2019年3月21日 山形新聞掲載
2019年3月21日 山形新聞掲載
学校教職員は、一般の会社の労働者に比べ、産業医活動の恩恵を受けていない。理由は、学童の健康管理を担う学校医はいても、教職員の健康管理を担う医師、すなわち産業医が配置されていないからであり、これまで教職員への産業医活動は置き去りの状態になっていたと言える。
しかし、教職員はストレスが多く、精神疾患が相当数発生することから、産業医活動の中でもメンタルヘルス支援体制の構築が喫緊の課題となっていた。
そこで、山形県医師会では、昨年10月に県内の全ての学校医(小・中・高等学校)に対し、学校におけるメンタルヘルス支援体制への協力に関するアンケート調査を実施した。
その結果、高等学校においては管理学校医の8割が認定産業医の資格を有し、産業医活動を行っていることから、自らが支援体制に関与していくことに肯定的な回答であったが、小中学校では、産業医が少ないため、学校医ではなく、産業医による支援体制の構築を望む意見が9割以上であった(これはすなわち、支援体制が求められるのは小中学校であり、産業医の配置が必須ということである)。
この結果を基に、山形県医師会では昨年の秋から県教育委員会と数回にわたり協議を行った。
更に今年の2月には、県市町村教育委員会協議会主催の教育長会総会にて中目千之同県医師会長が講演で、教職員メンタルヘルス支援体制構築の必要性を訴え、各地区医師会長には市町村教育委員会教育長とトップ会談をし、両者で解決するという基本合意を取り付けるように依頼した。
これを受け、酒田市では市長協力の下、県医師会、酒田地区医師会十全堂、酒田市、酒田市教育委員会の四者による協定書の締結式が行われた他、2カ所で同様の協定が結ばれた(協定書は予算の確保という観点の他に、後戻りしない担保となっている)。
当県の特徴としては、①地区医師会長と教育長がトップ会談をし、基本的合意を得る②県内の小中学校のほとんどが50人未満の教職員数であり、産業医にも限りがあることから、各地区の小学校をまとめて一つの職場(会社)、同じく中学校をまとめて一つの職場とし、それぞれに複数(2~3人)の産業医を配置、可能なら精神科医も配置する―等が挙げられる。
当面は、長時間労働者とストレスチェック高リスク群の面談を主とするが、労働安全衛生法で「申し出希望者との面談」とされていることが機能不全に陥る原因にもなっていることから、産業医による呼び出し、校長等からの情報収集を基にした面談等の体制を構築し、教職員が「気軽に」産業医と面談できる体制を構築することを最終目標としている。
今回の経験から言えることは、教職員メンタルヘルス支援体制の構築には、医師会側から教育委員会側に話を持っていかない限り進まないということである。
教育委員会も改正労安法への対応に苦慮し、自分達だけでは解決できないことを十分に認識している一方で、医師会側へ相談することに躊躇(ちゅうちょ)している点もあると聞いており、我々医師会側からの呼び掛けが重要と考えている。