深呼吸をしましょう
腹式呼吸は人間の理想的な呼吸
人間にとって理想的な呼吸は「赤ちゃんの呼吸」だといわれています。赤ちゃんをよく見ていると、お腹を上下に波打つように動かし、ゆったりと深い「腹式呼吸」をしていることがわかります。
そしてまた、声量が求められるオペラ歌手や舞台俳優も、腹式呼吸を用いています。安静時、1回の呼吸量はおよそ500~600ミリリットルですが、歌や芝居ではその3倍も必要とします。「声は腹から出せ」「声帯は喉ではなく横隔膜にあると思え」などと教えられるそうですが、これは発声の基本が呼吸法にあることを示しています。
十分に酸素を取り込もう
日本人は元来、腹式呼吸をしていたと考えられています。田畑を耕したり、御輿を担いだりといった動きは、腹の底まで息を吸い、ぐっと止めて吐くという呼吸でなければこなせません。また、武道や舞などの腰がすわった姿勢も、腹式呼吸ならではのものといわれます。
ところが、現代人はふだん胸の上部だけ使った浅い呼吸(胸式呼吸)をしがちなうえ、ストレスなどによって呼吸がさらに浅くなりやすいことから、慢性的な酸素不足が指摘されています。
その酸素不足を解消してくれるのが腹式呼吸です。
横隔膜を下に押し下げることで胸郭を広げ、ふだんはあまり使われていない肺の下部にまで空気を送り込みます。酸素がからだの隅々にまで行き渡るので血行がよくなり、筋肉の緊張がほぐれて気分が落ち着きます。また、横隔膜が動くことで腹部の内臓が刺激され、活発に働くようになります。
心地よい腹式呼吸を目指そう
人の1日の呼吸回数はおよそ2万~2万5,000回。80歳まで生きると6億~7億回という気が遠くなるほどの呼吸を繰り返していることになります。この1回ごとの呼吸を「赤ちゃんの呼吸」、すなわち腹式呼吸にできれば、しらずしらずにからだの機能も活発になりそうです。ただし、無理は禁物。息苦しさやめまいを感じるほどではなく、やっていて心地よい範囲で試してみるのがいちばんのポイントです。