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令和3年(2021年)10月20日(水) / 日医ニュース

岸田新内閣の発足を受けて

日本医師会定例記者会見 10月6日

岸田新内閣の発足を受けて

岸田新内閣の発足を受けて

 中川俊男会長は10月4日に岸田新内閣が発足したことを受け、各閣僚へのメッセージを述べた上で、新型コロナウイルス感染症対策や社会保障の充実に期待感を示すとともに、コロナ禍における菅前内閣の奮闘に感謝の意を示した。

「岸田4本柱」に全力で協力

 岸田文雄内閣総理大臣に関しては、10月4日の就任会見で、医師、看護師、介護士等、社会の基盤を支える現場で働く人々の所得向上に向け、公的価格のあり方の抜本的見直しを行うと明言したことに対し、「日本医師会の考える方向性と同じであり、社会保障の充実によって国民の安心を取り戻すことで経済の好循環が実現するよう、協力していきたい」と強調。また、コロナ対策として掲げられていた「岸田4本柱」(①医療難民ゼロ②ステイホーム可能な経済対策③電子的ワクチン接種証明の活用と検査の無料化・拡充④感染症有事対応の抜本的強化)についても全力で協力するとした。
 その上で、岸田総理が2006年に衆議院厚生労働委員長、2017年に自民党政務調査会長、「人生100年時代戦略本部」の本部長を務めるなど、社会保障政策に造詣(ぞうけい)が深いことから、引き続き医療界への力添えを要望した。
 後藤茂之厚生労働大臣に対しては、「衆議院厚生労働委員長を務められ、厚生労働行政に精通されているだけでなく、税制にも造詣が深く、かねてよりお世話になっている」と述べ、「厚労大臣として、医療の安全・安心をしっかり守って頂けるものと大変心強く思っている」と期待を寄せた。
 堀内詔子ワクチン接種推進担当大臣に対しては、厚労大臣政務官や自民党厚生関係団体委員長を務めるなど、厚生関係でさまざまな貢献をされていることに触れ、「喫緊の課題である、医療従事者への3回目のワクチン接種を円滑に行って頂けることを期待している」と述べた。
 山際大志郎経済再生担当大臣に対しては、「獣医師でもあり、生命科学に造詣が深いと伺っている。新型コロナ対策・健康危機管理、全世代型社会保障改革も担当されるが、新型コロナウイルス感染症は依然として予断を許さない状況にあり、我々医師会も全力で対応に当たる」として、一刻も早い収束に向けて協力する意向を示した。
 鈴木俊一財務大臣に対しては、「自民党社会保障制度調査会長、衆議院厚生労働委員長、厚生政務次官などを歴任され、私も緊密に意見交換をさせて頂いてきた。2007年には、『国民医療を守る全国大会』における国会議員代表としてのあいさつで、『国民本位の国民皆保険、フリーアクセスを維持できるよう頑張っていきたい』とのお言葉を頂いた」と紹介。社会保障においてバランスの取れた負担と給付が成り立つよう、建設的な協議をしていきたいとの考えを示した。
 野田聖子内閣府特命担当大臣に対しては、「少子化や子ども政策を担当されるが、本会とも関係の深い自見はなこ参議院議員は、あらゆる家庭で子どもを安心して産み育てられる社会の実現のため、『こども庁』の創設に向けて取り組んでおり、少子化対策はこうした取り組みと一体不可分であり、大いに期待している」と強調した。
 牧島かれんデジタル大臣に対しては、「9月に発足したデジタル庁において、社会全体のデジタル・トランスフォーメーションに取り組まれ、これからデジタル庁では、G―MIS(医療機関等情報支援システム)、医師等国家資格のオンライン申請、死因究明における電子化などが行われる予定と聞いている」と述べ、厚労省と連携して進めることを求めた。

