日医はこのほど、「医師の特殊性を踏まえた働き方検討委員会(プロジェクト)」を別掲のメンバーにより新設することになり、主担当の小玉弘之常任理事が2月26日の記者会見でその趣旨等を説明した。
同常任理事は、本委員会の目的について、「医師の健康を守ることを大前提とし、医師という職業の原点を見つめ直し、これまでの議論を踏まえつつ、地域住民が安心して暮らせるような医療提供体制を維持し、また、医学の進歩に資するような医師の働き方を改めて提言することにある」と説明。
設置の背景については、(1)医師の働き方の議論において、「地域医療を守る」、「医学の研究開発を推進する等の多様な業務を担っている医師の特殊性」、「医療を受ける地域住民の立場に立った安心感のある医療提供体制を構築していく」などを踏まえた検討がなされているかを懸念する意見があった、(2)副業・兼業について緊急アンケートを行った結果、「勤務時間の通算を一般業種と同様扱いとした場合、病院の宿日直体制が維持できなくなる」との意見が多数あった、(3)現状、診療に従事する医師の働き方の議論に終始しており、研究・教育・臨床の役割を担う大学病院の医師の働き方の議論が不十分である―ことを挙げた。
また、令和6年度に医師に対して、罰則付きの時間外上限規制(1860時間)が導入されることに対し、「各地域の医療提供体制の見通しが予測困難な状況であり、規制を設けることで地域医療に大混乱を来すことが予想される。医師会を始めとする医療界には、そのリスクに対処する義務がある」との考えを述べた。
更に、「医師偏在・診療科偏在対策や地域医療構想の議論を行う中で、医師の働き方についての議論も欠くことはできないが、課題も多いことから各事項において丁寧な議論が必要である」と、従前より横倉義武会長が指摘していたことを明らかにするとともに、日本医師会綱領で「日医は、医師としての高い倫理観と使命感を礎(いしずえ)に、人間の尊厳が大切にされる社会の実現を目指します」と謳っていることを紹介。「医師の働き方を考える上で、忘れてはならないことである」と強調した。
その上で、同常任理事は、本委員会ではこれまでの国の検討内容を尊重しつつ、一度立ち止まって諸問題を考えていき、そして、国民の命に直結する医療について、どのような医師の働き方が国民からの期待に応えることができるのかについて取りまとめたいとの意向を示した。
医師の特殊性を踏まえた働き方検討委員会(プロジェクト)
岡崎 淳一(元厚生労働審議官)小川 彰(岩手医科大学理事長) 小畑 史子(京都大学大学院人間・環境学研究科教授(労働法)) 木村 亨(元労働保険審査会委員) 後藤理英子(熊本大学病院地域医療支援センター専任助教) 蓮沼 直子(広島大学医学部附属医学教育センター副センター長) 平井 伸治(鳥取県知事) 【小玉弘之・松本吉郎・城守国斗各常任理事 健康医療第一課・総合医療政策課】 |