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令和5年(2023年)10月5日(木) / 日医ニュース

医療DX推進に関する意見交換会で日本医師会の考えを説明

医療DX推進に関する意見交換会で日本医師会の考えを説明

医療DX推進に関する意見交換会で日本医師会の考えを説明

 医療DX推進に関する意見交換会が9月8日、厚生労働省で開催され、松本吉郎会長が出席。「医療DX推進に関する考え方」「マイナ保険証の利用促進、周知啓発」等について日本医師会の考えを説明した。

 本意見交換会は、国民にマイナ保険証や電子処方箋(せん)を広く利用してもらい、医療DXのメリットを実感してもらうために必要な取り組みについて、加藤勝信厚労大臣(当時)と関係団体が意見交換を行うことを目的に開催されたものである。
 厚労省からは加藤大臣、大島一博事務次官らが、医療界からは、松本会長を始め、高橋英登日本歯科医師会長、相澤孝夫日本病院会長、山本信夫日本薬剤師会長が参加した。
 冒頭のあいさつで加藤大臣は、「医療DXの推進に当たって大事なことは、国民、現場の方にその目的、価値、メリットを共有してもらいながら進めていくことだ」と述べ、引き続き、電子カルテや電子処方箋の普及及びマイナ保険証の利用拡大を進めていく姿勢を示した。
 また、マイナ保険証のひも付けの誤り等が起きていることを謝罪するとともに、一つ一つ課題を洗い出し、その解消に向けて保険者が関係者と共に取り組んでいると説明。その上で、先進的な取り組みを行っている施設では、診療情報や薬剤情報が有効に活用され、重複投薬や併用禁忌のチェックなどに役立てられるなど、質の高い安全な医療につながっており、事務の簡素化、効率化にも資するとして、そのメリットを強調した他、「医療DXは医療、介護の提供のあり方自体を変革する改革である」と指摘。関係者と協力し、国民や患者、医療現場に対して積極的に情報発信しながら、医療DXの実現に向けて更に取り組んでいくとした。

マイナ保険証の不安払拭(ふっしょく)が医療DX推進の最大の普及策

 続いて、参加団体からの意見発表が行われた。
 松本会長は、まず、日本医師会が、医療DXの推進により「国民・患者の皆様への安心・安全でより質の高い医療提供」及び「医療現場の負担軽減」が実現できると考え、政府に全面的に協力してきたとするとともに、「引き続き、医療現場の立場からさまざまな提言を行いつつ、政府と共に、国民・患者と医療現場にメリットをもたらす医療DXの実現に取り組んでいく」とした。
 マイナ保険証の利用促進、周知啓発に関しては、「マイナ保険証による受診は、今後の医療DXの基盤となる重要な第一歩であり、医療機関においてその活用が進むよう尽力していきたい」と強調。現在さまざまな課題が指摘されていることに対しては、「保険料を納付している全ての国民、患者が、必要な時に適切な自己負担額で医療を受けられる環境を整備し、誰一人取り残さないことが医療DX推進の大前提」とした他、マイナ保険証に関する国民・医療機関の不安を払拭することは、医療DX推進の最大の普及策でもあるとの見方を示し、8月8日に政府が公表した、今後の対応を取りまとめた「政策パッケージ」の確実な実行を求めた。
 また、より良い医療の提供のためには、マイナ保険証を多くの人に利用してもらい、医療機関と患者の双方がそのメリットを実感できることが必要であると説明。利用促進には、国民・患者への効果的な周知が不可欠であることから、政府や歯科医師会、薬剤師会とも協力してマイナ保険証による受診を促すポスターを作成するなど、その周知を行っていく姿勢を示した。
 その他、医療機関から、患者の受付や事務フローが従来よりも煩雑になったとの声があることを紹介し、「政府には、不安の払拭と合わせて、現場の負担軽減に向けた取り組みをお願いしたい」と要望。具体的な好事例の収集・横展開について、政府と協力して発信していくとした。
 医療DX推進については、「その推進に当たっては、現場の医師、看護師、事務職員などが使いやすい環境を整えていくという視点が重要」と指摘。現在、医療機関が閲覧できる薬剤情報は必ずしも見やすいものとは言えないため、国とシステムベンダーが連携し、医療現場が見やすい・使いやすいものとすることを要望した。
 次に、医療機関等のシステム改修等の負担への配慮が必要との見方を示し、医療現場の声をよく聞きながら、順次導入が予定されている施策間の連携や整合性をとって、医療機関の負担を極力減らす方向で今後の工程を進めていくことを求めた。
 その上で、医療DX推進の鍵は薬剤情報の共有であるとの考えを示すとともに、電子処方箋の普及が進んでいないことへの問題意識を表明。「地域の中核病院、診療所、薬局等、複数の施設が『面』で使い始めることで、重複投薬の削減や併用禁忌の処方防止という医療安全の効果がより発揮できるようになる」と述べ、日本医師会はHPKIに関しても全面的に協力をしていくとした他、政府には、導入支援の強化も含め、「面」での普及拡大という視点を更に意識し、地域の三師会とも連携して進めることを要望。今後導入が予定されている電子カルテ情報共有サービスも同様とした。
 松本会長は最後に、診療報酬改定DXにおける、医療と介護の足並みをそろえた一体的な取り組みを要望した上で、「丁寧な課題解決の積み重ねと、実感できるメリットを提供することにより、強制ではなく、医療機関が自ら進んでDXを導入するような環境をつくり上げていくことが重要」と強調し、引き続き日本医師会としても協力していく方針を示した。
 各団体の意見発表を受けて、加藤大臣は、「本日頂いた意見を始め、今後とも関係者の声をしっかり受け止めながら、省を挙げて医療DXに取り組んでいく」と述べ、意見交換会は終了となった。

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