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令和3年(2021年)11月5日(金) / 南から北から / 日医ニュース

ウクレレ

 私の家には3本のウクレレがあります。学生の時に高木ブーさんを目指してウクレレを始めましたが、さして上達せず、たまに興が乗った時に弾く程度でした。リビングでオブジェと化した私のウクレレ達ですが、このコロナ禍の外出自粛を機に練習を再開しました。
 3本のウクレレのうち、1本は学生の時に買ったもので、1本は社会人になってから買ったもの、残りの1本は妻と子ども達から誕生日プレゼントでもらったものです。妻と子ども達が選んでくれたウクレレが一番良いウクレレです。
 今この原稿を書いているのは5月半ばですが、もうすぐ私達夫婦の17回目の結婚記念日です。17年前、フィジーのマナ島に新婚旅行に行った時もウクレレを持っていきました。マナ島の砂浜でウクレレを弾いていると、現地のホテルのスタッフさんから声を掛けられました。彼は私達夫婦が宿泊したホテルのショーでミュージシャンとしてウクレレなどの楽器を弾いている方でした。
 曰(いわ)く、「日本のウクレレは木を十分に乾燥させて作るので、音が素晴らしい。ちょっと弾かせてくれないか」とのことでしたので渡したところ、同じウクレレとは思えない程ダイナミックな音が出ました。ミュージシャンの彼は、「やっぱり良いよなー。これ、良いウクレレだなあ」とうらやましそうに私を見ながら弾いています。
 隣で聴いていた妻は、私が出す音と彼の奏でる音のあまりの違いに、「あげちゃえば良いじゃん」と言い出しましたが、私はその時持っていた2本のウクレレのうち、良い方を持ってきていたので、ちょっと渋っていました。しかし、妻から「このウクレレのためには、彼に弾いてもらった方が良いよ」とウクレレの気持ちを代弁され、納得せざるを得ず、彼にウクレレを譲りました。
 あれから17年も経ち、妻とあの頃は居なかった3人の子ども達にもらったウクレレを弾きながら、彼とあのウクレレは元気かなと思う今日この頃です。新型コロナ感染症が落ち着けば、今度は家族と共にまた訪ねてみたいものです。

愛媛県 松山市医師会報 第341号より

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