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令和5年(2023年)11月5日(日) / 日医ニュース

「有事の医師会活動 ~地域、住民を守る活動~」をテーマに開催

「有事の医師会活動 ~地域、住民を守る活動~」をテーマに開催

「有事の医師会活動 ~地域、住民を守る活動~」をテーマに開催

 「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」第1回シンポジウムが10月11日、「有事の医師会活動 ~地域、住民を守る活動~」をテーマに、日本医師会館大講堂とWEB会議のハイブリッド形式により開催された。
 本シンポジウムは、地域にどっぷりとつかり地域住民の健康を守るべく、各地の医師会が行っている活動を広く国民に知ってもらうことを目的に立ち上げた「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」の取り組みとして、初めて行われたものである。
 当日は、渡辺弘司常任理事の司会により開会。冒頭、あいさつした松本吉郎会長は、シンポジウム開催の趣旨について、「各地域の医師会活動にスポットを当て、広く国民に知ってもらうとともに、勤務医など若手医師にも実際の医師会活動を知ってもらうことが、今後の日本の地域を支えることにつながると考えた」と説明。「地域医療を一番支えているのは地域医師会である」として、今後も地域で頑張っている医師会活動を支えていく考えを示した。

第1部:大規模災害時の医師会活動

 第1部では、まず、座長の村上美也子富山県医師会長が地域医療を支える医師会活動を紹介した上で、「1人の医師が行う活動には限界があるが、さまざまな専門性を持つ多くの医師が医師会活動に参加し、分担・連携することで地域を面として支えていることを知ってもらいたい」と述べた。
 また、日頃から地域での連携を図っておくことが災害などの有事において自分の地域を守り、更に、他の医師会を支援する活動にもつながるとして、富山県医師会のJMAT活動等をその実例として紹介した。
 続いて、長谷川傑市立秋田総合病院救急科長は、「平時からの顔の見える関係づくりと有事対応~医師会とDMATとの架け橋として~」と題して、今年7月の秋田豪雨災害の際の対応として、(1)孤立している病院のフォローアップ(秋田県保健医療調整本部)、(2)停電等により食事提供不能となった慢性療養病棟の患者の避難(DMATと陸上自衛隊)、(3)保健所からの情報を基に医院の被害状況等の確認(医師会)―を行ったことを説明した他、8医療圏内で最も避難所が多い秋田市内の避難所のアセスメント遅延に対しては、DMATとJMATを派遣して健康被害の発生を予見する活動を行ったことを発表。更に、今回、先達(せんだつ)の秋田県災害医療コーディネーターが築いてきた医師会との橋渡し機能が、県医師会と関係者との早急な連動につながったことを紹介し、「災害、緊急時ほど、コミュニケーション能力が問われることになるため、日頃からの意思疎通が極めて重要になる」と指摘した。
 次に、山田和彦前人吉市医師会副会長が、「被災した自地域を守り、再建を支える立場より―コロナ禍で最初の災害対応―令和2年7月豪雨災害での経験から その時私たち地元医師会は何を考えどう行動したか?」と題して、被災地医師会として、熊本県医師会や県内唯一の中核病院であるJCHO人吉医療センター、保健所と共に活動を開始し、避難者の医療や健康上の不安の解消に努めるとともに、診療可能な医療機関情報の把握や医療機関と薬局との連携調整を図ったことなど、発災直後からの医師会の活動を報告。人吉・球磨医療圏保健医療調整本部を立ち上げる準備段階から地元医師会が参画したことが、スムーズに活動できた要因との見方を示した。

第2部:新型コロナウイルス感染症対応

 第2部では、座長の八田昌樹兵庫県医師会長が、診療・検査医療機関での発熱外来診療体制の整備・拡充等を行ったことなど、コロナ禍における地域医師会の対応を報告。第8波の年末年始においては、自院でコロナ対応ができない医師も、休日夜間急患診療所等で発熱外来に参画したことや「COVID―19JMAT」で多くの医療従事者が活動したこと等に触れた。
 また、兵庫県では、「医療強化型宿泊療養施設」としてホテルを活用し、医療従事者に対して感染対策研修を行うとともに、マニュアルを作成して医療の標準化を図ったことなどを紹介した。
 続いて、迫村泰成新宿区医師会在宅ケア介護保険委員会委員長が、「地区医師会からの発信に地域が呼応する~新宿モデルで新型コロナに向き合う~」と題して、国立国際医療研究センターにPCR検査スポットを設置し、病院、医師会、行政が連携し、迅速に対応を行った「新型コロナウイルス感染症医療提供新宿モデル」や、インフルエンザの感染拡大をリアルタイムに可視化する「新宿区医師会 インフルエンザWeb」を発展させた「東京都医師会 コロナインフルエンザWeb」により、感染症の地理的マッピングを行ったことを紹介。「コロナ対応は、既存の地域包括ケアシステムを問い直し、地域医師会からの声により行政を動かし、地域住民を守る体制につながった」と述べた。
 次に、小林正宜KISA2隊大阪隊長が「若手医師会メンバー発、医師会と共に『超連携』を活かしたコロナ禍での挑戦~KISA2隊の軌跡と奇跡、そして未来に向けたビジョン紹介~」と題し、講演。「KISA2隊大阪」は「KISA2隊京都」の呼び掛けで6診療所の若手医師により立ち上げられ、大阪府医師会の医療チームとして自宅療養支援のスキームのバックアップを受けながら、医師会、保健所、行政など多職種との強力な連携により、往診やクラスター施設支援を行ったことなどを報告。その後は、コロナ感染で食事困難者への支援を行う「ほほえみ届け隊」や、地域の子どもに対する支援を行う「子ども応援部隊」なども結成し、さまざまな活動を行っているとした。
 また、今後についてはアフターコロナの取り組みとして、「KISA2隊ケニア」の設立や生野区医師会の新型コロナ対策の連携ネットワーク「イクコロ隊」を、平時の地域医療介護問題のネットワークに進化させる意向を表明。「コロナ禍で培った多機関・多職種・多地域・多世代での超連携によって、アフターコロナにおける地域医療の課題を解決していく」との姿勢を示すとともに、「医師会活動の起爆剤になれるような志を持って活動していきたい」との思いを述べた。
 その後のディスカッションでは、黒瀨巌常任理事が司会を務め、フロアを交えて演者と座長による活発なディスカッションが行われ、最後に茂松茂人副会長が、「本日紹介のあった医師会活動を通して、有事、平時共に国民と地域を守るためには、地域包括ケアシステムの連携の重要であることが明らかになった」と総括し、シンポジウムは終了となった。

お知らせ
 「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」第1回シンポジウムの動画は、日本医師会公式YouTubeチャンネルに掲載しています。日本医師会ホームページに設置されている本プロジェクトの特設サイトと併せて、ぜひ、ご覧下さい。

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https://www.youtube.com/watch?v=KVXV3ZNET7Q

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