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令和7年(2025年)3月20日(木) / 日医ニュース

地域医療に尽力する5名の大賞受賞者と14名の功労賞受賞者を顕彰

地域医療に尽力する5名の大賞受賞者と14名の功労賞受賞者を顕彰

地域医療に尽力する5名の大賞受賞者と14名の功労賞受賞者を顕彰

 第13回「日本医師会 赤ひげ大賞」(日本医師会・産経新聞社主催、都道府県医師会協力、太陽生命保険特別協賛)の表彰式を2月21日、都内で開催し、地域住民の健康の保持増進とまちづくりに尽力してきた5名の赤ひげ大賞受賞者と14名の赤ひげ功労賞受賞者の功績をたたえた。また、引き続き行われたレセプションには、秋篠宮皇嗣同妃両殿下がご臨席され、受賞者らとの懇談が行われた。

 本賞は、"現代の赤ひげ"とも言うべき、地域の医療現場で長年にわたり、健康を中心に住民の生活を支えている医師にスポットを当てて顕彰することを目的に、平成24年に創設したものである。
 第11回より、赤ひげ大賞の選考に地域医療を志す医学生の視点も反映させることとし、今回は選考委員として和歌山県立医科大学と琉球大学の医学生が参加した。

表彰式

 表彰式の冒頭、主催者あいさつに立った松本吉郎会長は、「大きな災害が頻発する日本において、地域の復興の要は、いつでも頼れる医療機関、そして安心して相談できる医師の存在である。平時においてはあまり意識されないが、日本全国どこにおいても、昼夜を分かたず対応して下さっている医師がいることで、地域が支えられている」と強調。
 その上で、19名の受賞者について、「いずれも、地道に、そして献身的に医療活動に従事してこられ、先生の顔を見るだけで元気が出るような、医療を超えた患者さんとの信頼関係の中で地域を守ってこられたことに敬意を表する」と述べ、日本医師会としても引き続き、これらの活動を支えることで、地域医療の充実に寄与していくとした。
 その後、選考委員でもある黒瀨巌常任理事が、選考の経過として、昨年5月1日付で日本医師会より都道府県医師会宛てに推薦依頼文書を発出し、「候補者推薦書」による事前審査を選考委員で行い、その結果を基に11月7日の選考会で受賞者を決定、本年1月8日に公表したことを報告。「受賞された先生方は長年にわたり、地域住民の健康確保のために親身に取り組んでこられた方々ばかりであり、選考には困難を伴ったが、最終的には本賞にふさわしい方々を選考できたと考えている」と述べ、本賞が各地域の医師の励みとなり、地域医療の更なる充実や後進の育成へとつながることを期待するとした。
 表彰では、5名の赤ひげ大賞受賞者の活躍をVTRでそれぞれ紹介した上で、主催者である松本会長が表彰状を、近藤哲司産経新聞社代表取締役社長がトロフィー並びに副賞を手渡し、各受賞者から謝辞が述べられた(内容については後掲の「大賞受賞者が喜びを語る」参照)。
 引き続き、赤ひげ功労賞の表彰に移り、14名の受賞者がスライドで紹介された後、代表して群馬県の高玉真光医師に松本会長から表彰状が授与された。

250320a2.jpg 来賓祝辞では、衆議院予算委員会から駆け付けた石破茂内閣総理大臣が、「国民皆保険制度ができた当初の医療は感染症が中心であったが、がんや生活習慣病など疾病へとその種類が変わり、"治す医療"から"治し支える医療"へと変わっている」として、地域に根付いて、長年にわたり住民の生活を支えてきた受賞者達に敬意を表した。
 更に、「赤ひげ先生方は人々の安心のための頼みの綱であり、よりどころ。先生がいてくれて良かったと、どれだけ大勢の人が思ったことか」と述べ、その存在は何者にも代えがたいとした。
 閉会のあいさつでは、近藤産経新聞社社長が、「病を治すことはもちろん、健康に暮らし、その人らしく生きていける時間をいかに長くできるかは、人生100年時代の医療の命題である」と述べ、その最前線で活躍する受賞者に敬意を表した。

レセプション

250320a3.jpg  引き続き行われたレセプションは、約160名の参列者の万雷の拍手の中、松本会長と近藤産経新聞社社長の先導により、秋篠宮皇嗣同妃両殿下をお迎えして開式。
 来賓祝辞では、福岡資麿厚生労働大臣が、「2040年頃を見据えると、医療・介護の複合ニーズを抱える高齢者の増大や現役世代の減少、在宅医療の需要や高齢者の救急搬送の増加が見込まれている」と述べ、受賞者を始めとする医療関係者達の協力の下、地域ごとの取り組みの推進に努めていくとした。
 選考委員でもある羽毛田信吾恩賜財団母子愛育会会長による乾杯のあいさつの後、秋篠宮皇嗣同妃両殿下は受賞者、選考委員、医学生等のテーブルを回り、受賞者達を労いつつ、その話に耳を傾けられた。
 そして、喜悦の拍手が鳴りわたる中、再び松本会長らの先導により、ご退場された。

250320a4.jpg  歓談を挟み、本事業に特別協賛している太陽生命保険の副島直樹代表取締役社長のあいさつと、釜萢敏副会長による主催者あいさつが行われた。釜萢副会長は、「地域にしっかり根を下ろし、医療・介護・福祉そしてまちづくりに積極的に取り組んでいる姿を拝見して、改めて感銘を受けている」と称賛。日本医師会としても、それらの活動を守るために力を尽くしていくとした。

