禁煙を決意したとしても、「口さみしさをどう埋めたらよいのか」「仕事のイライラの解消法が分からない」などの不安や心配から禁煙をあきらめてしまう人がいます。しかし、たばこをやめれば、健康になり、味覚や嗅覚もよくなるだけでなく、たばこを吸う場所を探す必要がなくなり、金銭的な余裕も生まれます。
喫煙者の多くは「禁煙はつらくて苦しいもの」と思っているかもしれませんが、それは大きな間違いです。医師と一緒に取り組めば、比較的楽に、より確実に、しかも費用もあまりかけずに禁煙できますから、まずはご自身のかかりつけ医に相談してみてください。
最近は、禁煙外来を設けた医療機関も増えていますし、内科や循環器科、心療内科、婦人科など、さまざまな診療科でも禁煙治療が受けられます。
禁煙を始めて2、3日はニコチン切れのイライラやストレスなどの離脱症状が現れますが、医療用禁煙補助薬(飲み薬や貼り薬)を使うことにより、離脱症状を和らげることができ、禁煙治療の成功率は7〜8割15)といわれています。
また医療用禁煙補助薬はなくても医師や看護師が、一人ひとりに合ったアドバイスをしてくれるため、禁煙治療を成功に導きます。
15)中央社会保険医療協議会: 診療報酬改定結果検証に係る特別調査(平成21年度調査)
ニコチン依存症管理料算定保健医療機関における禁煙成功率の実態調査報告書
健康保険で治療を受けるには、自らが直ちに禁煙をしたいと望んでいること、スクリーニングテストでニコチン依存症と診断された人など、いくつかの条件が必要になります(2016年4月から高校生など未成年者も対象)。治療期間は12週間に5回の通院です。費用は個々の治療条件によりますが、おおむね1日のたばこ代より安い金額で、自分だけでなく、周りの人の健康にも貢献できます。
*対面もしくはオンライン診療の選択可
※1 加熱式たばこのみの使用者でかつ呼気一酸化炭素濃度検査の上昇がみられなかった喫煙者については、最新での呼気一酸化炭素濃度検査の省略可
※2 患者の同意があれば初回から5回目までの一連の診療報酬を、初回に一括計上する仕組みも導入された
日本循環器学会:禁煙治療のための標準手順書第8版より作図
禁煙外来のカウンセリングでは、患者さんそれぞれの性格や健康状態、生活に合わせた自己管理法やたばこを吸いたくなった時の対処法、喫煙を再開しやすい状況の予測や回避の仕方など、実践的なアドバイスをしています。こういった心理療法に加えて、薬物療法を併用することで、さらに効果を上げています。
禁煙の足を引っ張るのは、脳に刻まれた「たばこがおいしかった」という記憶ですが、禁煙補助薬を使うとたばこをまずく感じるようになり、心の依存からも楽に離れることができます。
(日本禁煙学会ホームページより)
禁煙治療に成功しても喫煙を再開してしまう人もいます。そこで、禁煙外来の診療に加えて、治療を助けるスマートフォンのニコチン依存症治療用アプリが開発され、2020年12月に健康保険の適用になっています。
禁煙治療用アプリを使う治療では、受診しながら、処方された一酸化炭素濃度測定器(モバイルCOチェッカー)を使って自宅で呼気を測定します。測定結果はスマートフォンに自動で記録され、治療を進めます。さらに、たばこが欲しい時に「ナースコール」をタップすると自動応答チャット機能でアドバイスや励ましを受けられます。
禁煙に失敗した人も、こうしたアプリや各WEBサイトの成功例なども参考にしてもう一度チャレンジしてみませんか。