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令和5年(2023年)9月20日(水) / 日医ニュース

「令和6年度 医療に関する税制要望」まとまる

 日本医師会はこのほど、「令和6年度 医療に関する税制要望」を取りまとめ、厚生労働省に要望を提出。併せて、9月6日には宮川政昭常任理事が定例記者会見でその内容を説明した。
 本要望は、日本医師会医業税制検討委員会で検討が行われ、8月8日開催の令和5年度第14回常任理事会で決定したものであり、別掲の10項目で構成。社会保険診療等に係る消費税制度の見直しや医業承継時の税制措置、事業税の特例措置の存続に加えて、新興感染症対応、災害への備え、地域医療構想の実現といった政策目的に対応する税制措置の要望が盛り込まれている。
 1の社会保険診療等に係る消費税制度については、「診療所においては非課税のまま診療報酬上の補てんを継続しつつ、病院においては軽減税率による課税取引に改めること」を要望。昨年度の要望では、「小規模医療機関等」は非課税のまま診療報酬上の補てんを継続、「一定規模以上の医療機関」は軽減税率による課税取引としたが、今年度の要望では「診療所」と「病院」とし、具体的な線引きを行った。
 2の医業承継時の相続・贈与に関する税制措置では、医療法人の出資に係る相続税及び贈与税の納税猶予制度の創設を始めとする五つの項目を掲げている。3では、地域において医療機関が果たす公共的な役割を踏まえ、地方税たる事業税の特例措置の存続を強く求めている。
 4の新興感染症対応に関する税制措置については、改正感染症法等により導入される流行初期医療確保措置に係る収入に対する事業税の非課税措置や、救急医療等確保事業に新興感染症対応が追加されることに伴う社会医療法人の非課税要件の見直しを新規要望として掲げた。
 5では、災害に備えた医療機関の強靭(きょうじん)化を支援するため、医療機関が取得した耐震構造建物、防災構造施設・設備等に係る税制上の特例措置創設等を要望。また、6では、地域医療構想の実現に向けた再編計画に沿って取得した土地・建物について、不動産取得税を2分の1に軽減する措置の延長等を挙げている。
 7の医療の高度化や医療提供体制の確保に資する設備に関する税制措置では、現在の医療用機器等の特別償却制度の拡充等に加えて、医療DXへの対応及び省エネルギー化に資する設備投資等に関する税制措置(即時償却又は10%の税額控除)を新規に要望。
 9の社会保険診療報酬の所得計算の特例措置(いわゆる四段階税制)については、小規模医療機関の経営安定と地域医療確保のために、引き続き存続を強く要望し、10では、公益法人等に所要の税制措置を講ずることを要望した。
 今後は年末の「令和6年度税制改正大綱」決定に向けて、本要望実現のため政府与党などへの働き掛けを強化していくこととしている。

令和6年度 医療に関する税制要望

令和5年8月
公益社団法人日本医師会

1 社会保険診療等に係る消費税制度の見直し
社会保険診療等に係る消費税について、診療所においては非課税のまま診療報酬上の補てんを継続しつつ、病院においては軽減税率による課税取引に改めること
―消費税―

2 医業承継時の相続・贈与に関する税制措置
(1)医療法人の出資に係る相続税及び贈与税の納税猶予制度の創設
(2)医療法人の出資の評価方法の改善
(3)基金拠出型医療法人における負担軽減措置の創設等
(4)認定医療法人制度に係る税制措置の拡充
(5)出資額限度法人の持分の相続税・贈与税課税の改善
―相続税・贈与税・所得税―

3 医療機関に対する事業税特例措置の存続
(1)社会保険診療報酬に係る事業税非課税措置の存続
(2)医療法人の社会保険診療報酬以外の部分に係る事業税軽減措置の存続
―事業税―

4 新興感染症対応に関する税制措置
(1)流行初期医療確保措置に係る収入に対する事業税非課税措置等
(2)救急医療等確保事業への新興感染症対応(6事業目)の追加に伴う社会医療法人に対する税制措置の拡充
(3)社会医療法人・認定医療法人等の認定要件等における補助金収入の取扱いの見直し
―法人税・相続税・贈与税・事業税・固定資産税・不動産取得税等―

5 災害に備えた医療機関の強靭化を支援するための税制措置
(1)医療機関が取得した耐震構造建物、防災構造施設・設備等に係る税制上の特例措置創設
(2)中小企業防災・減災投資促進税制について医療法人等の非営利法人を適用対象に加えること
―所得税・法人税・固定資産税・不動産取得税―

6 地域医療構想の実現に資する設備に関する税制措置
(1)地域医療構想実現に向けた再編計画に係る不動産取得税軽減措置の延長
(2)構想適合病院用建物等に係る特別償却制度について、税額控除の導入、特別償却率の引き上げの措置を講ずること
―所得税・法人税・不動産取得税―

7 医療の高度化・医療提供体制の確保に資する設備に関する税制措置
(1)医療機関における医療DXへの対応及び省エネルギー化に資する設備投資等について、即時償却又は税額控除(10%)を選択適用できる措置を講ずること
(2)医療用機器等の特別償却制度について、中小企業経営強化税制と同等の措置が受けられるよう、以下の措置を講ずること
 ①医療用機器の特別償却制度について、適用対象となる取得価額を160万円に引き下げ、10%の税額控除又は即時償却の選択適用
 ②勤務時間短縮用設備等に係る特別償却制度について、税額控除の導入、特別償却率の引き上げの措置
(3)中小医療機関の設備投資を支援するため、以下の①又は②のいずれかの措置を講ずること
 ①中小企業経営強化税制の対象設備に、医療保健業の用に供する医療用機器及び建物附属設備を追加
 ②①と同等の新たな税制措置を創設
(4)医療用機器について、(2)①の措置と(3)の措置の選択適用ができるようにすること
(5)病院・診療所用建物の耐用年数の短縮
―所得税・法人税―

8 医療機関が取得する償却資産に係る固定資産税についての所要の税制措置
(1)医療機関における医療DXへの対応及び省エネルギー化に資する設備投資について、一定期間の固定資産税の非課税措置を講ずること
(2)生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置について医療法人等の非営利法人を適用対象に加えること
(3)医療機関が取得する新規の器具・備品や建物附属設備などの償却資産の投資に係る固定資産税軽減措置を全国一律の要件で適用する措置として講ずること
(4)固定資産税の償却資産の申告期限を法人税申告期限と統一すること
―固定資産税―

9 社会保険診療報酬の所得計算の特例措置(いわゆる四段階税制)存続
―所得税・法人税―

10 公益法人等に関する所要の税制措置
(1)医師会について
開放型病院等の法人税非課税措置の拡充、開放型病院等の固定資産税等非課税措置の恒久化、その他の措置
(2)一定の医療保健業を行う非営利型法人等に係る固定資産税等軽減措置及び公益目的事業として行う医療保健業に係る固定資産税等軽減措置
―法人税・固定資産税・不動産取得税・登録免許税―

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