本年4月から「日医かかりつけ医機能研修制度」が開始されたことを受けて、会員の先生方からは、数多くの質問が日医に寄せられています。そこで、本号では、改めて本制度の仕組みをご紹介します。
1.本研修制度の目指すものは何ですか。
わが国では多くの医師が、それぞれの深い専門性を有した上で自ら研鑽(けんさん)を積み、幅広い視野の下に患者さんと地域に寄り添うかかりつけ医として日々診療に当たっています。そして、専門性、診療の領域、診療の場を超えたかかりつけ医の役割が、患者さんのさまざまなニーズに合致し、わが国の医療制度を支える大きな柱になっていると考えています。
本年4月からスタートした「日医かかりつけ医機能研修制度」は、こうしたかかりつけ医の役割、つまり、かかりつけ医機能を充実・強化することに主眼を置いた研修制度として創設しました。
一方、今後、新たな専門医制度の一環として総合診療専門医の養成が開始されることもあり、地域医療を担う先生方からは、かかりつけ医と総合診療専門医の関係について、不安の声が上がっていることも事実です。
日医としては、総合診療専門医は、あくまで学問的な位置付けであり、将来、総合診療専門医の資格を持った先生方も、地域医療を実践する際には本研修制度を受講して頂きたいと考えています。
かかりつけ医は、専門医制度全てを包含した幅広い概念です。そのため、かかりつけ医は資格制度とは別の概念として、日医がその育成や質の向上に取り組み、先生方からの不安の声に対しては、このようなかかりつけ医機能の強化を進めていく中で解消していくことが必要であると考えています。
2.改めて、本研修制度の研修内容を教えて下さい。
本研修制度は、ご案内のとおり、基本研修・応用研修・実地研修の3つの研修から構成しています。基本研修の要件は、日医生涯教育認定証を取得すること、応用研修の要件は、規定の座学研修を受講し10単位以上を取得すること、実地研修の要件は、規定の地域における活動を2つ以上実施することです。
詳細については、日医ホームページ内に本研修制度の専用ページ(/doctor/kakari/)を立ち上げましたので、そちらをご参照頂ければ幸いです。
なお、本研修制度は、日医が行うかかりつけ医の認定制度ではなく、本研修制度の実施を希望する都道府県医師が実施主体となり、修了者には、各都道府県医師会のご判断により、修了証書または認定証が発行される研修制度です。
ご所属の都道府県医師会が本研修制度を実施しているか、修了者には修了証書、認定証のどちらが発行されるのかなどの詳細については、ご所属の都道府県医師会にご照会下さい。
日医かかりつけ医機能研修制度 平成28年度応用研修会プログラム(案)
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3.応用研修はどのように受講するのですか。
応用研修の単位取得方法としては、①医師会が主催する本研修制度の応用研修会を受講する②日医が規定する関連する他の研修会を受講する─の2つの方法があります。
①の受講は必須としており、日医では本年5月に別掲の内容で応用研修会の中央研修を開催します(日医会館での受講申し込みは4月28日で終了しています)。各都道府県医師会には、テレビ会議による中央研修の同時中継や、後日同様の研修会の開催をお願いしておりますので、受講等につきましては、ご所属の都道府県医師会にご照会下さい。
また、②の関連する他の研修会としては、現在、「地域包括診療加算・地域包括診療料に係るかかりつけ医研修会(当該研修会に準ずる研修会含む)」と「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を位置付けており、こうした研修の受講によっても本研修制度の応用研修の単位として認めることとしています。
なお、日医が主催する「平成28年度 地域包括診療加算・地域包括診療料に係るかかりつけ医研修会(仮称)」は、本研修制度の応用研修会とは別に開催いたしますので、詳細が決まり次第、都道府県医師会を通じてご案内させて頂きます。
4.修了要件を全て満たした後の申請方法について教えて下さい。
基本研修・応用研修・実地研修の全ての修了要件を満たした先生は、下記の規定の申請書等の提出書類をご用意頂き、受付期間内にご所属の郡市区医師会を通じて修了申請を行って頂くことになります(都道府県医師会によっては、申請手順が異なる場合もありますので、ご注意下さい)。
修了申請の受付期間は、原則として毎年12月から翌年1月の2カ月間です。本研修制度の修了確認ができた先生には、修了申請を行った翌年度の4月1日付で、都道府県医師会より修了証書または認定証が交付されます。
修了証書または認定証は、これらを院内掲示することなどにより、その医師が地域のかかりつけ医として活動し、研鑽(けんさん)を続けていることを示すものとなり、かかりつけ医に対する地域住民からのより一層の信頼にもつながるものと考えています。また、まだかかりつけ医をお持ちでない地域住民の方々にとっては、かかりつけ医を持つ1つのきっかけになるのではないかとも考えています。