新型コロナウイルス感染症患者の急増に伴って入院患者が受け入れられないケースが生じる状況の中、日本医師会は急きょ四病院団体協議会並びに全国自治体病院協議会との合同で「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」を立ち上げ、1月20日、テレビ会議システムを用いて初会合を開催した。
冒頭あいさつした中川俊男会長は本対策会議について、医療界が一丸となり、この有事を究極の臨戦態勢で対応していく決意の下で開催したものであると説明。「構成団体の先生方と共に、強い危機感と緊張感を共有しながら、新型コロナ患者を受け入れる病床確保に向けた具体的方策について協議していきたい」と述べた。
議事では、まず猪口雄二副会長が資料説明を行い、民間病院が公立・公的病院に比べて新型コロナ患者を受け入れていないとの批判を招いたデータ(厚生労働省「医療計画の見直し等に関する検討会」第27回地域医療構想に関するワーキンググループ)に言及。新型コロナ患者の受け入れ可能医療機関について、公立69%、公的等79%に対し、民間18%とされているが、民間の地域医療支援病院は公的等に含まれていること、民間はICUの保有数が公立・公的等に比べて少ないことや医療資源の少ない地域では公立・公的等が多いことなどを加味すれば公、民に特別な差はないことを強調した。
また、「日本は諸外国に比べて病床数が多いにもかかわらず、なぜ病床が逼迫(ひっぱく)しているのか」との批判については、日本は急性期病床とリハビリ病床を区分していないことから、リハビリ病床を抜かないと正確な国際比較にならないと解説した。
この他、当日は1月15日に開催された第51回厚生科学審議会感染症部会において、感染症法第16条の2の規程を「検査を行う民間検査事業者等の検査機関を追加するとともに、要請に代えて勧告できるよう見直した上で、正当な理由がなく、勧告に従わない場合には、大臣又は知事がその旨を公表できるように改正する」との方向性が了承されたことも話題となった。
中川会長は、田村憲久厚生労働大臣に今回の改正の趣旨について説明を求め、現行のとおり協力要請し、正当な理由なく応じない場合には勧告を行い、勧告に正当な理由なく応じない場合には公表するという丁寧な仕組みになることを確認したことを明らかにした。
加納繁照日本医療法人協会会長は、大阪府が病院団体に対し、新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく「指示」を出す意向との報道があることに触れ、「法律に基づく強制は危険な話。民間病院でも新型コロナの患者の受け入れが増えているにもかかわらず、なぜ悪者にされるのか理解できない」と訴えた。更に、小規模であることが多い民間病院が、新型コロナ患者への対応によって経営的にも厳しい状態に置かれているとして、空床補償額の引き上げを求めた。
織田正道全日本病院協会副会長は、現在の日本の医療提供体制はそもそも国の政策により機能分化が図られてきたものであり、民間病院に対する批判は誤りであると指摘。「民間病院の多くは規模の問題から新型コロナの患者の受け入れは難しいが、発症10日後の感染力がなくなった患者については、回復期・療養病床で積極的に受け入れていくべき」との見解を述べた。
小熊豊全国自治体病院協議会会長は、小規模病院は公・民にかかわらず、急性期の感染症を引き受けるのは難しいとの見方を示し、機能に応じた連携体制が大切であるとした。
中川会長は、「中小病院が直接新型コロナに対応するのは、公立・公的・民間を問わず難しく、退院基準を満たした患者の受け入れ先となることが突破口になるのではないか」と総括。病床確保の実績を挙げられるよう、今後、具体的方策を検討していきたいとして、更なる理解と協力を求めた。