松本吉郎常任理事は4月4日の定例記者会見で、産業保健委員会が会長諮問「医療機関における産業保健活動推進のための具体的方策―医療の質と安全の向上を目指して―」に対して、検討結果を取りまとめ、3月7日に、相澤好治同委員会委員長(北里大学名誉教授)より横倉義武会長宛てに答申したことを報告し、その概要を説明した。
答申は、「はじめに」「I労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度のあり方」「II産業医制度のあり方」「III医療機関における産業保健活動推進のための具体的方策」「おわりに」で構成され、「産業医活動並びにストレスチェック制度に関するアンケート調査票」と「医療機関における産業保健活動に関するアンケート調査票」が別添資料として添付されている。
Iでは、安衛法改正により開始されたストレスチェック制度の実態について認定産業医5,000人に対し調査を実施、4割を超える医師から回答を得た集計結果の考察と提言がまとめられている。
IIでは、産業医制度や医療機関における産業医の視点について整理を行った。
厚生労働省の「産業医制度の在り方に関する検討会」が安衛法における産業医の位置づけや役割の見直しについて検討した結果を報告書として取りまとめたことを受けて、労働安全衛生規則、有機溶剤予防規則等が改正されたこと、労働政策審議会で、「働き方改革実行計画」を踏まえ、産業医・産業保健機能の強化として産業医の活動環境の整備、産業医に対する情報提供等が安衛法改正案及び労働安全衛生規則改正案として建議されたこと等を踏まえ、今後の産業医のあり方について提言をまとめている。
IIIでは、5,000施設の医療機関に対してアンケート調査を実施し(回答率38.4%)、実際の産業保健活動の結果を基に整理。IとIIの議論も踏まえ、医療機関における産業保健活動の具体的方策をまとめている。
「おわりに」では、「I労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度のあり方」について、「本制度を活用し役立つものにするために、科学的な調査研究の実施による効果検証を通し、必要な制度の改善を行うこと、また、制度的改善に伴う産業医の業務増大に対しては、応分の報酬ややりがいにつながるような改善が図られることが望ましい」としている。
「II産業医制度のあり方」については、ストレスチェック制度の実施、産業医制度の在り方に関する検討会、労働政策審議会、働き方改革実行計画及び日医の働き掛けなどによって産業医を取り巻く状況が大きく変化し、産業医に対する期待が高まりつつあるとした上で、その期待に応えられる産業医制度の整備とともに、産業医自身を守る観点の法整備や環境整備が必要だとしている他、医療機関の産業医活動は、他機関における活動よりもより一層の努力が求められると指摘している。
「III医療機関における産業保健活動推進のための具体的方策」については、既に日本の医療機関で行われている産業保健活動の良好実践事例に学び、方針、体制、産業医の役割強化と報酬確保、連携、衛生委員会活用などの取り組みを推進するとともに、その際には、日医作成ツールの活用、健康確保のために産業医、事業者、管理監督者、医師自身及び患者やその家族、地域社会等が加わって包括的管理を推進していくことが望ましいとの提言がなされている。
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