都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会の第2回目が3月6日に、第3回目が13日に、テレビ会議システムを利用して、日医会館でそれぞれ開催された。
第2回(3月6日)
冒頭あいさつした横倉義武会長は、安倍晋三内閣総理大臣、加藤勝信厚生労働大臣、萩生田光一文部科学大臣に対応を求める要望書を提出したことなどを報告。現状を踏まえ、原則3月中は毎週金曜日の夕方に、本協議会を継続して開催する考えを示すとともに、「国内での急速な感染拡大が懸念されるなど、今が正に正念場の時期にある。国民の生命と健康を守るため、医師会を挙げて取り組みを進めていきたい」と述べ、引き続きの理解と協力を求めた。
その後は、釜萢敏常任理事が、(1)「新型コロナウイルス感染症専門家会議」の中の議論では、3月5日時点の日本の感染状況について、今後、急速に拡大する状況にはないとの認識である、(2)感染防御対策をしっかり取った上で診療を行った場合、医師は濃厚接触者には当たらないということで整理がなされる予定である―ことなどを説明。日医が実施している「新型コロナウイルス感染症に係るPCR検査を巡る不適切事例」に関する調査については、引き続きの協力を求めた。
松本吉郎常任理事は、PCR検査が保険適用になったことで、全ての医療機関で検査への対応が可能との誤解が生じているとし、「対応できない医療機関は、帰国者・接触者外来等の検査体制の整った医療機関に紹介するよう対応をお願いしたい」と述べた。
6都道府県医師会から現状説明を受ける
引き続き行われた協議では、北海道、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、和歌山県の各医師会から、各地の現状や課題等について説明を受けた。
多くの医師会から、マスク等の資材が不足している窮状が訴えられたことに対して、横倉会長は、国がマスクを全国に供給することになっているが、日医としても必要枚数を把握する調査を実施し、その結果を国に伝える意向を表明。また、一般社団法人日本医療国際化機構から、12万枚の医療用マスクの提供を受ける(別記事参照)ことを明らかにし、都道府県医師会を通じて、各医療機関に配布する予定であるとして、理解を求めた。
医療機関が休業せざるを得なくなった場合の補償を求める質問に対しては、城守国斗常任理事が、国に対して休業補償とともに、今回の新型コロナウイルス感染症が民間の休業補償保険の対象となるよう求めていくとした。
更に、PCR検査が体制整備がなされないままに、保険適用されたことに遺憾の意が示されたことに対しては、松本常任理事が、体制を整備してから進めるよう、厚労省には再三申し入れを行ってきたことを説明し、今回の厚労省の対応については、大変残念に思っているとした。
その他、神奈川県医師会から、相模原市の感染症指定医療機関で研修医が感染したことで、市の救急医療が危機的な状況にあることを報告。東京都医師会からは、「感染症の治療に当たっては集中治療室で対応することが大事であることから、全国で、どの集中治療室が空いているのかが分かるようなネットワーク化を図る」「感染患者の搬送に消防の救急隊員を活用する」といった提案もなされた。
第3回(3月13日)
冒頭あいさつした横倉会長は、医療現場においてマスクや防護具が不足している現状について触れ、①加藤厚労大臣に早急な配備を求める要望書を同日に提出した(別記事参照)②自治体が保有していた250万枚のマスクが医療機関等に優先的に配布される他、厚労省でも1500万枚を購入し、配布予定である―ことなどを説明。この問題は近々解決するのではないかとの見通しを示した。
引き続き、釜萢常任理事が、(1)専門家会議の「見解」、(2)地域における帰国者・接触者相談センターに対する支援体制の構築、(3)新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点―について解説した。
(1)では、3月9日時点での日本の現状に対する専門家会議の見解は「何とか持ちこたえている」ということであったが、12日の非公式会議では、これよりも厳しい状況にあるとの認識になっていることを紹介。
(2)では、具体的な支援案として、「○○医師会新型コロナ受診相談窓口(仮称)」を設置し、電話相談によるトリアージを行うことなどを挙げ、各自治体と協議し、各地の状況にあった対応をして欲しいとした。
(3)については、標準予防策や濃厚接触者について示した厚労省の事務連絡を踏まえて、マスクや防護具が不足している現状では、例えば、インフルエンザ等の場合には検査をせず、臨床診断にて治療薬を処方することを検討することなどを求める通知を出したことなどを説明した。
マスク等の安定供給に向けた緊急調査に協力を
小玉弘之常任理事は、国から配布されるマスクに関して、「適正な配分がなされるよう、都道府県に働き掛けてもらいたい」と述べるとともに、日医が実施している「医療機関に対するマスク等の安定供給に向けた緊急調査」への協力を求めた。
「医療機関における休業補償等」については、城守常任理事が雇用調整助成金の特例の活用を紹介し、この問題については、羽生田俊参議院議員が国の対応を求める質問をする予定であると説明。更に、民間の休業補償保険が存在しないことから、その創設を要望していく考えを示した。
小玉常任理事は、新型コロナウイルス感染症により機能停止等となった医療機関関係施設等に対して、福祉医療機構が行っている融資が拡充されていること、納税が困難になった場合の猶予制度があることなどを紹介。松本常任理事は、診療報酬上、算定要件が満たせなくなった場合の対応について、被災地特例と同じ扱いになることを説明した。
「集中治療室に係る情報のネットワーク化」については、石川広己常任理事が人工呼吸器やECMO装置の使い方について、都道府県や医師会、ICU、DMAT関係者等が参加した協議の場を設置することを提案した。
長島公之常任理事は、感染患者搬送業務への救急隊員の活用について、消防庁に確認し、「保健所等と協定を締結するなど、事前に十分な協議を行った上で、できる限り搬送に協力している」との回答を得たことを報告。「活用のためにも都道府県に働き掛けを行って欲しい」と述べた。
松本常任理事は、新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取り扱いについて概説した他、「令和2年度の診療報酬改定を一時延期すべき」との要望に対しては、今回の改定で重点課題となった働き方改革は待ったなしの状況にあることなどを説明し、4月1日からの施行に理解を求めた。
江澤和彦常任理事は、通所サービスを利用できなくなった利用者に対して居宅サービスを提供した場合は、通所系サービスの報酬区分を算定できる他、都道府県が地域医療介護総合確保基金でマスクを一括購入し、介護事業者に提供することを検討していることを明らかにした。
その他、当日は、石川常任理事が「日本医師会 新型コロナ通信」をメールで配信するとともに、日医ホームページのメンバーズルームに掲載していることを、釜萢常任理事からは、日医が調査を行っている「新型コロナウイルス感染症に係るPCR検査を巡る不適切事例」(3月13日午前10時時点)の結果を報告。
また松本常任理事は、230万人いる在留外国人が今後、医療機関に相談に来る可能性があることに触れ、「困ったことがあれば、日医に連絡して欲しい」と述べた。
これらの説明に対して、都道府県医師会からは、「帰国者・接触者外来の拡充」「消毒液の確保」「新型コロナウイルス感染症患者を診るに当たってのフローチャートの作成」「クラスター患者の情報提供」「精神疾患の患者が感染した場合の対応の検討」を求める要望などが出された。