日本医師会設立74周年記念式典並びに医学大会が11月1日、堀憲郎日本歯科医師会長、安部好弘日本薬剤師会副会長らの出席の下、日本医師会館大講堂で開催された。 今年度も引き続き、新型コロナウイルス感染症の感染状況を踏まえ、会場への入場者を絞り、受賞者による記念講演も行わない形での開催となった(被表彰者一覧は別記事参照)。 |
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冒頭、あいさつした中川俊男会長は、「新型コロナウイルス感染症の影響により医療を取り巻く環境は厳しい状況にあるが、その過酷な状況を乗り切るためには、更なる感染拡大の防止とともに、コロナ治療と通常の診療との両立を図ることが重要になる」と指摘。そのためにも医療界を挙げての取り組みが不可欠であるとするとともに、「日本医師会としてもその先頭に立ち、地域医療体制を維持し、国民の生命を守っていく覚悟である」とした。
また、今後については、「国民医療に尽くしてきた先達の思いを受け継ぎながら、真に国民に求められる医療提供体制の実現に努めていく」と述べ、引き続きの理解と協力を求めた。
来賓あいさつした後藤茂之厚生労働大臣(福島靖正厚労省医務技監代読)は、始めに新型コロナウイルス感染症における日本医師会及び会員の尽力に対して謝辞を述べた上で、「本日の受賞者の方々の特筆すべき業績や地域に根差した活動、先駆的な研究の成果が全国の医師会員に披露されることは、医師会の発展ばかりでなく、今般の新型コロナウイルス感染症対応、今後の日本の医学研究及び医療の発展、地域医療の充実にとって、非常に貴重なものとなる」と強調。厚労省としても、引き続き、熱意ある取り組みや研究をしっかり後押しするため、地域医療提供体制が確保されるよう万全を期すとともに、医学研究開発の発展に取り組んでいくとの考えを示した。
その後、表彰式に移り、受賞者に対して、中川会長から表彰状が授与された。
受賞者を代表して謝辞を述べた安里哲好沖縄県医師会長は、新型コロナウイルス感染症が急拡大した第5波について触れ、中川会長の下、日本医師会が先頭に立ち、全国の会員や医療機関・医療従事者の昼夜を問わずの奮闘により、乗り越えることができたとして謝意を表した。
その一方で、「いつ起きるか分からない第6波に向けて、感染拡大防止策の更なる強化や若年層のワクチン接種率の向上、3回目接種の推進、診療所で処方できる内服薬の早期実現、全ての新型コロナウイルス感染症患者に対する適切な医療の確保などが強く望まれる」と強調し、引き続きの支援を求めた。
また、コロナ禍における明るいニュースとして、地球温暖化を予測する地球気候モデルの開発という功績が認められ、真鍋淑郎プリンストン大学上席研究員がノーベル物理学賞を受賞したことを挙げるとともに、温暖化の影響により、台風の発生地域や進路に関して不確かな状態が続き、日本各地で河川の氾濫(はんらん)など大きな被害が出ていることを危惧。新興感染症の拡大、自然災害が発生した際の情報共有や、迅速な対応が可能な医療提供体制を構築していくことが今後望まれるとの考えを示した。
また、昨今の医療界を取り巻く現状については、国民皆保険制度の堅持や医師の働き方改革、臨床研修制度や専門医制度による医師の地域・診療科偏在対策、地域包括ケアシステムなど多くの課題があるとした上で、中川会長を中心に、日本医師会執行部が一丸となって諸課題に取り組んでいることに敬意を表すとともに、「今回の受賞を励みとし、今後も医学の振興と国民医療の向上に努めていく」と述べた。
なお、白寿会員84名、米寿会員881名の慶祝者には、更なる長寿を祈念して、後日、記念品が贈呈された。