三重県子ども・福祉部子育て支援課より提供
三重県子ども・福祉部子育て支援課より提供
近年、晩婚化等を背景に不妊治療を受ける夫婦が増加しており、働きながら不妊治療を受ける人は増加傾向にある。しかしながら、不妊治療に対する支援制度のある企業は少なく、不妊治療と仕事の両立ができず、やむを得ず離職する場合も多いと言われている。
不妊治療を行う従業員の多くは、休暇制度や柔軟な勤務を可能とする制度など、利用しやすい環境づくりを求めている。不妊治療と仕事の両立について、職場での理解を深め、従業員が働きやすい環境を整えることは、有能な人材の確保という点で、企業にも大きなメリットがあると思われる。
不妊治療と仕事の両立支援に関する連携協定締結に先立ち、三重県と三重県産婦人科医会の協力によりアンケート調査を行った。対象は、①特定不妊治療費助成申請のために市町の窓口に来所した人(令和元年7月)、②三重県内9指定医療機関で不妊治療を受けている人(同年8月)で、それぞれ1カ月間に行われ、対象は計913名であった。
その結果から、10・9%の方が「治療に専念するために仕事をやめた」と回答した。また、「治療するために非正規へ」や「治療のため今の会社に変えた」という人もおり、不妊治療のために働き方を変えた人も相当数いることが分かった。治療に専念するために仕事を辞めた人のうち、治療について職場の理解があると感じていた人は約19%にとどまり、また両立が難しいと感じていた方は実に88%であった。一方、仕事を続けている人でも約66%が不妊治療と仕事の両立は難しいと感じていた。現在の職場に不妊治療への理解があると感じている人は48・6%と半分以下であり、また職場に不妊治療をサポートする制度があるのは約20%と低かった。
アンケートの自由記載では「最初の頃は理解があったが、だんだん肩身が狭くなり退職した」「治療のための急な休みや早退に理解が得られない」「男性も不妊治療のために休める環境をつくって欲しい」など切実な訴えが聞かれた。今回のアンケート結果から、職場の理解やサポート制度があれば不妊治療と仕事の両立が難しいと感じる人の割合が低くなることも分かった。
そこで昨年12月15日、鈴木英敬知事の熱い思いにより全国で初めて、三重県は三重県経営者協会、連合三重、三重県医師会、三重県産婦人科医会、三重労働局の5者との間で連携協定を結ぶことになった。この協定では経営者協会や連合三重には、不妊治療中の休暇や高額な治療費の助成制度を企業や労組に周知・検討してもらい、また医師会や産婦人科医会は治療の正しい知識を企業に発信したり、受診者に相談窓口を紹介したりする役割を担うこととしている。すなわち、不妊治療と仕事の両立を望む人を支援するために、不妊治療に関する正しい知識の普及、職場での理解促進、相談体制の充実を図り、協力して取り組んでいくことを目指している。
今後、不妊治療の受けやすい環境づくりを進めていくために、本年2月23日には「不妊治療と仕事の両立を考えるシンポジウム」が開催されることになっている。これらを通じて、職場の理解の下、働きながら不妊治療に専念できる環境づくりの啓発を行っていくことが大切と考えている。