埼玉県医師会では、平成26年10月から、耳鼻咽喉科の休日救急診療を実施している。
休日や夜間に耳鼻咽喉科を救急で受診する場合、埼玉県内では対応可能な医療機関が極端に少なく、救急隊や救急患者自身が受診先を探すことに苦慮していた。
県医師会が24時間体制で実施している「救急医療機関の電話案内」においても、長年にわたり耳鼻咽喉科が「案内できない診療科目」のトップであった。
そこで、県民の救急医療に対するニーズに応えるため、県と協力しながら、日曜・祝日・年末年始の午前9時から午後5時まで、耳鼻咽喉科の救急診療を始めた。
現在は、県内を東西2地区に分けて診療所を中心とした在宅輪番制で初期救急を実施するとともに、診療所では対応できない重症患者のために、大学病院などによる二次救急医療体制も併せて整備している。
都道府県単位で耳鼻咽喉科に特化した救急を行っているケースは少なく、初期救急と二次救急の双方を実施しているケースは更に少ない。
平成27年度は、72回の診療を実施し、3275人が初期救急を受診した。このうち42人が重傷のために二次救急に送られ、うち20人は入院が必要であった。
年齢層別の患者数は、0~9歳38・4%、10~19歳9・9%、20~29歳11・6%、30~39歳15・4%、40~49歳10・5%、50~59歳5・7%、60~69歳4・6%、70~79歳3・1%、80歳以上1・0%であり、受診者の約半数は子どもであった(図1)。
疾患別の患者数は、①急性中耳炎29・7%②咽頭疾患13・6%③副鼻腔炎疾患12・0%④外耳炎疾患6・3%⑤鼻・外耳・咽頭異物3・8%であり、急性中耳炎が3分の1を占めている(図2)。
本事業の実施により、それまで患者が集中していた大学病院等の数少ない受け入れ機関の負担が減っている。前述のとおり、患者の多くは軽症患者であるため、高次救急医療機関は本来の役割に集中できるようになったと言える。
埼玉県は、人口当たりの医師数が全国最下位であるなど、医療供給体制は厳しい状況にあるが、県民の命を守る救急医療については、工夫と情熱により、更に充実したものにしていきたい。