今村聡副会長は1月16日、厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会(座長:渋谷健司東大大学院教授)」で行われたヒアリングに出席し、医師の偏在対策などに関する日医の考えを説明した。
医師の偏在対策については、「医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会」(以下分科会)において議論が行われていたが、本検討会の結論が出るまでは議論は行わないこととなり、現在議論が中断した状態となっている。
今回のヒアリングは、この状態を問題視した横倉義武会長が、現場の意見を聞くよう塩崎恭久厚労大臣に直接申し入れを行い、実現したものである。
ヒアリングの中で、今村副会長は、「医師を養成するには10年程度(医学教育6年+臨床研修2年+専門研修など実地での経験年数)の期間が必要であり、短期間での増減は実質的に不可能である。現状の対策と将来の議論を混同すると大きな混乱を招くことになる」として、中長期的な視点に立った対策の必要性を強調した。
また、日医の取り組みとして、昨年、会内に「医師の団体の在り方検討委員会(委員長:本庶佑京大名誉教授)」を設け、都道府県を単位とする医師の団体が大学や行政等と協働・連携して問題解決に当たる仕組みについて議論を行っていることを説明し、今年の春頃には最終報告を行う予定であるとした。
その上で、同副会長は、早急に解決しなければならない課題は医師の偏在対策であるとして、分科会を速やかに再開し、公の場において議論を進めることを要求。医師の偏在解消に向けた具体策としては、「地元出身者枠の導入」「出身地と同じ都道府県での臨床研修の実施」など、エビデンスに基づいた対策を早期に実施することが重要になるとした。
更に、分科会の中間まとめで偏在対策として示された14項目については、「分科会での議論によって既に実現した対策や、方向性が見えてきた対策もある」として、各項目の議論をより深化させていく必要があるとの考えを示した。
また、今後の課題としては、ICT(情報通信技術)、AI(人工知能)の技術革新等により、医療の提供の形も急激に変化する可能性があることを踏まえて、医師の需給バランスを定期的に検証し、見直すことができるような法整備等を挙げ、その実現を求めた。