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令和5年(2023年)7月20日(木) / 日医ニュース

コロナ後の世界

 3年間のコロナ禍は、「人流の制限」や「ロックダウン」により、人間同士の直接的なコミュニケーションの制限を強いた。一方、この間にデジタル化とAI化が一挙に進歩し、医療の分野ではオンライン診療、会議や学会はWEB参加が当たり前となった。利用者にとって便利なデジタル化は働き方改革にもなり、欠かせない存在と言える。
 ペストと宗教改革、コレラと産業革命など、過去のパンデミックが歴史的転換点となっているように、コロナによってもたらされた新たな生活様式や価値観の変容は、新しい正常な日常を生み出す引き金となる。コロナ以前の過去を懐かしがり、元に戻るのは時代の流れに逆行するものであり、コロナから何も学んでいないことになる。
 国やメディアから、コロナ感染の不安な情報が一方的に、繰り返し流されると、人々の心理状態は一つの方向に向き始め、偏った情報に疑問を持ち正しい判断をするのが難しくなる。個人の自由よりも集団の論理を優先させ、多様な意見や批判的思考が認められなくなる風潮が世界中で進行しているのが、危惧される。
 バブル崩壊後の日本の貧困化が、特に近年加速している。30年にも及ぶ賃金や物価の停滞と最近の円安の影響もあり、いつの間にか諸外国に比べて経済的地位は低下し、日本の国力は凋落(ちょうらく)の一途をたどっている。莫大な財政赤字や金融緩和策に加えて、コロナ後に残る莫大な過剰債務は、インフレや増税のリスクと相まって、コロナ後の日本の将来に大きな障壁として立ちはだかっている。
 日本人は政治に概して無関心であり、政治に対する期待が低い傾向があるが、進化した正常な未来を目指すためには、自分の頭で考えて意見を持ち、主張と行動を続けることが、この歴史的転換点に生きる我々には必要である。

(文)

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