250320a5.jpg  その後、「医学生から赤ひげ先生への質問」コーナーが行われ、4名の大賞受賞者と、選考委員として参加した和歌山県立医科大学の医学生4名、琉球大学の医学生2名が登壇。地域医療を志す医学生からのさまざまな質問に、各受賞者は自身の心構えや行政との連携の大切さなどを語った。

大賞受賞者が喜びを語る

 福井県の中村伸一医師は、卒後3年目で派遣された際は、「総合診療の千本ノックを受けているようだった」と回顧。3年間も入浴できないでいた高齢患者を通して在宅ケアの重要性に気付き、自治体や社会福祉協議会と連携してデイサービスを実施するなど、地域包括ケアを築いてきたことを紹介し、「名田庄の方々に32年間、医師として育ててもらった」と受賞の喜びを述べた。
 愛知県の早川富博医師は、住民1万人を対象に行ったアンケートを基に、必要とされるさまざまなサービスを展開してきたことを説明。「田舎がどう生き残るかを考えた時、医療だけではだめで、福祉、介護、生活支援へと手を広げ、どんどん医療から遠ざかっていくようだった」としつつ、地域の住民が支えてくれるおかげで病院が存続できているとして、今後も開かれた病院として地域の人達と一緒に仕事をしていきたいと意気込みを示した。
 大阪府の中村正廣医師は、医師であった父親の志を継いでその病院跡地にクリニックを開業し、終(つい)のすみかとなる有料老人ホームも併設、多職種連携により訪問診療や在宅看取りを行ってきたことを述懐。地域医療連携の専任コーディネーターを設け、入退院の支援や適切なケアサイクルが回るような体制づくりに努めてきたとする一方、商店街の空き店舗を借りて高齢者の居場所づくりにも取り組んできたとした。
 和歌山県の高垣有作医師は、2055年の日本の高齢化率予測を先取りしているすさみ町において、限られた医療資源を永続的なセーフティーネットとするべく尽力する中で得られた知見として、(1)5000人程度に分割した地域包括ケアを提示すると、きめ細やかで効果が出やすい、(2)地域のコミュニティを大切にする、(3)生涯働ける場を残す―ことを紹介。「都会の90歳とわが町の90歳は同じではないと思う」と胸を張った。
 当日は体調不良のため欠席となった熊本県の間部正子医師は、ビデオメッセージで、「医師となり70年近く、2年前に亡くなった夫と共に、地域住民の方々が安心して生活できるよう、専門の耳鼻咽喉科だけでなく、一般内科、外傷処置、分娩の介助など朝から晩まで働いてきた。田舎で苦労することも数多かったが、長男夫婦や孫達と一緒に外来に立てることをうれしく思う」と述べ、本賞を通じて若い医師達が地域医療に関心を持つよう期待を寄せた。

 なお、大賞受賞者の功績や当日の模様などをまとめた小冊子『日本医師会 赤ひげ大賞 かかりつけ医たちの奮闘』は、『日医雑誌』5月号に同梱予定である。

「赤ひげ大賞」受賞者(5名)

順列は北から
受賞者の年齢は2025年2月21日現在

中村  伸一(なかむら しんいち)医師
62歳 福井県
おおい町国民健康保険 名田庄診療所 所長
早川 富博(はやかわ とみひろ)医師
73歳 愛知県
愛知県厚生農業協同組合連合会 足助病院 名誉院長
中村 正廣(なかむら まさひろ)医師
76歳 大阪府
中村クリニック 理事長
高垣 有作(たかがき ゆうさく)医師
66歳 和歌山県
国保すさみ病院 顧問
間部 正子(まべ まさこ)医師
97歳 熊本県
間部病院 副院長

 

「赤ひげ功労賞」受賞者(14名)

順列は北から・敬称略

  • 加藤 輝夫(かとう てるお)(75歳)
    (北海道・市立函館南茅部病院 院長)
  • 小笠原真澄(おがさわら ますみ)(68歳)
    (秋田県・大湯リハビリ温泉病院 院長)
  • 高玉 真光(たかたま まさみつ)(94歳)
    (群馬県・老年病研究所附属病院 理事長)
  • 小暮 堅三(こぐれ けんぞう)(92歳)
    (東京都・小暮医院 名誉院長)
  • 土肥 直樹(どい なおき)(61歳)
    (神奈川県・相模原市国民健康保険 内郷診療所 所長)
  • 中村 國雄(なかむら くにお)(83歳)
    (富山県・中村記念病院 理事長・院長)
  • 紀平 章代(きのひら あきよ)(83歳)
    (静岡県・紀平クリニック 副院長)
  • 渡辺 康介(わたなべ こうすけ)(76歳)
    (京都府・渡辺西賀茂診療所 理事長)
  • 武地 幹夫(たけち みきお)(65歳)
    (鳥取県・江府町国民健康保険 江尾診療所 所長)
  • 土手 慶五(どて けいご)(67歳)
    (広島県・安佐医師会病院 病院長)
  • 吉田  修(よしだ おさむ)(66歳)
    (徳島県・さくら診療所 勤務医)
  • 今井 洋子(いまい ようこ)(89歳)
    (愛媛県・奥島病院 非常勤医)
  • 麻生  宏(あそう ひろし)(80歳)
    (大分県・麻生小児科医院 理事長)
  • 徳留 一博(とくどめ かずひろ)(81歳)
    (鹿児島県・日当山温泉東洋医学クリニック 理事長・院長)

 

お知らせ
 第13回「日本医師会 赤ひげ大賞」受賞者の日頃の活動と表彰式の模様を特集した番組を下記の要領により、放映することになりました。ぜひご覧下さい。
番組名:BSフジ「密着!かかりつけ医たちの奮闘~第13回赤ひげ大賞受賞者~」
放送日時:3月30日(日)午後5時~(約1時間)

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