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令和5年(2023年)11月20日(月) / 日医ニュース

各医会の取り組み発表を基に議論

各医会の取り組み発表を基に議論

各医会の取り組み発表を基に議論

 第29回日本臨床分科医会代表者会議が10月26日、都内で開催され、日本医師会から釜萢敏常任理事が出席し、菅原正弘日本臨床内科医会長を始め、出席した各会の代表者らと意見を交わした。
 日本医師会では、医療をめぐるさまざまな課題について共に考え、共に協力して対応していくことを目的として、本会議を毎年度2回開催しているが、今回が今年度一回目の会議となった。
 冒頭、あいさつした釜萢常任理事は、(1)日本専門医機構における専門医のあり方、(2)HPVワクチンのキャッチアップ接種の推進―について言及。(1)では、これまで各学会が担ってきた役割への評価が十分に行われていないとの認識を示し、日本専門医機構の理事として、専門医認定の進め方を注視していく意向を示した。
 また、(2)では、診療科を問わず、期間中のワクチン接種を進めていくことの意義を強調した上で、「日本産婦人科医会を始めとする各会の取り組みにより、かなりの進展を見せているものの、キャッチアップ期間の周知がまだ十分とは言えない」として、引き続きの協力を求めた。
 その他、今後の医師養成数については「極めて重要な問題であるが、厚生労働省の『医師需給分科会』における議論が滞っている上に、地域枠を中心とした臨時の定員増の名の下、今後の人口動態に見合わない数の医師が養成されている」として、若年人口が減少する中で、各会の協力の下、これらの問題についても対応していく考えを示した。

13医会から取り組みの発表

 続いて、13の医会から、各会で注力していることや問題となっていること等について、それぞれ発言がなされた。
 白根雅子日本眼科医会長は、緑内障に主眼を置いた眼科検診の啓発や、コロナ禍を経て増加した子どものスクリーンタイムの増加や近視に関する問題について言及した。
 万代恭嗣日本臨床外科学会長は、若手医師の外科手術の技術向上を支援するため、長年にわたり国内外科研修プログラムを実施していることなどを紹介した。
 石渡勇日本産婦人科医会長は、いつ、どこで起きるか分からず、要する時間の個人差も大きいという分娩の特徴を指摘した上で、年々分娩件数が減少していることや、分娩の無料化を目指した保険化に係る議論に触れ、クリアすべき課題は多いとした。
 福與和正日本臨床耳鼻咽喉科医会長は、会員の老齢化や勤務医の処遇改善、セカンドキャリアの他、認知症予防には難聴及び軽度嚥下(えんげ)障害への早期対応が効果的であることなどを紹介した。
 伊藤隆一日本小児科医会長は、コロナ禍を経て、子どもの自殺や不登校といった重大問題が増加傾向にあることを問題視するとともに、小児科においても医薬品不足が深刻な影響を及ぼしていることなどを報告した。
 奥村栄次郎日本臨床整形外科学会副理事長は、全世代における運動器障害対策を重要視していることを説明。特に高齢者においては、運動機能の低下は介護状態につながることが多く、注意が必要との考えを示した。
 三木和平日本精神神経科診療所協会長は、来年に設立50周年を迎えるに当たり、「日本外来精神医学会」を設立し、厚労省によると600万人と言われる国内の精神科患者や、30万人の入院患者への対応を進めていることを説明。その他、コロナ禍を経て、特に女性と若年者層において自殺者が増加に転じたことを憂慮(ゆうりょ)した。
 嘉山孝正日本臨床脳神経外科協会理事長は、25年前の創設以来、脳神経外科医の生涯教育、地域連携の構築、医学政策の提言などに努めてきたことや、デフレ下において実質据え置かれてきた診療報酬について、物価高騰を反映した引き上げが必要との認識を示した。
 清原久和日本臨床泌尿器科医会長は、昨今の医薬品問題に言及。「ある程度の薬価を付けなければ薬が無くなる」と問題視するとともに、尿道カテーテルで逆ざやが起きていることを指摘した。
 江藤隆史日本臨床皮膚科医会長は、11月12日を「皮膚の日」と定め、皮膚科の啓発活動、特に高齢者の帯状疱疹の周知に注力していることを報告。その他、皮膚科医である松本吉郎会長と対談を行ったことに触れ、若い開業医による在宅医療、学校保健等地域医療への関わりが重要との認識で一致したことを紹介した。
 山田惠日本放射線科専門医会・医会理事長は、世界的な傾向である放射線科の医師不足について説明した他、1950年代に広く推奨されたレントゲン撮影時の性腺防護処置について、X線装置の進歩により有用ではなくなっていることに関して医療従事者、患者双方に周知・啓発していくことが必要との考えを示した。
 武田純三日本麻酔科医会連合代表理事は、宿日直・当直に係る医師の働き方改革への対応や、専門医制度におけるシーリングの問題について、関係省庁と話し合いを進めていることの他、「歯科医師の医科麻酔科研修受け入れ」の経緯などについても説明した。
 菅原日臨内会長は、月例のWEBセミナーや臨床研究、産業医向け座談会などを実施していることを紹介。その他、新型コロナウイルス感染症の5類移行後の患者対応や、在宅医療及び介護が今後の大きな課題との認識を示した。
 総括を行った菅原会長は、総じて医薬品不足が医療界に大きな影響を及ぼしていることや、医師の地域偏在及び診療科の偏りの問題に触れるとともに、特にHPVワクチンのキャッチアップ接種についての問題意識を強調。通院している祖父母、父母から接種を勧めてもらう内容のリーフレットを日臨内のホームページからダウンロードできるので、他科の医師からも診療時に患者に手渡して貰うよう呼び掛けた。更に、子宮頸がんに罹患(りかん)する患者の多くはワクチン未接種であることを指摘し、一命は取り留めても、妊孕(よう)性に影響を与える子宮頸がんを撲滅する必要性があるとして、その対応の強化に努める必要性を訴えた。

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