11月29日に令和6年度補正予算案が閣議決定され、同日、財務省財政制度等審議会が「令和7年度予算の編成等に関する建議(いわゆる「秋の建議」)」を加藤勝信財務大臣に答申したことなどを受け、松本吉郎会長は12月4日の定例記者会見で見解を述べ、医療界の切実な訴えが反映された補正予算案であるとした。
令和6年度補正予算について
松本会長は、今回の補正予算において、「日本医師会のみならず、全国の地域医師会や医療関係団体、医療従事者等の医療界全体による切実な訴えが実を結んだ」と評価。
更なる賃上げ等の支援として1,892億円(医療分828億円)が予算措置されたことについては、「この施策の対象はベースアップ評価料を算定している医療機関となるため、まだ届け出ていない医療機関には積極的な届出・算定を、引き続き要望していく」と強調。政府に対しては、ベースアップ評価料及び本補助金の申請手続き等の更なる簡素化を求めていくとした。
物価高騰に関して、光熱費や病院給食等の食材料費への支援が、内閣府の重点支援地方交付金6,000億円の中で行われることについては、「引き続き、医療分野は推奨事業メニューに位置付けられ、厚生労働省から都道府県に活用を促す事務連絡が送付される見込みだが、都道府県医師会からも行政に対して働き掛けて欲しい」と要請した。
医師偏在対策に関しては、広域マッチング事業として1.6億円、総合的な診療能力をもつ医師養成の推進事業として1.1億円が前倒しで予算措置されたことについて、委託を受けている女性医師支援センターのノウハウを用いて、全世代の医師に協力してもらえるよう取り組んでいくと説明。重点医師偏在対策支援区域(仮称)における診療所の承継・開業支援事業等が予算措置されたことにも言及し、「令和6年度補正予算、令和7年度予算、更には今後国から示される医師偏在についての総合的な対策パッケージや、厚生労働省医療部会等での議論を踏まえた令和8年度予算によって、できるところから複合的に対応をしていくことが重要である」との見解を示した。
医療DXに関しては、マイナ保険証の利用率がまだ10%台と低く、いまだ残っている国民の不安が最大の要因だと指摘。丁寧な説明とメリットへの理解が必要だとして、日本医師会としても、国や保険者など関係者とともに、周知・広報に努めていくとした。
医薬品・医療機器に関しては、日本医師会として国に対し補助金や税制を活用した支援を求めてきたが、今回の補正予算で、広範な施策の予算が確保されたとして、医薬品供給不安の改善と継続した予算確保に期待を寄せた。
「秋の建議」について
財政審の議論に対しては、地域別診療報酬、医師偏在における過度な規制的手法、「特定過剰サービス」という発想等は到底容認できないとの10月23日及び11月20日の定例記者会見での見解を改めて強調。
その上で、高額療養費制度について、一部のマスコミ報道や国の情報管理のあり方を問題視。憶測に基づく報道によって議論が歪められることなく、社会保障審議会医療保険部会の場で十分に議論を進めるよう要望した。
更にバイオシミラーにも反論し、「国による積極的な補助金等を用いた支援を求めてきたが、令和6年度補正予算案においてバイオ後続品をわが国で製造し、バイオ医薬品産業を育成していくための国内製造施設整備として65億円が計上された他、補正予算で、海外依存度の高い原薬や医療機器、βラクタム系抗菌薬の安定確保事業が予算措置された」と評価。こうした取り組みによって医薬品の国内生産力が高まり、国益に寄与するとともに、日本経済・地方経済の成長にもつながっていくとの考えを述べた。
経済財政諮問会議について
この他、松本会長は12月3日の経済財政諮問会議において、有識者議員より「社会保障が経済を支える機能の向上と、経済・物価動向等を踏まえながら、社会保障費の実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びに収めていくことが求められる」との主張がなされたことを取り上げ、「国民医療を守るための総決起大会で決議されたとおり、『賃上げと物価高騰、さらには日進月歩する技術革新への対応には、十分な原資が必要』であり、高齢化による増加分とは別枠で対応すべき」と指摘。就業者全体の13.5%にも上る医療・介護分野の従事者約900万人が賃上げから取り残されるようなことがあってはならないとし、地域医療を守り、地方経済を活性化するためには、インフレに負けない賃上げを行って医療従事者を確保していくことが不可欠であると訴えた。
問い合わせ先
日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)