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令和6年(2024年)4月5日(金) / 南から北から / 日医ニュース

いまどき「携帯」事情

 年末に実家に帰った時に祖父と話をしていた子どもからの一言。「おじいちゃんって、スマホ無いのにどうやって世の中のことを知るの?」と。
 最初、言っている意味が分からなかった。実家では今でも、情報は新聞とテレビから得ている。しかし、よく考えてみたら、うちにはだいぶ前からテレビが無い。子どもは今高校1年生だが、テレビを見ていたのは幼稚園くらいまで。私もテレビから、PCでYouTubeなどの動画サイトを見たり、Webでニュースを見るようになり、テレビはほぼ見ることはなくなった。引っ越しを機にテレビはしまったままである。新聞も引っ越し後は取らなくなった。
 そんなこともあり、子どものスマートフォンの使い方に興味を持った。意識してみると、とにかく朝から晩まで常にスマートフォンを見ている。PCゲームをしている時ですら、スマートフォンで動画を鑑賞している。見ている動画は、YouTubeショートやTikTokなど数十秒で終わる動画である。ゲームの合間に動画を見る。最初の数秒見て面白くなければすぐ次の動画へと目まぐるしく画面が移り変わる。そして、ゲームがスタートすると、またゲームに戻りを繰り返している。
 何も言わなければそのまま数時間、それを延々繰り返している。ゲーム画面も私が昔していたような単純な絵柄ではなく、現実さながらの立体的で奇麗な画面で、得られる情報量は桁違いだ。
 使用するコントローラーも、昔ながらの十字キーとA、Bボタンではなく、レバーやボタンがたくさん付いているものだ。視覚、聴覚、触覚をフルに使い、短期間に膨大な情報処理を常に繰り返している。まさに情報の洪水の中で暮らしている感じである。ついていけていない親から見ると、これで本当に楽しいのだろうかという気にもなる。
 情報の取得の仕方も子どもと私とは違うようだ。私の場合はせいぜいYahooのニュースサイトを見る、あるいはGoogle検索サイトで調べる程度である。ニュースサイトに至ってはテレビをぼんやりと見ているのとあまり変わらない。
 子どもの場合はTwitterやInstagramといったSNSを駆使し、自分の必要な、というか興味のある情報を能動的にかつ効率的に手に入れる。自分の好きな分野については詳細な情報を持っている。
 その反面、驚くほど世事に疎かったりする。こんな様子を見ていると、今後の情報の担い手がマスコミから、YouTuberやVTuberといった多様な情報を提供するインフルエンサーに移り変わっていくのだろうかとそんなことを考えてしまった。
 そういえば、私はスマートフォンのことをつい「携帯」と言ってしまう。自分の母親がゲーム機は何でも「ぴこぴこ」と言っていたのをちょっと思い出してしまい、自分も年を取ったものだと実感するこの頃である。

滋賀県 滋賀県医師会報 第899号より

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