
 辻裕二福岡県医師会常任理事は「福岡県医師会における在宅医療への取り組み~特に医療計画、地域医療構想を見据えた取り組みを中心に~」と題して、在宅医療の施策に関する医師会としての取り組み等について報告した。
 同常任理事は、訪問診療患者数の推移が第7次医療計画の予想値を上回り、コロナ禍以降は更に伸びていることや、高齢者施設への訪問診療の増加見通しについて説明し、多くの訪問患者を抱える医療機関の看取り率の低下が高齢者救急を圧迫する原因の一つになっていると指摘。また、「令和4年の調査結果では在宅死亡者の約4割が検案・警察取り扱いとなっており、今後も在宅死亡者数が増える見通しであることから、検案例を減らすためにも在宅看取りの件数を増やす必要がある」として、これらの対応策を強化する意向を示した。
 また、医療的ケア児の在宅医療推進のために、NICUを有する医療機関と在宅療養の中間施設として「小児等地域療育支援病院」を設け、移行のための評価・トレーニングや急性増悪時の受け入れ体制を整えるとともに、保護者のレスパイトのための「在宅療養児一時受入支援事業」を実施していることなども紹介した。
 小出純子全国老人保健施設協会常務理事は「老健施設におけるショートステイの役割~医療ショートの活用について~」と題して、介護老人保健施設が提供できる「在宅支援」「在宅復帰」機能と、短期入所療養介護(医療ショート)の活用について説明。また、肺炎や尿路感染症、帯状疱疹等の医療ニーズのある患者の受け入れや、ADLの悪化に対応するリハビリテーション、認知症短期集中リハビリテーション、レスパイト入院等の老健施設が提供できる支援機能についても概説し、医療・介護の複合ニーズに対応するためには、在宅医療の中でかかりつけ医と協力していくことが必要になるとした。

【第2部シンポジウム】

250505d2.jpg 釜萢敏副会長を座長に、二つの講演が行われた。
 田村正徳埼玉医科大学総合医療センター小児科名誉教授・客員教授は「医療的ケア児と家族を取り巻く課題と解決に向けた動き」と題して、新生児医療技術の進歩に伴い、わが国の新生児死亡率が世界で一番低くなる一方、NICUに長期入院する新生児が増加傾向となり、NICUの病床不足が起きていることを報告。その解決策として、入院児の在宅移行を推進するため、埼玉医科大が中心となり支援に係る研究会を立ち上げた他、県医師会が中心となり、在宅療養支援診療所と小児科診療所がペアとなって対応する取り組みや、多職種や行政との連携を進めているとした。
 その他、在宅移行が進むにつれてケア児の通学などの学校問題への対応や災害時の対策も課題となっていることを紹介した。
 髙橋昭彦ひばりクリニック院長/うりずん理事長は「小児医療的ケア児を地域で支えるために~在宅医として、かかりつけ医としてできること~」と題して、2021年9月の「医療的ケア児支援法」施行以降、医療的ケア児が通園・通学可能な学校等が増えてきていることに言及。その一方で、利用できる社会的資源が少なく、家族の負担が非常に大きいことに加え、ケア児が学校を卒業する18歳を境に日中活動の場が減少してしまうことや、就労の場や医療的ケア者のグループホームがほとんどない等の問題が、医療的ケア児の成長に伴い顕在化してきていることを指摘した。
 その上で、髙橋院長は在宅医・かかりつけ医には、「予防接種や家族の診療、相談はもとより、地域のチームのハブとなって関係者との情報共有や連携を強化することに努め、面としてケア児の成長と移行期に対応していくことが求められる」と訴えるとともに、医療的ケア児と家族の今と今後を考えることが小児在宅医療の役割と考え、活動を続けていくとした。
 その後は釜萢副会長が総括を行い、シンポジウムは終了となった。

お知らせ
 第2回在宅医療シンポジウムの動画は下記の日本医師会公式YouTubeチャンネルをご覧下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=WhiLJ7XI5rU

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