「南海トラフ大震災を想定した訓練(災害時情報通信訓練)」が2月5日、スカパーJSAT並びに宇宙技術開発、NTTドコモなどの協力の下、日医会館小講堂で開催された。
今回の訓練は、紀伊半島沖で東南海地震が発生し、日医に災害対策本部を設置後、衛星通信を用いて被害状況の確認やJMATの派遣等を行っていくことを想定。
これまで訓練に利用してきたインターネット衛星「きずな」の運用が終了したことから、今年度は新たにスカパーJSATを始めとする関係事業社の協力を得て、実施された。
訓練の冒頭にあいさつした横倉義武会長は、「日医の役割は、都道府県医師会等、会員の先生方、そして関係者の方々のご協力の下、大規模災害発生直後から被災地の地域医療が復興するまで、さまざまな形で支援を続けることにある」と強調。その上で、「日医と被災地、また支援する側の都道府県医師会との間で情報共有を行っていくことが重要であることから、この訓練を通して多くのことを学び、備えたい」とした。
続いて、石川広己常任理事が防災訓練開始を宣言。被害想定及び災害発生時から3カ月目までの日医の対応等について、以下のように時系列に沿って訓練が行われた。
発災1日目
「スカパーJSAT」を用いて、各都道府県医師会と連絡を取り、対応を協議。神奈川県医師会の竹村克二副会長と久保田毅理事からは、同医師会の災害時医療救護本部や神奈川県内の被害状況及び「先遣JMAT」の編成準備について、橋上裕三重県医師会常任理事からは、被害状況と対応状況の報告がなされた。
更に、「ワイドスターⅡ」を用い、永井正高伊勢地区医師会長からも報告が寄せられた。
日医災害対策本部では協議の上、JMATの派遣を決定。神奈川県医師会や東海地方及び近接の都府県医師会に「先遣JMAT」の派遣を要請するとともに、他の医師会にはJMATの編成・待機を依頼。
また、被災地医師会には「被災地JMAT」の派遣の際には、日医へ登録申請を行うことや他の医師会からのJMATとの連携をお願いした。
発災7日目
全国から派遣されたJMATの活動が本格化。現地の疾病構造を確認するため、各都道府県医師会に模擬災害診療記録を基に活動日報の作成及び本部への報告を依頼。更に、災害時診療概況報告システム「J―SPEED」を活用し、被災地では感染症患者が増加していると判断。日本環境感染学会に対しては、災害時感染制御支援チーム(DICT)の派遣を要請した。
発災2週目
全国からは「支援JMAT」が派遣され、日医では医療関係団体と被災者健康支援連絡協議会を開催し、連携を密にしていくことを合意した。
発災3週目
被災地では、医療ニーズが災害対応から通常診療に移行。日本災害医学会の「災害医療コーディネートサポートチーム」が被災県医師会や「統括JMAT」と連携し、JMATとして現地活動を本格化。
発災から1カ月経過
被災県外の「統括JMAT」から徐々に被災県医師会に引き継ぎが行われた他、また、「支援JMAT」は派遣先を絞り込み、継続的な派遣に切り替え、その後、撤退し、「JMATⅡ」のフェイズへ移行。
発災から3カ月経過
国では補正予算が組まれ、日医でも集められた被災医療機関支援のための義援金の配賦を開始。被災地では、本格的に地域医療と地域包括ケアシステムの復興を行っていくこととなった。
その後の議論では、復興のための支援活動について、橋上三重県医常任理事が「被災地域の民間病院・診療所の復興状況を被災地医師会がリアルタイムに得て、医師を始めとして、看護師、薬剤師などの人員不足の状況をまとめ、『JMATⅡ』の派遣を含めた人員的支援の対策を立てる必要がある」とした他、久保田神奈川県医理事は「被災地に対し、医療資源不足等の継続的な支援をしていくことは、日本全国規模の課題である。また、被災地医師会などが何を望んでいるのかを踏まえて調整するべきである」と指摘した。
訓練後、参加者やオブザーバーからの講評が述べられた後、中川俊男副会長が防災訓練に協力頂いた関係者に感謝の意を示すとともに、「今回の訓練を通して得た知見を基に、大規模災害に備えていきたい」と総括し、訓練は終了となった。