新内閣に躊躇(ちゅうちょ)なき支援を要請

 その上で中川会長は、「10月31日には衆議院選挙、その後には予算編成と診療報酬改定が行われる。日本医師会は新型コロナウイルス感染症対策と一般医療の両立に全力を挙げて取り組んでいくが、新内閣においても必要な支援を引き続き躊躇なく行って頂きたい」と要請。記者との質疑応答の中では、医療費の伸びが抑えられた現状において、医療機関の経営の安定や医療従事者等の待遇改善が、医療の安全、質の担保のためにも重要であると主張した。

菅前内閣の奮闘に謝意

 また、中川会長は、菅義偉前総理大臣について、「『国民のために働く内閣』を掲げ、安倍内閣を引き継いで全力で新型コロナ対策にまい進された」と回顧。新型コロナウイルス感染症対策の切り札であるワクチン接種においては、菅前総理が掲げた1日100万回接種という目標を受けて、全国の医師会が底力を発揮した結果、最大1日170万回を達成するなど、ワクチン接種の先頭集団国になったとして、改めてそのリーダーシップに敬意を表した。
 加藤勝信前官房長官に対しては、「安倍内閣で2度にわたり厚労大臣を務められ、菅政権下では官房長官として新型コロナウイルス感染症対策に尽力された」とし、自身が共同代表を務める「日本健康会議」の立ち上げにおける力添えや、自民党の「国民医療を守る議員の会」での活躍にも謝意を示した。
 田村憲久前厚労大臣に対しては、新型コロナウイルス感染症対策を始めとする多分野での貢献に謝辞を述べた上で、「本年5月の医療法改正によって、新興感染症等への対策が、医療計画の5疾病5事業の6番目の事業として追加されたことを高く評価している」と強調。平時からの準備として、マスク、個人防護具、人工呼吸器などの資材の備蓄に加え、専門スタッフなどの医療従事者と病床の確保などを、通常医療との両立も踏まえて定め、毎年更新することの意義を指摘した。
 西村康稔前経済再生担当大臣に対しては、「新型コロナウイルス対策担当大臣も兼務され、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令において連携させて頂いた」として、医療者の意見が反映されたことを述懐。「必要な医療機器や診療における必需品の確保にも、全力で取り組んで頂いた」とした。
 河野太郎前ワクチン接種推進担当大臣に対しては、「新型コロナワクチン接種の円滑化に向けた意見交換をさせて頂いた。ワクチン接種の推進を果たされ、VRS(ワクチン接種記録システム)の導入により、ワクチン接種状況のリアルタイムでの把握、公表が実現された」と述べ、今後も、この取り組みが堀内大臣に引き継がれるよう期待を寄せた。

安定的な医薬品供給を求める

 その他、中川会長は、新型コロナウイルス感染症の現況について、新規感染者数が激減した要因の多角的な分析と検証を行うことを要求。また、ワクチン・検査パッケージを活用した行動制限緩和については、基本的な感染防止の徹底を求めるとともに、ワクチン接種後のブレークスルー感染や偽陰性といった問題もあることに触れ、「それぞれの効果と限界を正しく知り、慎重かつ丁寧な検討を行い、公平で具体的な運用の基準を国民に分かりやすく示して欲しい」と述べた。
 国内で承認されている新型コロナの治療薬については、日本も参加している、米国メルク社が開発中である内服薬「モルヌピラビル」の第3相臨床試験の結果が良好であったことに言及。この薬が承認されれば、発熱外来の診療所で陽性と判明した時点で処方することができるため、製造・供給体制や臨床試験の結果を踏まえ、今後日本でも速やかに承認申請がされるよう、厚労省に対して、企業への適切な指導・助言を求めた。
 一方、国民と医師が期待する内服薬は、承認直後の供給が潤沢(じゅんたく)でないことが想定されるとし、複数の製薬企業、特に国内製造できる企業からの供給が不可欠であるため、創薬や供給体制を国が十分に支援し、適切な評価、速やかな承認につながることを要望した。
 最後に中川会長は、継続的に治療薬を医療現場へ供給する体制は、国の安全保障の一つであり、感染症治療薬に関しては、患者がいなくても一定の備蓄が必要であると強調するとともに、「日本医師会は、できうる限り安定的な医薬品供給によって国民の命と健康を守ることを、引き続き政府に訴えていく」と述べた。

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